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17.牢屋こそ至福(4)



アマリリスはフランとヒートという料理人との文通の末、料理評論家のようなアマリリスにフランとヒートが挑むという構図が出来上がっていた。


そしてアマリリスのレシピ通りに作った料理を食べて味の確認をする。

料理を通して盛り上がっているアマリリスとフランとヒート……。


しかし見たことも聞いたこともない料理名や調理方法。

どんな味がするのかと興味を持ち、厨房で味見をしてみたが、とんでもなく美味しかった。



そしてアマリリスの世話係を探していると、ついに一人の侍女がモジモジしながら小さく手を上げた。


侍女のララカはアマリリスに密かに憧れを持っていたらしい。


城で働き始めてすぐに、先輩侍女達に目をつけられたララカはいびられていた。

そんな時、偶々側を通りかかったアマリリスは、ララカを囲んでいた侍女達を嘲笑いながら一蹴したらしい。

ララカがお礼を言おうとすると、そのまま無視して何も言わずに立ち去ったそうだ。


ビクビクしながら牢の前で「あの時は、ありがとうございましたっ!!」と言ったララカに対して、アマリリスは「あの時の…」と、ララカを覚えていたようだった。


アマリリスとララカは一瞬で打ち解けた。


最近ではまるで仲のいい友人のように話に花を咲かせている。


ララカは衣類の洗濯や新しい着替えを用意したり、髪を梳かしたりなど、牢の中で不自由な生活を強いられているアマリリスの世話をしている。


一応、無駄だと思いつつも警戒していたが、やはりララカに脱獄の手助けを頼む様子は一切ない。



そして、アマリリスはララカの心配をしているようだった。

「ララカが傷付かないように見守ってください」

そう頼まれて始めて、アマリリスの言葉の意味を理解して頷いた。

やはり読み通り、アマリリスの世話をしている事が気に入らない者達が、ララカに手を出そうとしていた。


ララカになるべくオマリと共に行動するように言い、そしてオマリにはララカと細かく連絡を取り合うように指示を出した。


それからアマリリスは「体が鈍るから」という理由で、ユリシーズの部下であるオマリと一緒に筋肉トレーニングを始めた。


何故かオマリに熱血指導を始める。

「オマリはやれば出来る!」「お前の力はそんなもんじゃないはずだッ!!」「筋肉は裏切らない」


そんな言葉に触発されたオマリは、以前の自信のなさは消えて、剣の腕を上げていくという訳の分からない事が起こった。

アマリリスは人に圧を掛ける睨み方までオマリに指導していた。


それには目が点である。


「何故そんな方法を知っている?」と問えば、アマリリスは平然と「身近にそういうのが得意な人が沢山居たんです」と言った。


リノヴェルタ侯爵達のことかと思ったが、明らかに違うように思えた。


主に伝達係や見張り役として、アマリリスの手紙やメモを渡したり食事を運んでいた。

アマリリスの刺繍に惚れ込んでからは、ひっそりと刺繍が仕上がるのを心待ちにしていた。


皆、数週間でアマリリスとの距離はぐっと縮まっていった。


以前のような刺々しい態度もなく、周囲に厳しく毒を吐くこともない。

誰かと敵対することもなければ、常にニコニコと笑顔を浮かべている。

此方にも友好的に接しているし、今までのアマリリスは何だったのかと疑いたくなってしまう。





「………というのが、最近のアマリリス・リノヴェルタの様子です」






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