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69話 一時閉幕 その2

『ところで、アイボリーの連れの蝙蝠は何で魔力が黒色なんだ? 極限まで圧縮した魔力は白く光るって聞いたけど、黒い魔力なんて初めて視たぞ。』


「ああ、それは循環が止まった魔力だ。本来魔力は常に流動する性質だが、無理矢理1箇所に止めておくとああなる。理由は俺も知らないがな。」


【あんた今蝙蝠って言った? 殺すわよ?】


『貴様こそスープにして食ってやろうか? (ミノタウロス)の尾肉と合わせると美味くてな。』


「やめてくれみっともない。」


「姐さんも悪食だねぇ。


(…………当然、あの子の友達の魔力がそんな事になってるわけじゃない。いくらもう人間じゃないとはいえ、本来なら普通の無色透明だったんだ。気付いているかい? アイボリー。君の我儘に巻き込んだシャルラッハも、もうすぐああなるんだってことに。

彼だけじゃない、俺も、あんたも、いずれ……)」






―――――――――――――――――――――






<剣舞>の応用、剣先に触れるいかなるエネルギーも逃さず、思うがままの「向き」へ変換する。怪物の放つ攻撃の一端を吸収し、その威力を腕が吹き飛びそうな程まで強化した。


だが、これでは足りない。


一端、あくまで一端だ。その力の本懐である奴を一撃で仕留めるにはまだ力が足りない。まして剣が折れている今、その威力は十全に発揮されることは無い。



「(……そうだろうと…………)」



カーリーの心の中に入るとき、ナルさんから説明されたことを思い出す。

ここ(星幽界)で死ぬと、それは精神が死ぬことと同じ。魂が死ぬのだから、それは僕という人格が死ぬのと同じなのだ。



「(例えそうであろうと……)」



だが、そんな事は百も承知で、こいつを止めることを選んだ。

コイツのせいでカーリーが悲しむ姿は見たくない。

エゴだと言われようが知った事か。



「ここでお前を討つ!!!!!」



そう叫んだ瞬間、折れた筈の剣が元に戻る。

いや、それだけでは無い。その形、その威圧感、その圧倒的重量感、それはまさに聖剣。

昔、本で読んだ、かつて魔王を打ち倒した勇者が持っていたとされる金色に輝く聖剣。それが今、手元にある。



聖剣は自分の心に答えるようにうねりを挙げる。

刀身から放たれる金色の魔力が、<剣舞>で纏っている僕と奴の魔力と混ざりあい、螺旋を描く。



凄まじいエネルギーの奔流、ビスタの両腕を犠牲にしたかつてない一撃が、奴の身体を袈裟に斬り裂く。


「いけええええええええええええええええっ!!!!!!!!」


『くっははははははははははっ!!!!!!!!!!!!!!!!!』





――それは、彼の中の「最強」の具現化。

戦いの舞台が彼の心の中であるのならば、それを手にした時点で彼の勝ちは確定している。















はずだった。

本来ならば、今の一撃で<共感>の身体は崩れ去っていただろう。

だが、この空間は、ビスタの心象世界であるとともに、<共感>の心象世界でもあるのだ。


故に、ビスタの認識する「最強」と、<共感>の認識する「最強」は異なる以上、聖剣を再現しようと奴を打ち倒すまでには至らない。




一撃で仕留められなければ、奴は修復を開始する。



『……………………なるほど聖剣か、面白いモノを持ち出してくるじゃないか。』



認識の衝突が起きたとはいえ、半分は勝利のレッテルなのだ。半端な一撃では無い。その一撃は奴の心臓を半身ごと吹き飛ばしていた。

流石の<共感>であろうと、心臓の無い状態では再生がかなり遅い。先程腕を斬り落とされた時は瞬時に再生していたが、今はゆっくりと心臓を再生している。


あと一撃入れることが出来れば、ビスタの勝ちだ。



「くっ………あと………一撃……………!!!」



だが腕が動かない。今の一撃の反動で、肉塊一歩手前まで砕かれている。

突き刺すようなとてつもない痛みが脳を揺さぶる。


立ち上がる事すらできず、互いに芋虫のようにただひれ伏すのみである。



「それでも……!!!」



身を捩って聖剣の元まで這いずり、咥える。

素晴らしいほど冒涜的な行為だが、そんなもの信念の前には関係ない。

最後の力を振り絞り、聖剣に魔力を込める。


互いに身体を引き摺りながら、敵の元へ向かっていく。


『はははっ!!! 来るがいい!!!』


「腕なんて………なくたって………!!!!!」






【よくないよ、君のそういう所】




突如として聞き覚えのある声が響く。



「うわっ!?」



身体が唐突な力で引っ張り上げられる。

僕を掴もうとする奴の手が空を切った。


『まさか…!!! 貴様ッ!!! ()()()()()()()!!!!』






意識が遠のく。

何もかもが白く染まり―――


次の瞬間、僕は学園に戻っていた。

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