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26.全て私の思いのまま(1)



(これでアマリリス・リノヴェルタが直ぐに処刑されることはないだろう……良かった)





よかった……?





自分の中の気持ちに気付いた瞬間、バッと口元を押さえた。


(俺は……アマリリスに生きていて欲しいと思っているのか?)


思い出すのは、地下牢で重ねてきたアマリリスとの明るい日々。


突拍子もないことをして驚きを与え、そして牢の中で幸せそうに暮らしているアマリリス・リノヴェルタの事を……。



「ユリシーズ……?」


「……勘弁してくれ」


「…?」


「何でもありません、行きましょう…」



足を進めながらも動揺を隠せなかった。


ハーベイと共に、未来を見通せる力が本物かどうか見定める為に、暫く城に滞在することになっているシャロンの元へと向かった。





今日はアマリリスの元に向かう日だった。


何故か胸騒ぎが止まらない。

現れた二人の表情を見て、顔を強張らせた。



「……シャロン、君は本当にアマリリスに突き落とされたのかい?」


「え……?」



後ろにはユリシーズが此方を観察するように視線を送っている。

ハーベイのセリフを聞いて顔を僅かに顰めた。


(アマリリス・リノヴェルタ…………ハーベイ様に何を吹き込んだのよ!?だから一緒に行きたかったのに!どうして夢の通りにならないのよ……さっさと死んで退場しなさいよッ!!)



ーーー幼い頃から未来が見えた。



自分ではそれが神から与えられた特別な力だと思っていた。

夢の通りに動くと、全てがうまくいった。


"シャロンは特別なのよ"


それが母の口癖だった。

母は助言のおかげでメルメダ伯爵の後妻に収まることが出来たのだ。


娼婦だった母が、今では伯爵夫人である。

今は伯爵との間に子を設けて、幸せに暮らしている。


この夢物語は未来を見る力なしでは、絶対に叶わなかった。


この力を使えば母よりも、もっともっとのし上がることが出来る。


伯爵令嬢となり貴族の仲間入りを果たして目をつけたのは、この国の王太子であるスペンサーだった。

スペンサーに近付いてみるものの、容姿にも力にも靡くことなく、笑顔で拒絶されてしまった。


そしてスペンサーにはマクロネ公爵の長女であるジゼルという婚約者がいた。

スペンサーはジゼルをとても大切にしていた。

二人の間にシャロンの入る隙はないかもしれない…そう思っていた時にある夢を見たのだ。


このままスペンサーを狙い続けたとしても、スペンサーを手に入れるどころか失敗してしまう。


(そう……スペンサーはダメなのね)


夢は見たい未来を少しだけ覗く事が出来る。


そして本当にその通りに未来が進むのだ。

未来予知に間違いはないはずだった。





今までは………。





「わ……私は、髪色とドレスの色くらいしか見ていなくてっ」


「そうか。辛いことを思い出させてすまない………ユリシーズは目撃者に聞き込みをしてくれ」


「かしこまりました」 



ハーベイの言葉に目を見開いた。



「あのっ、待ってくださいッ!!」


「…………シャロン?どうしたんだ、急に」


「どういうことですか…!?目撃者に聞き込みをするって!!」



未来予知の内容が狂っている……そう気付いたのはユリシーズの言葉や行動、ハーベイの反応が違うから。

途中までは、ユリシーズとハーベイは本来の動きをしていたはずなのに。


(私の予知が間違うことなんて、今まで一度も無かったのに……!)



「犯人は、アマリリスではない可能性もある……そう思ったんだよ」


「そ、そんな事って……でもアマリリス様は牢に入れられているのに、どうして今更ッ!?」




本当は初めから知っていたのだ。




ーーーアマリリスが"冤罪"である事を。




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