21.真実はどこにある?(4)
アマリリスが城の料理人達に文句を言う姿を何度も目撃していた。
そんな攻撃的なアマリリスが好きではなかった。
アマリリスは料理が気に入らないと平然と「今すぐ下げて」と言った。
此方の前では多少しおらしいが、ふとしたタイミングで噂通りのアマリリスの姿を見てしまう。
そんなアマリリスが料理を通じて料理人と心を通わすなど信じられないと思っていた。
(あり得ない…)
ユリシーズとフランとヒートと共に地下へ続く扉を開いた。
その際にも、アマリリスがどんな反応を示すだろうという楽しそうに会話するフランとヒートの姿があった。
最近、料理が美味しくなった……それはハッキリと感じていた。
そういえば父と母が料理人を呼び出して褒めていたが、フランとヒート……この二人だったような気がする。
(まさか本当にアマリリスが……?)
牢に居るはずのアマリリスが、まさか間接的に関わっていると誰が思うのだろうか。
しかし料理人の話を聞く限り、ユリシーズが言っていた事は事実なのだろう。
階段を降りていく度に薄暗くなっていく。
ぼんやりと照らす灯りだけが足元を照らしていた。
薄気味悪い雰囲気の中、複数の明るい声が響いていた。
奥へと進んでいくと、目の前には鉄格子を挟んで笑い合う男女の姿。
一人は城の侍女……もう一人は、シャロンが階段から突き落とされた日に側に居合わせたという騎士の姿があった。
(確か、オマリと言ったか…)
ユリシーズが庇っていたが、結局シャロンの言葉により、アマリリスの世話をすることになったと聞いた。
シャロンの言うことを全て信じていたが、ユリシーズから向けられたのは"信じられない"と言いたげな視線だった。
そして、その日からユリシーズはシャロンに明確に敵意を向けるようになった。
最近、ユリシーズが何を考えているのか分からなくなっていた。
「ふふっ、さすがオマリね」
「アマリリス様、俺だってやれば出来るんですよ」
「ララカは見たの?」
「はい!オマリ様はとても勇ましかったです」
「羨ましい……わたくしも見たかったわ」
「「……」」
「あっ、ごめんなさい!そういうつもりで言ったのではないの。ただオマリの成長を見られたらなって……」
「アマリリス様…」
「ララカ、そんな顔をしないで?わたくしは此処での生活をとても気に入っているの。それに貴方達が協力してくれるから快適に過ごせるわ。本当にいつもありがとう……!」
息を止めて三人の様子を見ていた。
まるで別人のように微笑むアマリリスの姿。
以前のように人を邪険にすることも、厳しく叱りつけることもない。
当たり前のように謝り、お礼を言うアマリリスの姿があった。
(………本当に、僕が知っているアマリリスなのか?)
牢の中で笑顔を浮かべるアマリリスは化粧をしておらずに簡素なワンピースを着ていた。
飾り気のないアマリリスを初めて見た気がした。
「アマリリス様ッ」
「ーーアマリリス様」
「貴方達は……!」
アマリリスに会えたことが余程嬉しいのか、興奮気味のフランとヒートが牢の前に駆け寄って行った。
アマリリスは二人の姿を見ると驚き目を見開いてから、その場で立ち上がった。
「まぁ!何故…っこんなところでどうされたのですか!?」
「アマリリス様に直接お礼が言いたくて…!」
「毎日、アマリリス様に認めて貰う料理を作るためにどれだけ頑張ったか!」
「ふふ!いつも美味しいお料理を作って下さる御二人に直接御礼が言える日が来るなんて……!わたくし、感激ですわ」
「アマリリス様のレシピのお陰で僕達、国王陛下に褒められたんですよ!」
「本当に?良かったわね、ヒート」
「俺達はアマリリス様のお陰で成長できたんだ…!」
「……フラン」