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64話 乱入者 その3

「……やはりおかしいですわね………何度計算し直してもこの理論は確実に成功する………そんなものを、私が作っていないワケがない…………」


発狂する程に人生をかけた魔機製作、当然彼女が手を抜くはずはない。

それはそのはず。何故ならこれは認識改変により、ヴァースの戦闘のはずみで木っ端微塵に破壊された魔機の穴埋めのため、()()()()()()()()()()()()()と彼女達の認識が捻じ曲がっているからだ。そうに違いない。



「というか、こんなぼろっちい所に私が魔機を置く事を許すはずが無いのですけど……一体どなたが移したのかしら……?


ねぇ、あなたは何かご存知かしら? 清掃楽部委員長さん。」



()()廊下を歩いていた清掃楽部委員長もといミリナ・シドラスに声をかける。

生徒会の中では一番小柄な女性であり、一番大柄な身体のヴァースと比較するとその半分ほど。しかしその外見とは裏腹に、生徒会選挙では豪快な腕力を以てして前清掃楽部委員長を吹っ飛ばした。確かに彼女のような戦闘初心者でも「強い」と感じられる戦い方ならば、協会へのPRを担当する清掃楽部にはうってつけだろう。



『さ~あね。でもここはまだまともな方なんじゃない? 北校舎とか野晒なんだから、まだ天井がある方がマシだよね。

……あっ、そういや私職員室に呼び出し受けてるんだった。またね~』



まぁ、言葉使いは貴族の学園とは想像がつかない位に俗なのだが。

…しかし困ったものだ。生徒会ですら「そう」なのだとしたら。


小柄な生徒会役員は急ぎ足で行ってしまう。








「ああそこ、お気をつけて。

()()()()()()()()()。」





『はぁっ!!!!??? ――――――――――あっ』



ミリナが振り向いた瞬間、突如として足元のタイルが開き、中から指向性魔力砲、つまりレーザービームの砲門が列をなして現れる。

それからコンマ1秒の差さえなく、射線が通ったと同時に極細のレーザーが発射された。避ける間もなく彼女の身体は列状に貫かれる。彼女の肉体の強度は、ナルダの魔弾を傷一つなく受け止めたメイ・クラウン程ではないにせよ、人間のそれを遥かに凌駕するはずなのにも関わらずだ。



そして止めに額に同じ威力のレーザーを受けた。

いつの間に部屋から出ていたのか、リオンの手には床の砲門と同じような魔機が握られていた。



「さて、人間さんなら死ぬところだけど、いい加減正体を現してはいかがかしら? 怪物野郎さん。」



『…………………』



通常の人間であれば、この時点で脳が焼かれて即死だった。しかし当然ながらミリナも魔人の一人であり、心臓をぶち抜かれたり脳髄をアイスピックでかき混ぜられたりのような完全な機能停止に陥っていないため、時間が逆行するかのように傷が超速再生する。

次発が装填される前に、床ごと砲門を踏み砕いた。




「あらら、作るの結構苦労しましたのよ、それ。

さておき、この再生力………もしかしてあなたが噂の「吸血鬼」さんかしら?」


『……さぁね。

あー痛ぇ………やっぱ雑魚専じゃダメっすよメイ様。反応鈍っちゃったじゃあないです…かっ!!!!』



踏み砕いた脚で回し蹴りを放つ。空を切るが、その余波だけで人間程度であれば100人は余裕で斬死・圧死させることが可能であった。

しかし、もう片方の手に握られた魔機が傘のように展開し、その風圧を受けきった。


ミリナはあくまで中小貴族の出身であり、魔人の存在は殆ど知らない。偶然にも心臓と脳を攻撃したが、それは恐らく人間も同様に致命傷となり得るからだろう。

だがこの備えは明らかに現状彼女の知り得るレベルの相手を想定したものでは無い。そもそも学園にこんな仕掛けをどうやって用意したのだ。




「あなた、「嘘」ついたでしょ。」



『は?』



「私はね、嘘をつかれるのが嫌い。

大好きな人がいましたの。その人は私に色々な事を教えてくださったわ。

魔機だけじゃない、その理論骨子から材料の集め方に至るまで、何から何まで。そうそう、人の壊し方も、このお上品な話し方も学びましたわね。

あの国(スカイライン)の戦争孤児だった私にとっては、とてもとてもとても刺激的な時間でしたの。そしてとても暖かかった時間でしたわ。何せ魔機という現実から目を背けさせてくれるものを与えてくれたのだから。」



『何を言って…………』



突如として自分語りを始めるリオン。

先程まで自身を殺そうとしていたはずの人物が、いきなりバックボーンを話し始めるものだから、流石の魔人もあまりの唐突な展開に面食らってしまう。情緒不安定にも程がある。



「でも、その人はある日突然いなくなってしまったの。

いつも通り「すぐ戻る」って言ったのに。

どれだけ待っても戻って来なかった。



私は待った。

何日も。

何日も。

何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も。


でも、知ってた。その言葉が「嘘」だって。その人が初めてついた「嘘」だって。

だから私は「嘘」が嫌い。「嘘」は私から大切なものを奪っていく。

そう、■■■(ビスタ)さんのように。」



『………(こいつ…………ルベルグの術式が完全には効いてないんだわ。ツッコミどころが多すぎるけど、今はとりあえず処分しといた方が良さそうね。)』



困惑しつつも、ミリナの思考は正常に働いていた。

忘れたふりをしていたのか、それとも思い出したのか。どちらにせよ、リオンの認識の中では、ビスタという先程ミリナが首を飛ばした人間が初めから死んでいない。改変が機能していないのだ。




この国(エイスター)に来て初めて知りましたわ。まさかあの人があんなに有名人になっていたなんて。これじゃあ、どうして私を置いて行ったのかなんて聞くに聞けないじゃないの。あなたは知ってる?

「ロストマン」。



……………いえ、こう言うべきかしら?

「黄の赫々」」





『っ!!!! 「第五十七号/『破月』」!!!!!!!!!!!!!』




その名を聞いた瞬間、咄嗟にミリナの身体が反応し、魔戒術式を放つ。

『破月』。それは彼女が最も得意とする魔戒術式であり、端的に言えば極細のビームサーベルで上から真っ二つにする。当然収束した魔力はエネルギーだけで言えば『業』にも匹敵する程であり、人間界において戦術クラスの魔力量でも持って数秒と言った所だろう。

受け止める術はない、正に魔人の存在を象徴する魔戒術式だ。


徹底的なまでのオーバーキル。だが、それは本来ならば。



『なっ………何故起動しない!!!? 術式は間違っていない筈…』



「「「監獄」の神獣ノールド」様って知ってるかしら? 当然知ってるはずよね? だってこの区域で崇拝されている神獣なのだもの。」




『(…違う、起動しないんじゃない、魔力を流せていないんだ。

…それに………身動きまで………っ!!!!)』




義父さん(「黄」)もね、褒められるような魔力量は持ってなかったの

。それこそ「色付き」の中では一番低いくらいには。だから、少しばかり神獣の力、もとい崇拝を借りる事を思いつきましたの。


私は引き金を引くだけで良い。後は皆々様方のノールド様を拝む力がこの土地の「基盤」となって、あなたを縛り上げる。

魔力法術が作文なら、これは数式。魔法とは似て非なるモノ。




『魔術』。義父さんが蘇らせた、かつて人間界が魔界・天界と引き分けるに至った力よ。」

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