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61話 怪物の実力 その4

「うそぉ……この人防いじゃったよ……死角からの完全な不意打ちだったのに。しかもあの巨躯でアクロバティックに動くんだって? 嫌になっちゃうなぁもう……」


『戦闘特化の上位魔人なんてそんなもんだ。魔界のトップ層にもなると触媒が必要になる中規模の魔法をワンアクションで起こしたり、空気を圧縮して多段ジャンプしたりとかあるらしい。

改めて並べてみると、本当にばかげた話だな。』


「そういうの、巷ではブーメランって言うみたいだね。


にしてもやけに詳しいなぁ。6年間の間に魔界にでも行ったの?」



『知り合いがな。少し旧い話だが。

……さて、そろそろ始めるか。手筈通りに行くぞ。』


「はいよ。」





与太話を終え、改めて向き直った二人の化け物がにらみ合う。

その瞬間、ぶつかった気合と気合が、まるで鍔迫り合いでもしているかのように衝撃波を生み出す。

気を抜くと自分も飛ばされそうなほどの風圧。これでもまだ挨拶とは信じられない。




【これ程の気迫とは、やはり最高峰の人間だな。】


『そいつはどうも。』



二言の言葉を交わし、戦闘が始まる。


―――――――――――――


先に動いたのはアクロモスの方だった。


天によって齎されたあまりに強大すぎる肉体は、いくら手加減されていたとはいえど、瞬発力に限れば上位魔人さえも凌駕していたのだ。

その爆発的なエネルギーから生み出される圧倒的推進力は亜音速すら置き去りにし、踏み出した地面が凹むにとどまらず、文字通りの爆発が起き、周囲の建物にヒビを入れた。



選んだ場所は市街地の端。片刃剣で即興のバトルフィールドを作ったが、その中には敢えて邸宅や公園などの障害物を多く含めさせていた。

当然、ここも認識改変の影響下にあり、余波で何人かが瓦礫の下敷きになったり、上半身が吹き飛ばされようとも、住人達はいつも通りの日常を送っている。


一瞬の内に相手の懐に潜りこみ、横薙ぎ一閃。

その完璧なコースから放たれた斬撃は、防御の時間すら与えず、魔人の肉体に刃を食い込ませる。


しかし、そのまま両断するかと思いきや、背骨に当たった瞬間に止まってしまう。



脊椎動物の肉体を支えているのは骨格であり、筋肉よりも骨の方が硬いのは当然の帰結だ。それは魔人においても例外ではなく、上位魔人のそれは人間界の装備では遺物クラスですら傷をつけるのは容易では無い。


予想外の硬さに、あれだけ幾億の魔物に打ち込まれてきてなお刃こぼれをしなかったはずの彼女の振うカタナが、いともたやすく折れてしまう。




だが一瞬目を見開いて動揺こそしたものの、少し予想より早かっただけで想定内の事象であった。元々その為の無数の刀塚なのだ。


即座に足を払う。戦闘特化らしいが、意外な事にすんなり決まった。

耐性を崩して空いた腹部に、そのままの回転の勢いで回し蹴りを喰らわせる。



【ッ!!!!???】




総合的なステータスでは相手の方が上なのは明らかだが、その動きはあくまで「相手を倒す」ことだけに特化したもの。むしろここまで防御が直線的だと清々しい物すら感じる。恐らく何十、何百年と生き続けてきたのだろうが、その強さ故、殆どが格下の相手を嬲り殺してきたのだろう。

当然技術を駆使する人間と戦うのはこれが初めてということだ。奴らからすれば小手先の悪あがきかもしれないが、使い手が彼女ともなると話は変わって来る。

一言でまとめると、受け身は素人ということだ。



血と臓物をばら撒きながら魔人は何棟もの建物に穴を開けて吹っ飛ぶ。

空中で何とか身を翻すも、追撃の無数の斬撃が四方八方から襲いかかる。

どれ程調節をしようと多くても十撃で刀が折れてしまうが、その度に次の刀が彼女の手元に来ている。どうやら回し蹴りの為に宙に浮いたと同時に、魔力の糸で刀を三十本ほど空中に放り投げたようだ。


ちょうど首なし騎士に対して浴びせたように、今度は魔人の肉体が粉微塵になっていく。



しかしばら撒かれた血は奴のものだけでは無い。

彼女の血も混じっている。

彼女は確実に無茶をしており、肉体の限界を超えた速度と威力で刀を振るう度に血管が千切れ、到る所で内出血が起こり、口からは血反吐をまき散らしている。



だが絶対量は明らかに奴の方が上回っていた。

当然だ、何しろ再生で手いっぱいでろくな反撃すら出来ていないのだから。四肢の回復にかかる時間は僅か1秒、しかしその間に別の部位が斬り落とされて行く。

堅牢な骨格も軟骨はその限りではなく、1ミリのズレなく正確に関節部を狙われるといとも容易く切断されてしまう。


何度も何度も斬り落とされては生え、斬り落とされては生えを繰り返す。

どれ程鋭い剣であろうと、振う事が出来なければ無用の長物だ。



【(回復が間に合わない!!!?? まさかあの泥のせいで…

いや、それだけではない。奴は正確すぎる動作に加えて、人間の構造も把握しつくしているッ!!!!!)】



文字通り手も足も出ない状況だが、再生が削る速度より遅くなければ奴にとっては問題は無い。



『おおおおおおおあああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』



咆える。

その度に剣戟は止むどころか更に速度を上げる。

そしてその刃が敵の心の臓を抉ろうとしていた。




【(だが所詮は人間、定命である故に打破は可能だ!!!)】



魔力の糸を動かし、空中に配置していた刀を同時に再生したばかりの各関節部に差し込む。

首、肩、肘、手首、股関節、膝、足首、その全てに一本ずつ刀が差し込まれ、一瞬だけ奴は何も身動きがとれなくなった。


つまりそれは仕上げの瞬間、とどめの一撃を意味していた。



『とどめッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』



背後から横向きに迫る刃は、肋骨をすり抜けて奴の体を貫通した。

それと同時に懐から取り出されたアイスピックが頭蓋骨を砕き、脳をかき混ぜる。



やったか。

そう思った途端、希望が絶望に変わる。



『(回帰が起こらない……まさか心臓を貫けて無い…!!!?)』


気付いた時には遅かった。

もう一度刺そうと刀を引き寄せた瞬間、剣を掴んだ奴の右腕が刃の束縛から逃れ、彼女の体を袈裟切りにした。


――――――――――――――――


それは帰ろうと玄関口に行こうとした時だった。



『キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????????????????』


あまりにボロボロすぎて現在使用されていない倉庫から、甲高い悲鳴が聞こえてくる。

確か元々は魔機を保管していたけど、倒壊して台無しになった場所だったっけか。


恐る恐る扉を開けると、予想通りの声の主がいた。


「リ、リオンさん、ど、どうしたんですかいきなり大声出して。」


「何でもなくありませ(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!(※いじっていた魔機の魔力回路が千切れる音)


んわ!!!!!!!!!

みてくださるかしらこのメモ!!!!! 私の記憶が確かなら、理論が間違ってるとして開発を断念して別の式を立ててたはずなのだけれど、何度見ても術式に間違いが見当たりませんの!!!!!!!!!!

ありえませんわ!!!!!!!!! 私が理論的に間違いのない術式を開発していないなんて!!!!!!

キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!???????!!!???!?!?!??!」



「そ、それは大変で……………………」




そう言いかけようとした瞬間、何かに気が付く。

何だ、この違和感は。


ボロボロの倉庫に……そんな倒壊するようなところに魔機なんていう繊細な物品を置くか? 他の建築物よりもっと頑丈に作ってあるはず。


それよりも何故僕はこんなボロボロの学園に通っている?

そこら中穴だらけ、ロクに授業できる教室も残っていない。ましてや一階が崩れる寸前であるのに、何故修理されていない?

何故こんなところに大貴族がいる?



記憶が間違っている………





「……………まさか。集団さいみ--------」



突然、世界がぐるんと回った。

いや、違う。


回ったのは僕の首だ。





*






「何か、何かがおかしいですのビスタさん!!!!!!!



あれ………? ビスタ…さん……………




ビスタさんって……………………………………………………




































どなた?」

今回の怪物はアクロモス姐さんでした。

大学受かったので定期投稿も忘れて遊び呆けてました。ごめんなさい。

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