23.真実はどこにある?(6)
アマリリスはそっと瞼を閉じた。
確かに目撃者が数人いた事とシャロンの証言だけで牢に入れられた。
今初めて、アマリリスの言い分を聞いたのだ。
それに、とても嘘をついているようには思えなかった。
「……わたくしは、密かにハーベイ殿下を慕っておりました」
「え……?」
「最初はハーベイ殿下に近付いたのは力と権力の為でした……わたくしを蔑ろにし続けた家族を見返す為です。ですが、ハーベイ殿下の人柄に触れるうちに心惹かれていきました」
「ッ!?」
「けれど、ハーベイ殿下には仲のいい御令嬢がおりました。わたくしは嫉妬していました……御二人は誰が見てもお似合いでしたから」
「………ぁ」
「こうして牢に入ってみて、改めてわたくしの味方は誰も居ないと思い知りました……わたくしは悪女で嫌われ者です」
「……」
「ハーベイ殿下は……わたくしが犯人ではないと微塵も思っていないのでしょうね。影から殿下に尽くしたとしても、何一つ気付いて下さらなかった……最後まで、わたくしには目を向けてはくれませんでした」
「…!!」
そう言って悲しそうに微笑んだ。
初めて聞くアマリリスの気持ちに体が強張っていた。
(僕に尽くしていた……?アマリリスが、僕に……?)
「アマリリス様ッ!私はアマリリス様が大好きですから…っ」
「ありがとう、ララカ……でも、このままでいくとわたくしは処刑されたりするのかしら」
「「!!」」
「………冤罪のまま、処刑は寂しいわね」
「…っ」
アマリリスの胸の内を聞いて言葉が出なかった。
そして"冤罪"という言葉に動揺していた。
「処刑なんて……!ユリシーズ様ッ、アマリリス様の事どうにかなりませんか!?」
「……」
「俺もアマリリス様に居なくなって欲しくありません!!きっと隊長も同じ気持ちですよ!ね、隊長……?」
この場で一番、地位が高いのはユリシーズだ。
アマリリスを救える可能性があるのはユリシーズしかいない……そんなオマリとララカ、フランとヒートの縋るような視線にユリシーズの眉がピクリと動いた。
「まぁ………見ていて飽きない」
「!!」
「ふふ、ありがとうございます」
「それに、お前の刺繍は素晴らしい……」
「気に入って頂けて嬉しいですわ」
ユリシーズはアマリリスの刺繍に惹かれているようだった。
「今はユリシーズ様を一番に信頼しておりますわ」
「……!」
「ユリシーズ様はわたくしの命の恩人です。ユリシーズ様とオマリが居なければ、わたくしは処刑される前に死んでいたでしょうから……」
「ッ、それはどう言う事なんだ!?」
「あの……?」
「ゴホンッ………そ、れはどういう事でしょうか」
突然、大声を出してしまい視線が集まる。
そんな時、オマリは今までアマリリスの身に起きたことの説明を始めた。
コルセットを外すことも出来ずに、ドレスのままで放置され続けたこと。
城の侍女達の嫌がらせで、生臭い魚や石のようなパン、本来捨てるべき野菜の切れ端などを出されていたこと。
オマリやユリシーズが声を掛けても、誰もアマリリスの世話をしたくないと、拒否して逃げてしまったこと。
そして、アマリリスはララカが来るまで、自分の事を全て自分でしていたということも……。
「……という訳なんだ。いくらアマリリス様が嫌われているからって、やり過ぎだよな。嫌われてるっていったって、ララカはアマリリス様に救われたこともある。俺だって……フランとヒートもそうだ。アマリリス様はいつも誰かの為に動いているのに、何で"悪女"なんて呼ばれているんだろう」