30話 決闘開始の宣言をしろ!
案内図に従い決闘場へ足を運ぶ。
決闘場は想像通りのコロシアム型であり、中には既に何十人もの観客が居た。
現在時刻は午前8:12分。朝礼にはまだ時間の余裕があることも観客の数を増やす要因となったのだろう。
実際決闘は賭け事に近く、両社とも実技の授業よりも命懸けで闘う。勿論授業を本気で取り組んでいないわけでは無いが、火事場の馬鹿力と言うのか、守るものがあると人間不思議と強くなれるのだ。
その為娯楽として観ることも出来るし、立ち回りやスキルの扱い方等参考にできる技術を公的にまじまじと観察できるいい機会でもある。
予め会場に用意されていた木剣を受け取り、判定用の魔導具を手首に装着する。他の人達は慣れているみたいでごく普通の様に付けているが、体内の魔力の巡りを測定する魔導具であり、強引に魔力のパスを通す為頭が一瞬チクッとなる。初回、つまり昨日の実技の授業では思わず持っていた木剣を落としそうになってしまった。
決闘管理会の教員が審判役として契約書に記載されている条件などを読み上げる中、奴は手下と思われる者たちに指示を出していた。口元にはいやらしい笑みが貼り付いており、あまり良い気分では無い。
そして、問題はすぐさま訪れた。
審判が内容を読み終え剣を携えて、1m程の間隔を空けて向かい合った時、奴がおもむろにポケットに手を突っ込む。
そして、見覚えのある物を取り出した。
「これなァ~んだ。」
「!!!!」
学園長の朱印と共に、ペンで大きく署名された小さな紙。
そこには「ビスタ・ファルド」と書かれていた。
そう、ビスタさんの学生証。
「ビスタさんに何を………っ!」
「いやなに、ちょっと借りただけだよ。別に深ァい理由があるってわけじゃないぜ?」
<共感>の声が薄れているせいで詳細はわからないが、とにかく奴が嘘をついているという事は分かる。
ビスタさんが昨日帰って来なかったのはそういう事か。
「しっかし何だァ、その顔は。全く興味ありませんって顔しやがって、普通怒る所だろそこは。」
「……………」
ごもっともな話だ。
疑問はあるが怒りは無い。いや、怒ろうとすることが出来ない。
まるで初めから怒りという感情そのものが無いかのように、苛立ちも憎しみもまるで沸いてこない。
「ビスタの奴お前が来た辺りから随分楽しそうにしてやがったからなぁ…お前に気があるんだと思うぜ? 今のお前の表情見たら、きっと落ち込むだろうなァッハッハッハ!!!!」
「クリス・ヴァ―ミリア、早く武器を構えなさい。」
「へいへい。チッ……」
苛立ったように審判が向こうに注意を促す。
上機嫌だった奴の顔は一瞬にして冷め、しぶしぶ木剣を構えた。
「それでは。 決闘開始ィィィー!!!」
―――――――――――
同時刻、決闘場外、裏通りにて。
決闘場は食堂等と違い、毎日使われている施設ではない為少し離れた場所にあり、すぐ近くには裏通りが存在する。
元々輸送ルートに使われるはずだったこの道は、学園建設時に封鎖され日の目を浴びることは無くなってしまい、結局一部の生徒が近道として利用することとなっていた。
そこに怪しい影が二人。
「なぁ…ほんとにやるのか? 戦術クラスの魔法だと、本当に被害が出ちまうかもしれないんだぞ。」
「寧ろ被害が出た方が良いじゃねぇか、決闘どころじゃなくなる。ま、クリスの兄貴が負ける事なんてありえないから良いだろ。」
「それもそうか………」
二人が設置しているのは中型の魔法陣。
この裏通り、ごく一部の人間しか知らないが実は僅かに地脈が走っており、校区内で魔法を扱うのに最適なポイントである。
「よし………と。後は、待つだけだな。
もしもだが連絡があれば、魔力を通してすぐに離脱する。そん時はお前が頼りだからな。」
「任せろ。俺の<跳躍>は人一人担いだ程度じゃ問題ねぇよ。」
陣に書かれた魔法は[ノイザー・エクスプロード]。音と光、そして爆風に重きを置いた、正に「戦術」魔法であり、主に攪乱に用いられる魔法である。しかしいくら火力が控えめとはいえ戦術クラスの魔法であり、動作クラスの魔法である[フレイムボール]や[ショックボルト]、[アイスボルト]などとは比べ物にならない程の威力を有している。
おまけに、即席ならまだしもしっかり魔法陣まで用意してしまっているので威力は保証付きであり、学生程度の魔力の[マナシャット]では焼け石に水なのだ。
後は休憩でもしようと思った瞬間、二人は背後に異様な気配を感じた。
『面白いことやってるねえ~』
「なっ………うっ!!!?」
「誰だテメッ………ガハッ!!!!」
振り返ろうとした瞬間、世界がズレた感覚の後に腹部に激痛が走る。
そして、二人とも耐えられずに意識を失ってしまった。
『いやー効き目の証明はできたけどもうちょっとこれを試したかったからさー。丁度よかったよ。』
魔法陣を召喚用のものに書き換え、触媒として小さな魔結晶を置き、その上に懐から取り出した怪しげな液体を溢す。
その瞬間、ガラスの様に透き通っていた魔結晶が突然濁りだし、真っ黒に変色する。
そして先程まで白色だった魔法陣が、段々と魔結晶と同じ黒色に染まっていった。
『ははははっ!!! いいねいいね!! やっぱ楽しいなぁこれ!!!』
磯野!!!
決闘者を沸かせない為にルビは振ってないです
たまにふざけないと死ぬ病気にかかっているので、いつもはカーリーさんにツッコミ役をしてもらっていますが、現在療養中との事なので審判員さんにふざけてもらいました。
あ、ついでに評価・ブクマ等々よろしくお願いします。




