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44話 一時閉幕

ワタシが、消える。


ワタシの存在が、消えてしまう。


()()()()()()()()()()()()






いやだ。


いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだい







()()」?


ワタシは、何を言って―――



―――――――――――





精神世界の中で精神世界に入る。

最早精神という言葉の意味が解らなくなりそうだが、夢の中で眠るような感じだろうか。何分初めての経験なので、説明が難しい。


前回「自分で無い自分」、つまり「憧れの自分」に対してスキルを使用した時は、完全に複製された私の情報を得ることで、間接的に自身の肉体の状態を知ることが出来た。


『やめろ………………』



「(ナルダ様によって変化したはずの<共鳴>が、あの日以来殆ど機能しなくなったのも、あくまで<共感>を根幹にパッチワークを取り付けたものだとしたら何となく理解できる。


そして今ならここでも使う事ができる!!)」



その名を唱えた瞬間、もう一人の私の体に真っ白なひびが入る。

そのひびはやがてもう一人の私の体を超えて、精神世界に白が広がっていく。


『やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』




不純物(ビスタ)は追い出され、ぶつかり合っていた二つの精神が一つになった事を示していた。



―――――――――――――――――――



そこは霧一つない真っ白な世界。

水平線がどこまでも広がり、立っている場所さえ地面かどうかもわからない。

対面するはもう一人の私。悪意の私。

先程とは真逆に、跪いて向こうが泣いている。



『うううううぅぅぅぅぅ………………クソッ…クソッ…………

クソォォォォォォォ!!!!!!

どうして……どうしていつもいつもいつも!!!!!

イイ所で邪魔が入るんだ………!!!!』



「……………」



『何故だ、何故貴様はワタシを受け入れない!!!!

貴様も思っていたんだろう?? 今まで散々自分をコケにしてきた奴らを見返してやりたいと!!!! 

リーゼ村の奴らも、ギルドに入ってから何度も邪魔してきた雑魚も、貴様を底辺に追いやったシンとかいうガキも、貴様の足を引っ張り続けたリルナという女も、貴様を殴り飛ばしたリガードも!!!!!


もっと欲望に忠実になれ!! 他の奴等がいくら望もうとも手に入らない力を貴様は既に持っているというのに、何故求めない!!! 何故ワタシに委ねない!!!!!

多少の犠牲など知った事か!!! たかが7万6千秒間空間を共有しただけの人間と死にかけの仮初めの神獣など、そこな有象無象と同じだろう!!!!』








「それでも…」





もう一人の私の言っている事は間違ってはいない。

私を蔑む者、私を攻撃する者、私を嫌う者、その悪意を、私は感じていた。

唯一の心の支えだった父さんと母さんは私の前から消え、拠り所であった「錆の邂逅」からも追い出され、私の力になってくれたのは人間では無いナルダ様だった。





「それでも…………」




もう人間が嫌いになっていた。

誰もかれも、外れスキルだの無能だの、私の過去だけをみていた。

そしてナルダ様も、私を駒の一つだと思っていたことも知っていた。



天を何度恨んだことか。

どれだけ全てをやり直したかったことか。

どれだけ、もう一度家族全員揃って食卓を囲みたかったことか。

どれだけ、思い出に浸っていたかったことか……………………






「それでも、   !!」



―――――――――――――――――――


現実時間にしてみれば半日にも満たない時間だったが、まるで永劫の時が過ぎたようにも感じられた。

二度にわたる乱入、そして短くも長い戦いの末、<共感>は封印された。


意識が戻ってくる。

此処は夢か、それとも現実か。

感覚がまだ虚ろだが、人の気配がする。


「ん………………」




「カーリー!!!」

「おわっ…!!!」



ビスタが抱きついてくる。

心身共に相当疲弊しているはずだが、これなら大丈夫そうだ。



『勝てたか。

……全く、心配懸けさせおって、このバカタレが………………。』



「ご心配を、おかけしました。」






―――――――――――――





『やはり、スキルは使えんか。まぁそうであろうな、我が調整したとはいえ、根本が動作しない以上どうしようもない。』



いつの間にか握りしめていた、あの鍵のお陰でもう一人の私を封印することには成功したが、それは逆説的にスキルが使えなくなることを意味していた、らしい。ゼンゼンワカラン

そもそも自我を持つスキルとか、疑似人格とかよくわからない事を言っていたが…


とりあえず分かっていることは、<共鳴>が完全に沈黙しているという事だけだ。戦に勝ち、勝負に負けたような感じがする。



「え? カーリーのスキルって<直感(セブンスセンス)>じゃないの?

っていうかスキルが使えなくなるって聞いたことないんだけど……」


『(あ、やべ)』


おいコラ。

ビスタさんが来たのはあれが一通り説明を終えた後なので、依然として彼は私が適当にそれっぽく設定を考えたスキルだと本気で信じている。

どうしよ…



「え、えーっと……それは………」



口をもごもごさせていた時、個別治療室の扉が開いた。

筋肉質で、よく見てみると硬化系の魔法文字がちらほらついている上品な服を身に付けた、そこそこ大柄な男性が入ってくる。

その男はファーディ先生のそれに近い、強烈な威圧感を感じさせていた。


既に汗ばんだ服の中を、再び一筋の冷や汗が通り抜ける。



『(まぁ無理はない、あの教師がいくら素晴らしい演説をしたとて、お主が暴走したという結果は変わらん。だから決闘など止めておけと言ったのに…)』


「(すいません………)」




さて、退学処分か、それとも謹慎か、停学か。

いずれにせよロクなことにはならないだろう。


しかし男がこちらをちらりと見た瞬間、あれほどまでに存在感を放っていたオーラがふっと消えた。


こちらに敵意がない事を見抜いたか、にしても一瞥だけでどうやって判断できるだろうか。魔力の回転? 目つきや筋肉の動き? それともナルダ様やビスタさんの表情?

まさかとは思うが、ナルダ様以外にも<共感>について私が知らない情報を知っている人がいる可能性も…



そしてその男が口を開く。


「カーリー・ベルファス、レイナ様がお待ちでいらっしゃる。ご同行願いたい。」

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