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幕間/Coda

「何故あやつに招待状を渡したのだ?」


「『協会との関連性の高い施設だから、何かしらの情報を得る機会があるかもしれない』、ではダメですか?」


「そんな有体などいくらでも言える。それにお主の縁であれば、その手の情報なら掴めるだろうに。」


「まぁ……そうですね、強いて言うなら『父性』みたいなものでしょうか。例え彼女が「白」の娘であろうとなかろうと、私は同じことをするでしょう。もとより、手放さなければならないものの一つでしたから。」


「………であれば何故我の分も追加で申請した。職権まで使いおってからに。」


「彼女があなたの回復の鍵であることは、あなたが重々承知しているでしょう? それに、あなたがその体、人間として生きる選択をした場合、多少なりとも人間のコミュニティに触れておいた方が良いかと思いまして。」


「……………………

(カーリーのスキルであればこやつの心情を読み取れるのだろうか…)」











バルガ村のギルドに入ったとき、正直目を疑った。

ここにシャルラッハがいる事は「契約」のリンクから分かっては居たが、何しろ昔の奴は…少なくとも我と「契約」した時からずっと、仮面をつけていたからだ。

それが奴のスキルかはわからないが、我の力を持ってしても、奴の仮面の裏側を覗くことはできなかった。


歳をとっても顔立ちが変わらないのも、ポーカーフェイスを切らさないのも、恐らくそのスキル故なのだろう。


ただ分かった事は、その仮面はカーリーに対しては完璧に機能しているわけでは無いという事だ。


冒険者は何分恨みを買いやすい職業だから、他人のスケジュールに合わせられる施設に入ることは反対だったが、今の時点で奴とカーリーを接触させるわけには行かない、クレセント行の馬車に同行したのもそのためだ。





とはいえ先日の事件においても、奴の助けなしにはカーリー共々死んでいたであろうし、「金」を退けるのにも一役買ってくれている。

少なくとも敵ではない事は確かだ。今の所は。


――――――――――――――――――


「これ、本当に私が貰ってもいいんですか?」


「ええ。元々私には必要無いものですから。」


「ありがとうございます、何から何ま、で……」


「…? どうかしましたか?」


「あ、いえ、何でもないです。

…いつか必ず御返ししますね。」


「楽しみにしてますよ。」







手紙、もとい招待状からは、期待と後悔の残留思念が漂っていた。

それも、その後悔は途方もないものだった。最早呪いに等しい程。

シャルラッハさんが誰かから受け取ったのか、はたまた彼自身のものなのか。



確かに、あの事件の生き残りで学園に通う事ができる年齢は私達だけだが、昔の知り合いとかの息子さん娘さんにでも渡せばいいのではないかと思うのだが…。

要するに、たまたまそんなものを持っているのはおかしい、と言いたいわけだ。文句を言える立場ではない事は承知している。


相変わらず謎が多い人物だ。







とはいえ、今後について悩ましい私達にとっては願っても無いことであることには変わりは無く、今年の夏、第二学期から編入することになった。


招待状の詳細は、ギルド役員からの特別推薦枠で、10年程前に発行されたものだった。

またいつものように下宿するのではなく、学園寮で生活できるらしい。

また成績に応じて一定の給料…というか普通に今より良い額が支給されるようで、月一でクレセントの下町への外出許可が降りて、都市の生活を満喫できるとのことだ。






「(学園…かぁ。)」


ソルトンがどこかの卒園生であると聞いたことがある。

魔法の腕は中々だがあまり戦闘慣れしている様子はなく、タイミングは三人称視点である私が合わせていた事を思い出した。


貴族の生まれらしく、お金には特に困っているわけでは無いが、学園でたまたま出会った田舎出身のシンに魅かれて、そのまま冒険者の道に進んでいったという。




当然ながら教育は全て地方団体が自腹で行っており、また協会公認とはいえかなりの授業料を請求するところがほとんどなので、必然的に生徒の大半は貴族出身であり、シンや私のように推薦枠で入ったものや、Aランク以上の冒険者を親に持つ者が例外として入園している。


「(貴族ってお高いイメージあるよね… いじめられたりしないかなぁ…)」



今…と言うか「錆の邂逅」をクビになる直前こそ彼とは多少なりとも相互理解が深まったものの、最初の頃は私に対してかなり高圧的な態度をとっていて、何度も罵声を浴びせられたことか。



「今頃、あの人たち何してるかな…」





―――――――――――――――――――






「ぐっ……!!!」

「シン!!! 大丈夫ですか!!!?」


勢いを殺しきれず直撃を喰らってしまい、軽く5mほど吹っ飛ばされる。


<見切り>による圧倒的反射能力と、自身の技術と経験を合わせた、瞬間的超高圧力の斬撃、通称「死の目」と呼ばれるシンの故郷に伝わる流派の極意。

それすら奴の反則的な火力と耐久力に太刀打ちできず、反撃をもろに受けてしまったのだ。


「『死の目』すら効かないなんてッ……」





「おやおや、コソコソ嗅ぎまわっていたようですが、やはりこの程度でしたか。」


何事も無かったかのように鎧の埃を払う。


いや、それは最早「鎧」という枠組みを超えていた。

完全なる全身武装(フルヘルム)、機械的なスーツを纏う姿は、魔法の存在するこの世界において、異彩を放っていた。


「よろしい、次はこちらの番です。」


そう言って腰に指してある切手サイズの何かを右脚部の装置に差し込む。

それと同時にベルトに刺さっているよくわからない装置に別の小切手を差し込み、周囲の魔力が足先に吸収・圧縮されていった。



「ッ!! あれはマズいッ!!!! 離脱の準備を!!!」

「了解です!! [マナシャット]ッ!!!!」


一目で分かる魔力量、それを足先に抱えたまま、背後から発生したとみられる斥力で浮遊する。


「死ね。」


そのまま斥力を右脚と直線状になるよう噴出し、圧縮された魔力が内部で渦上に循環して螺旋状の新たな斥力を発生。

そして着弾する。


軍隊魔法クラスの魔力量を宿した一撃は周囲に大爆発を引き起こし、廃墟となったレンガ通りを灰燼と化した。



「…さて、逃げられましたか。」












過去に半歩ずらしを使われた際、威力が本来の半分以下に下がってしまい、死にかけた事がある。

それから1年間程かけて、それを克服すべく修行に修業を重ね習得した新たな技がある。


空間為替(タイムレート)」。


極限の集中力を以て、自身の魔力を空間と同調させ、相互関係を作り出す。そして空間内に入ってきた相手の魔力の流れを固定することで、確実に合気を発動する。

魔力喰らい(マナイーター)」の上位種ような相手にはあまり有効ではないが、下手に技術を持った相手なら、この一撃から逃れる術は無い。


そして可逆的な相互関係という事は、逆にこちらが半歩ずらしを行えば、空間全体の魔力の流れが齟齬を起こすことになり、結果として「空間為替」の範囲である周囲2mの魔力は分散してしまう。


そして「空間為替」と同時に「死の目」を放ち、奴の蹴りの威力を軽減したわけである。




しかし加えてソルトンの[マナシャット]による魔力防護壁があったのにも関わらず、シンは重症、ソルトンも骨折とかなりの痛手を負った。



「これが「黄」の実力…ですか………ゴボッ…………」

「こりゃぁ、受けるクエスト間違えたな……ハハハ………」


―――――――――――――



事件当日、某所にて。




「お、おぉ~? あの時のおっさん、どっかで見たことあると思ったら、そういう事か! ライセンスはく奪ってことは、俺が野暮用を済ませてる間に、随分派手な事しでかしたみたいだねぇ。」


「まぁいいか。あの力を利用して作ったコイツは、バッチリ効き目があることが証明されたわけだし、ジャンジャン作っちゃおう!」






「全く、絶景だとは思わないかい? ねぇアイボリー…」

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