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12 肩慣らし

体力テスト:50m走や重量挙げ、立ち幅跳びなど、基礎的な身体能力の測定。

近接向きスキル持ちはここで頑張って点を稼ぐ。肉体の成長も早いので、訓練所で3ヶ月もすれば十分100点を目指すことができる。




魔法テスト:[キュア]や[ファイアボール]といった効果が文字通りの初歩的な魔法から、魔法的な側面で対象をスキャンする[アナライズ]、電圧を流して神経電流を一部停止させる[ショックボルト]などのそこそこ難し目の魔法の実技。


魔法はスキルと違い、魔力と知識さえあれば誰でも使うことができるので、捨てる人はまずいない。

またダンジョン内で知らない魔法に遭遇することは死を意味するので、訓練所でも魔法学は必修科目となっている。



知識テスト:魔物の生息、繁殖条件やダンジョンの発現条件。その他各種魔法についての知識。

王都でもそこそこ通の人でなければ全問正解はおろか、7割すら難しい。

カーリーの供述からわかる通り脳筋な人達ばかりなので、基本的に捨て科目。


そもそも死と隣り合わせの職業で、高い金を払ってまで教養を身につける必要は無いという考えが一般的なので、歴代最高得点は87点である。



ちなみにカーリーは家の本を昔から読み漁っていたのでそこそこ点を取れた。

――――――――――――――――

「ひゃくっ…!!?」

「あのガキ何モンだ!?」

「何でそんな奴が「無能」と一緒にいるんだよ!?」


周囲から上がる驚き声。

何しろ自分達よりも10以上年が離れ、まだ成長期すら訪れていない幼気な女の子が、自分達の何倍もの知識量を有しているのだから。


そして嫉妬心が芽生え、あらぬ噂を口にする。





「い、イカサマだ!! そんなガキが、100点なんて採れるわけない!!」





1人の男が立ち上がり叫んだ。

人間は信じられないモノを無理矢理自分の常識に落とし込もうとする。それは集団の中にいればなおさらの事。

とある国ではこちらでいう神獣を共生の関係ではなく、一方的な信仰として観ているらしいが、それもその一種だろう。


誰かが先陣を切ると、自分も常識が崩れて不安定な精神を落ち着かせるために後続してしまう。

もとより摩訶不思議な世界だ、説明できない事なんていくらでもあるだろうに。



「そ、そうだ!! なんかの魔法でのぞき見でもしたんだ!!」

「それか、問題に手違いがあったんだ!! でなきゃこんなガキがあのテストで100点なんて採れるわけねぇ!!!」




ミシリ。



瞬間、背後から何かが軋む音が聞こえた。


いつの間にか手にしていた頑丈そうな鉄の棒が、受付さんの手によって綺麗に握った形に沿って拉げていた。


しかも、彼女は明らかに青筋を立てていながら、営業スマイルを絶やさずに。





「……… 失 礼 、 う ま く 聞 き 取 れ な か っ た の で す が ? 」






喧騒の中、その一声で場の熱は一気に絶対零度まで凍結した。


他の受付でクエストの処理を済ませている冒険者も含め、誰もが死を覚悟しただろう。

中には失禁一歩手前まで顔が青ざめている者もいた。

――――――――――――――――――

齢30前半に見える受付さんだが、彼女も相当な修羅場を潜っていると見て取れる。


無事だったのはナルダ様と他の受付さん達くらいだ。

ナルダ様はともかく、彼女らは一体何者なのだろうか…


あまり深くは考えないようにしよう。

今は、別の問題が最優先だ。


あの後、近くにあるダンジョン浄化のクエストを受注したはいいものの、人気が無くなった辺りで道を塞がれた。

数は3,いや4人。重装備1、軽装備2、魔法使い1と、偶然にしては中々理想的な編成だ。


おまけに全員武装済み、話し合おうという魂胆は全くない。


ああ、本当に彼の言うとおりになってしまった。









『初心者狩りには気を付けろ』



そうシンに言われたことがある。



初心者狩り、詰まる所新人に追い抜かされないよう、早めに芽を摘んでおくという事だろう。


それに費やす努力をスキルを活かしたり、体を鍛える等他に向けることはできないのかと思うが、何しろ私自身でさえナルダ様の森で自分と向き合うまでは、そのことから目を背けていたのだから何も言えまい。


冒険者同士の殺し合いはご法度とはいえ、意見のぶつかり合いは多少は融通が利くためある程度のいざこざは目を瞑られている。


今後追い抜かれた新人に仕事を採られる可能性を考えれば、ギルド全体としての回転率は悪くなるが今の世代は生き残れるだろう。

魔王軍の動きが活発になっているこの頃、人手不足は深刻な問題のはずなのに、未だにこの手の刑罰は定められていない。






先程受付さん達の逆鱗に触れた奴等が我慢ならなかったのだろうか、他人に構ってる余裕なんて無かった私にとって、理解しがたい感覚だ。



「へっへっへ……痛い目ェ見たくなきゃさっさとその依頼書置いて田舎に帰んな。」


「そうだぜ? 痛い思いしてそれを置いてくか、それを置いて痛い思いをせずに帰るか、100点を採ったガキならどっちが賢い選択かよぉ~くわかるよなぁ?」





初心者狩りというより、自尊心を保ちたいだけにも思えるが、それは結果論に過ぎない。

過程として私達は今初心者狩りの被害に遭いそうなのだ。



「(どうします!? 1人を相手にするのだって厳しいのに、4人もいますよ!?)」


「(4人? 10人20人じゃあるまいし、ちゃちゃっと片付けれるじゃろほれ。)」


「(え、やるの私ですか…)」



いくら消えかけとはいえ、仮にも神獣であるナルダ様から賜った力、確かにごろつき如き屁でも無い…かもしれないが、突然筋肉がもりもり増えたわけでも無いし、勝てるビジョンが見えない。


にしても流石は神獣、感覚がおかしい。




「へっ、「無能」如きが俺様に叶うわけないんだよ!! 喰らえェッ!!!」



踏み込みからの振り降ろし。技術を抜きに、筋肉にモノを言わせた斬撃は無駄が多いが、それを持ってもまだ余る強力な一撃。



いつもなら、そのまま受け止めて腕が痺れ、相手のペースに乗せられて敗北していたが、今回は何かが違った。




スッ。と、自然な重心移動で剣を躱した。



唖然とする男たち、そして私。

やはりとばかりに微笑むナルダ様。


感じた違和感、何かがおかしい。



その正体は、次の攻撃を躱したときに気がついた。




「(遅い…?)」





そう、向こうの動きが遅く見える。

ナルダ様の御膝下で、もう一人の私と戦った時に比べれば、俄然遅すぎるのだ。

これが<共感>、いや<共鳴>の力かは分からないが、理由はどうあれ確かなことは言える。



私は、あの森で強くなった。


投稿が遅れてしまい申し訳ありません!!

ざまぁ系は私はあまり得意ではないので、タグに付けてますが何だかんだあまりそういう展開に持って行きたくなく、どうやって整合性を採るか結構悩んでました。


何しろ管理者の方では同じようなシチュでニンジャを出したので、こちらは対極として自分たちの力でどうにかしたく、このような結果に落ち着きました。


次回は様式見肩慣らしを終えてダンジョン掃討開始です。お楽しみに!!

あ、奴隷枠はナルダ様が占めてるからありません。

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