表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/74

07 ミラーマッチ

もう一人の私が剣を抜く。

突如現れたそれは、今の私と、装備やベルトポーチを含め、まるっきり同じ装いをしていた。


何気ない仕草でさえ、まるで鏡に合わせたかのような振る舞い。

呆気にとられる私を差し置いて、それは口を開いた。



『さぁ、お前も剣を抜くがいい。』



私の姿で、私の声で、私でない者の意思が話す。

鏡に映る自分が、勝手に動き出したような違和感。

この世界では説明のつかない不思議なことなど山ほどあるが、これもその一つなのだろうか。


しかし何者だろう、完全に相手をコピーする魔物なんて見たことが無い。



「な、何で私の姿を………」





『抜けと言っている。次は無い』




質問しようとしたこちらの言葉を問答無用で遮った。

その内に潜むのは私か、それとも。

それが一瞬放った殺気は、今までに感じた事のない何かだった。


どうやら話し合う気は無いらしい。


言われた通り、こちらもショートソードを抜刀。

そしていつもの近接戦用の構えを取る。


にらみ合う刃と刃、理解が追いつかないまま進んでいく一触即発の状況。

先に沈黙を破ったのは向こう側だった。




『はあぁっ!!!』




掛け声とともに真っ正面から振り降ろされる剣。

しかし驚くべきことに、その速度は私のそれをはるかに上回っていた。


「っ!!!」


咄嗟に切っ先を逸らすように遠心力を駆けた剣で弾き、距離を取る。

濃霧は局所的に晴れており、戦いの舞台を表しているようだった。



『せぃっ!!!』



更に踏み込み、それと同時に迫りくる幾つもの斬撃。

ギリギリで受けきることができているが、少しでも反応が遅れてしまえば重傷は免れないだろう。


全く容赦のない連撃。

息つく暇もない、初めての本格的な戦闘。

戦いの最中でさえ、奴は私に話しかける余裕を残していた。




『ふむ…やはり、弱いな』

「うる……さいっ……!!」




まるで、先程まで自虐に走っていたのを知っていたかのように、いや、本当に知っているのだろう。

奴は私を軽蔑の表情で嘲笑った。



『これだけの素質を持ちながら、何故その程度の力しか出し切れない?』



徐々にヒートアップしていく攻防。

油断すると剣を落としてしまいそうな程に手は痺れ、息も切れ切れの状態だ。

足はガクガクと震え、膝をつくまでのチキンレース。



これだけの素質? 何の話だ、奴のような力は私には無いというのに。




「何の話をっ!!」


その言葉を皮切りに、奴は攻撃の手を止めた。

こちらの息は、呼吸の度にゼヒュー、ゼヒューと音が鳴り、まさに切れかける寸前だった。


「……………?」



構えていた剣を降ろし、こちらに改めて向き直る。





『私はお前。もう一人のお前。この体も、この言葉も、この力も、全てお前が持っていたものだ。』





その口から告げられた言葉は、やはりというべきか、まさかというべきか。

展開の早さに理解が追いつけない事はよくわかっているが、ナルダ様の御膝下に入ってからは理解の範疇を越えていることは確かだった。



奴の言っていることが本当ならば、まさに鏡合せだ。


しかし、私の肉体と同じならば、何故あれほどの斬撃を繰り出せる?


ありえない、私はそれほど強くないはずだ。


現に、奴の攻撃を受けるだけで精一杯なのだから、ましてそれ以上を狙うことなどできやしない。



「な………何を…………言って………」



『お前の弱い部分、強い部分、どちらも私は知っている。


故に問おう。何故お前は弱い? 弱いままなんだ?』



ずけずけと核心を突いてくるのは自分自身だからだろうか。

だが、何しろ私は初めからずっと弱いままだった。

外れクジを引いて、「無能」のレッテルを欲しいがままにして…



『それは違う。お前がそう思っているだけだ。スキルだの、レッテルだの、いつまでそんなものに囚われている。』



「…………」




真っ向からの否定。

ならどうして? 私の3年間の努力は、工夫を凝らして冒険者としての居場所を見つけた私の頑張りは? 


そんなものは必要無かったとでも言うのか。


そんなはずはない、私の努力が認められないはずがない。

私を「無能」だと言ったあいつらが悪い。私は悪くない。



『ああ、お前は「無能」じゃない。今のお前を縛っているのはお前自身だ。』



そして止めていた攻撃を再開する。

ギリギリで受け止めるが、腕からミシッという嫌な音が鳴る。

問答の休憩もあまり回復できなかったようだ。



『私はお前。これ以上進むことを許されなかったお前の影。』


『さぁ、お前の光を見せて見ろ!!』

――――――――――――――――――――

某日、「錆の邂逅」にて。


「シン、本当に良かったのですか?」


眼鏡を直しながらソルトンが問いかける。

数日前にシンが他のメンバーに提案したもの。

無理を承知で頼んだ契約。


「ああ。」


少し寂しそうに、シンは答える。


「それが『あの人』との約束だからだ。」




"父さんみたいな冒険者になりたいんです!!"




「元『色付き』とその娘…か。今思うと、俺って結構損してるかもな。」


「それはいつもの事でしょう……さて、そろそろ行きますよ。」


「ああ、気合い入れて行くか!!」

今日は忙しいので宣伝はなしです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ