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03 砕かれたカタルシス 呼応する思い出

故郷の村、リーゼ村。

王都からは少し遠い為あまり栄えているとは言えないが、辺境と呼ばれる程廃れてもいない。


村民の人数はおよそ100~120人程度。どことなく寂しく感じるのは、今年はもう聖抜の日を終えて、若い子達が外に行ってしまったからだろう。


なお、冒険者向きでは無い生産系のスキル、<収穫(ハーヴェスト)>や<裁縫(ウェーバー)>を発芽させた者たちは、基本的に家業を引き継ぐので全員いなくなるわけでは無い。


―――――――――――――――


村を出てから3…いや4年か。


懐かしさと、怖れが私の中にある。


「錆の邂逅」をクビになった噂が、あの時のようにこっちまで広まってしまっていないか心配だった。




だがそれは要らぬ心配だった。


もちろん悪い意味で。


戻ってきた私を出迎えてくれる人なんて初めからいなかったのだから。


あれだけ人を詰って、馬鹿にして、嘲っておいて、いざ(一応Sランクパーティーに入っていたので)冒険者に大成してみれば、まるで興味が無くなったかのように忘れられていった。


友達の兄や姉達は皆戻ってきた時は暖かく迎え入れられていたというのに。



…………せめて父さんが生きていてくれれば……


叶わぬ望みを切に願ってしまう。

悲嘆に暮れている私に声がかかった。




「…………おい。」




ドスの利いた声、今にも人をブッ叩きそうな高圧的な声域、そしてこの威圧感。

間違いない、リーゼ村の村長、リガードさんだ。





「えっ………なんでs」

「何ノコノコと戻ってきてんだこのド畜生がッ!!!!!!!!!!!!!!」






容赦のない鉄拳が、私の頬に直撃する。そのまま宙を駆けた私の体はきりもみ回転しながら地面に激突する。





「お前のせいでなぁ!!! あれから村に来るモンが減っちまったんだよ!!!!!!」





痛い、殴られた頬が、打ち付けられた背中が、そして少しだけ感じていたカタルシスが打ち砕かれた心が。




「外で野垂れ死んでくれればよかったのになぁ!!!? この出来損ないが!!!!」





そして容赦のない言葉が、私の心を限界に達させようとしていた。


確かにスキル自体は代用が効くあまり良いものではないってことがわかったさ。


でもそれでも全く使い道がないわけじゃ無かった。


レシェル村での努力は実り、サポーターのいなかったCランクパーティーを1年間支えてきた。


それでも上位互換が出たのだから、このスキルはせいぜいニュービ―のDランクから脱初心者のCランクが限度なのだろう。


でも経験を積んで、スキルを駒の一つとして扱う事だってできたはずだ。


今はまだできていないが、いつかは実力だけで立派な冒険者になれると思っていたのに。





「ったく、今回は一発で済ましてやるが、二度と来るんじゃねぇぞ!!!!!」



恐らく私が男だったら頑丈という理由でもう一発殴られていただろう。

それに彼自身女性に手を上げるという行為自体忌み嫌っていることもあった。


それでも一発殴られたという事は、私のスキルがもたらした影響はそれほどだったのだろう。


リガードさんの拳は未だに怒りに震えており、出会う者すべてに災厄をもたらしそうなほどだった。


―――――――――――――――

重い体と痛む頬を抑え、なんとか実家に辿り着く。


3年ぶりに見る我が家。


それは手入れがされていないのを加味しても、想像の斜め下を行く酷い有様だった。



窓も玄関も破壊されている。

泥棒でも入ったのだろう、何せ父さんはSランクパーティーのリーダー、財宝の一つや二つは隠し持っていてもおかしくない。



それに、村の中心から離れているという事もあり、誰も気に留めなかったのだろう。


忌まわしき私の住処だったのだから。


私が作った父さんと母さんの墓も、次第に風化され見る影も無い。





瓦礫を踏まないように気を付けて、ドアを開ける。


相変わらず中身もボロボロだが、全体像としてはあまり崩れていなかった。


幾つか物が無くなっているが、大事なものは残っていた。



母さんお手製の美味しいスープを炊いてくれたかまど。

たまに野良猫が隙間に入り込む食器棚。

そして家族を囲む食卓。



どれも大切な思い出があるものたち。


それらは変わることなく私を迎えてくれた。





『ほら、カーリー、食べないのか?』

『冷めちゃうわよ? 早くいらっしゃい。』




「っ!!!!!!」


綺麗なままの家で、いつものように両親が隣に座り、私は真ん中の席。

昔の食卓を私は見た。


だが、父さん、母さんと叫ぼうとする一瞬前に、その光景は消えてしまった。



「………幻か」



追いつめられている状態にある私の精神が見せた幻か、それともスキルが昔から見せていたある種の過去視のようなビジュアルかはわからない。



でも、昔の輝かしい我が家をもう一度見ることができたのは、生まれて初めて、このスキルを持って良かったと思えた瞬間だった。



家が崩れておらず、まだ面影を残していたことを確認したので、外へ出ようとする。


その時ふと父さんが言っていた言葉を思い出した。




『カーリー、鍵っていうのはね、大事な何かを守るために使う、とっても大切なものなんだ。だから、絶対になくしちゃだめなんだよ。』





「…………まさか。」



そう呟きポーチから取り出したのは、一つの錆びた鍵。


家のどの鍵穴とも全く合う事の無かった、大切なもの。




幻を視た場所に立ち、虚空に鍵穴を思い浮かべ差し込む。


そのまま左に半回転。


当然だが手ごたえを感じず、やはり妄想に過ぎなかったかと思った瞬間、





カチッ





という音が宙から聞こえた。

読んで下さりありがとうございます!

3年ぶりに我が家に帰ってきたカーリーが見つけた物とは何なのか。

大体予想がついちゃいますが、次回も楽しんでいただけると嬉しいです!


ご意見、ご感想もお待ちしております!

改善点でも構いませんので、どしどし送ってきてください!

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