二話 朝乃茉依
「おはよう、章将」
教室に着くと荷物を机の上に置いて二人組の方に話しかける。
「ああ、おはよう宗洋」
「え?宗洋、俺には?」
甲星を無視しておく。
あれから若山も連絡をしていないので隠していることがわかってしまった。
つまり若山は甲星に俺が見ていたことを伝えていないから若山には思惑があることになる。
今はそんなことを考えていても無意味だ。
「ちょいちょい、章将だけ少し来て?」
「まあ、いいけど...」
「すまんな甲星」
章将と教室の隅っこに向かうと章将が先に言ってくる。
「怪しまれるだろ、俺が結沙と付き合っていることを知っているのは当事者以外ならお前しかいないから」
教室の中央を見ると女子達が群がっているのがわかり黒木と目が合う。獅子をも殺すような目をしてらっしゃる。
あー、もしかして...
「黒木には伝えてないの?」
「ああ、だから...「黙っておくから心配するな」
章将が言いたいことがわかったので大丈夫だと思わせておく。
弱味であることがわかってしまったので隠している間に脅しの材料として使ってやろう。
甲星は知らないのでうまいこと使わないとな。
「これでいいか?」
章将は話が終わらないのか焦っている。
多分黒木からの視線を受けていることがわかっているみたいだ。
「一つだけ!甲星から昨日または今日の朝などに連絡はあったか?」
「ないが...それがどうした?」
「いや気になったことがあったから」
「なんだ?教えろよ」
「ホラ!行け!」
教えたくないから章将を押して黒木の混じっている女子の群れの中に入らさせようと愚策するが章将はブレーキをかけて回避する。
まったくヘタレが。
チィ
心の中で舌打ちをしておく。
俺も彼女出来たらヘタレであると思うけども見ている側はそう思ってしまうのは仕方ないことだろうか?
よくある当事者側は真剣なのに見ている側はもっといけと思ってしまうことだろう。
「全くだ」
章将はそう少し不機嫌そうにして自席に座る。俺も荷物をロッカーに入れて自席に座りうつ伏せになる。
だがその不機嫌なのは俺にも感染したようで今日も帰ったら家業をしようと思ってしまう。
本来俺達の家業は闇なのだ。だから表では掃除屋としているだけだ。俺は闇の家業を継ぐことが怖くて怖くて休んだこと、いやサボることが多くなっていた。
なんだが闇にこれ以上踏み入れたら戻れなさそうで...。
でも昨日殺っていて楽しいと思ってしまう自分がいたことに驚愕してしまった。
きっと楽しいのは負の感情と言われるものを持っていたからに違いない。
キーンコーンカーンコーン
普段どおりのチァイムがなる。けれども普段は居るはずの人がいなかった。
「あれ?朝乃様は?」
「そうだ、まだ来ていない」
「は!もしかして身に何かあったんでは?!」
「それなら探さなければ」
「だが無理だ、憎き担任が来る」
「そうだな、点数が下げられるのは勘弁だからな」
「おーい、今から出席を取る!」
担任が入ってきてそう言うと廊下から走っている音がして俺たちのクラスの戸が勢いよく開かれる。
そこに居たのはこの学校一の美少女と言われている朝乃茉依。美少女とよく言われる整った顔に、黒の長髪、そして日本人が理想としている桃がついているのだ。
担任ですら少しフリーズする。
「遅刻しました!」
「ああ、わかった今回はセーフにしておくが気をつけろよ」
あからさまに贔屓している。この担任は遅刻には厳しいと有名なのだが学校一の美少女の前ではただの贔屓おじさん化してしまう。
「おい、坂寄、いま変なこと考えただろう」
「いえ、そんなことは」
なんで理想型物語でよくある勘がいい時があるんだ?
このせいで点が減らされるのは嫌だからな?
そう問いかけても気づかないことも理想型物語だと思ってしまう。
朝乃は荷物があるかばんを机の横にかけると座る。
その行動が美しく大体の人は見惚れてしまうだろうが俺はそんなことにはならない。
そういえば朝乃は告白されることがよくあるが全部断っているみたいのだが断っている理由はこう言っているみたいだ。
『私の父に認められたらいいですよ』
そう答えているみたいだ。学校への情報が疎い俺の耳にすら入ってくるのでどこまで朝乃に告白している人が多いことがわかってしまう。
どうやら朝乃の父はこの地域では有名で、暴力団を一人で壊滅させたという伝説を持つ人なので普通ならどんなことが言われてしまうか怖がり朝乃の父に向かうやつはいないが、壊滅させただけなので後処理が俺達の家業のところへと回ってしまうのだ。正直いつ終わるのか心配である。
そうしていると授業が始まる五分前だったのだ。




