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13 見誤った者たちの末路


―――――――――――――――――



「ッ!?」



おかしい、シンとかいう奴の後ろでコソコソしてたはずの「無能」が、俺の攻撃を躱しやがった。

しかも、目は明らかにこちらを向いたまま、意識的に回避したという事になる。


偶然…なのか? 


いや、そうに違いない、この俺が、「無能」より弱いはずがない!!!

あれだけ大見え張ったんだ、こんな奴俺一人で…ッ!!





しかし、何度振っても、必ず余裕を持って躱されてしまう。

まるでこちらの動きなどお見通しとでも言わんばかりに。



「ガッ!!?」


一発、反撃をもらった。


嘘…だろ…!?

こっちは<見切り>で大抵の攻撃は軽く捌けるんだぜ!?

なのに、流水のような自然な反撃に、まるで対応できなかったッ!!!


ありえねぇ!! ありえねぇ!!! ありえねぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




躱される度、こちらの弱点を的確に突いた反撃が飛んでくる。

力の流れを完璧にとらえた無駄のない一撃は、俺の体を的確に痛めつけた。おまけに攻撃には剣を使わず素手で殴ってきやがる、殺すのはご法度とはいえ舐めた真似しやがって…!!


丁度、後ろの3人が奴の動きがマグレではない事にやっと気づいたころだ。



このままでは、負けてしまう。

言い出しっぺがタイマンじゃないのは癪だが、お前に負ける「結果」が残るのはもっと癪だッ!!



「お前らァ!! 袋叩きにするぞォ!!!!」


――――――――――――――――

男がそう叫ぶと、後ろの3人がすぐさま戦闘形態に移行する。


最初は手出ししてこなかったという事は、恐らく1番目の男が「俺一人でも倒せるぜ!!」とでも豪語していたのだろうか。


今となっては見くびりすぎだと思うが、4人相手は確かにキツい。


<共鳴>のお陰で記憶から引き出した経験が勝手に対処してくれるのは良いが、大人数を相手にしたことは無い為処理が間に合わない。


重装備を相手にしていると他の軽装備2人が邪魔をしてきて、かと言ってその2人を倒そうとすると、重装備の一撃が飛んでくる。


何より魔法使いの魔法が的確で、こちらの攻撃に合わせて<ショックボルト>を事前に展開しておいたり、軽装備の2人が横に避けたと同時に高威力の火炎球が飛んできたリする。


ちょっとこれはマズい。いくら<共鳴>とはいえ、防御も攻撃も全て技術任せ、故に直撃に対しては何の効力も持たない。


「ナル様ッ!! ちょっとキツイですぅう゛ぅ゛っ゛!!!?」



今の氷弾は危なかった。あとほんの少し右にずれていたら、私の耳は肉片にされていただろう。

っていうか、完全に殺しに来てるよねこの人達…

いくら四肢が吹き飛ばされても生やす薬があるとはいえ、即死に関してはどうしようもない。



「しゃーないのー…… ほれ、[ディスペル]」




ナルダ様の人差し指から放たれた光線は、私に迫りくる相手の魔法とぶつかり、対消滅した。


[ディスペル]、基礎的な反転魔法。

反転魔法とは既存の魔法と真逆の魔力の流れを生み出し、結果として衝突した魔法を打ち消す魔法。

[ディスペル]の他に、[リフレイン]や[マナシャット]など、打ち消せる範囲は異なるが、どれも導かれる結果は同じである。


なお魔法を反射する[マナリフレクト]のように、概念魔法スレスレの例外もあるが、現時点でのカーリーは知らないので説明を省かせていただく。




「なっ…!!」

「オイオイマジかよ…」



私も前に反転魔法を使った事があるが、その仕組みから分かる通り反転魔法はそれに割いた魔力分しか打ち消すことができない。

つまり動作クラスの魔力では、その1つ上の戦術クラスの魔法を打ち消すことはできないという事だ。


その為概念魔法の存在により、基本的に「やられる前にやる」という魔法戦のスタンスでは、反転魔法は必要以上に魔力を割かなければならず、それなら他の魔法を使った方がいいという結論になり、結果反転魔法を使う魔法使いは殆どいない。


逆に言えば反転魔法を使いこなせる魔法使いは、必然的に熟練者ということになる。


もうこの場の誰もがナルダ様の事を物知りなだけの子供とは思うことはないだろう。



「魔法使いの対処、お願いしますよ!!」


「う~ん、疲れるからやだな~…」



本人は乗り気ではない模様だが、確実に向こうの魔法を打ち消している。

魔法の詠唱も簡単ではないので、それをいとも簡単に消されてはたまったものではないだろう。


こちらも魔法が飛んでこなければ少し余裕が生まれる。

よし、1対多数にも大分慣れてきた。


一気に巻き返す…!!

――――――――――――――――

いくらひらひら躱そうと、うちのタンクの<絶壁(ガーディアンズ)>の防御は破れまい。


タンクが大きく手にしている戦槌を振りかぶり、叩きつける。



<絶壁>の応用で反動を抑えた一撃は、地面が抉れる程の破壊力を有している。それは土砂の衝撃波すら巻き起こし、着地に失敗するくらい大きかった。

近くの冒険者どもが寄ってきそうだが、どうせここら辺の仕事を受ける奴は俺達より弱い、まとめて叩き潰せば問題ない。




見ろ、この圧倒的な破壊力ッ!!!


Bランクパーティーにさえ引けをとらない破壊・耐久力、それに加えて俺ともう一人のエンフォーサー(戦闘型サポーター)、魔法使いがいれば、あの「無能」がどれほど豪運だろうと、勝てるわけがないのだよ!!!!






そう、思っていた。



「ぐぅあっ!!!?」



強固な鎧を装着していたタンクが、うめき声を上げ後ろに倒れた。

あのガキはうちの魔法使いが対処してるはずだし、奴だって俺らエンフォーサーに手一杯で魔法なんて使わせる暇も与えなかったはずだ。


入ったのもさっきの足払いの後の一撃だけ………


一撃……



おい嘘だろ……



一撃で人一倍ある重量を倒したっていうのか!!?

どんな筋肉してやがるんだ!!??

ありえねぇ!!!!!!

ミノタウロスとタイマン張れる中々に高かった鎧なんだぞ!!




あまりの非現実的な事実に、動きが一瞬止まってしまう。

そこが、その一瞬さえなければ、タンクもあくまで手札の1つ、事例が無かったとはいえ無力化されるのも視野に入れておけば、まだ彼らに勝機は残されていただろう。

復帰まで時間を稼ぐ手段はいくらでもあるのに。


不敗神話という絶対的な自信が、仇となった。



『よそ見してていいのかな~?』



幼くも、どことなく刺々しい声が聞こえた。あのガキッ…!!

まずい、奴から目を離し…



「ッ!!!」




綺麗なコースを描いた一撃が顎にクリーンヒット。

視界がぼやけ、俺は気絶した。


クソッタレが……





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