0003 ご令嬢、目をさませば家族にもみくちゃにされる
初、予約投稿。うまくできるかな、、
目が覚めてぼんやりしていると、ノック音とともに扉の開く音がした。
「お嬢様、おはようございます。お目覚めですか。」
そう言って入ってきたのは執事のキース。ミリアの記憶と凛の記憶がおちついたおかげで、思い出すことができた。
(この間、名前聞かなくてよかった。)
「おはようキース、起きているので窓を開けてくれる?」
「かしこまりました。」
驚いた様子もなくキースは窓をあけてくれる。
記憶の中でミリアはあまり窓を開けることを好まなかったようだ。なのであえてお願いすることにした。
窓を開けて魔力が漏れ出してしまうことを恐れていたみたい。
部屋の中には特殊な魔石でできた結界が張ってあって、使用人たちが魔力であてられないようになっていたものの、窓があいていると自然と風の魔力に混じって魔力が外に漏れてしまうのだ。
ミリアとしては小さい頃から魔力操作を一生懸命に努力してきた甲斐あって、凛の記憶の戻った今は完全に自分の魔力を把握してコントロールすることができるようになったのだ。
カーテンを開けて窓の開いた部屋には暖かな日差しと心地よい風が入ってきている。
とても日当たりのいい部屋なのだから、窓をあけないなんて損だわ。
凛の時代、外はオゾン層のほとんどなくなった空から降り注ぐ強い紫外線や、砂塵には大量の科学物質が含まれいて、かなりの危険を伴う行動であった。
そのため、カーテンをあけて窓を全開にして風を通すなんて一般家庭に生まれていれば、家に高性能な紫外線カットや高性能な機械がなければかなり難しいことだったのである。
窓の開いた部屋には清々しい空気が入ってくる。
「お目覚めになられてよかったです。ポムムを召し上がって少しお話したのを覚えていますか?あのあとすぐに倒れるように眠っておられて、今日はあれから3日ほど経ちました。」
なるほど、あの日から3日も寝込んでいたのか。しかし、大変な体だな。体を成長させて、体力もつけないとずっとせっかくこんな面白そうな世界に生まれ変わったのに、ベッドで過ごすなんてもったいない。
どちらかといえば研究してすごいしたい。
え、そうです。研究です。だってせっかく面白そうな魔法があるんだし。
記憶の入り混じった状態で、凛の方が何倍も生きた年月が長いので感覚はわりとそちらに引っ張られているが、なんとなく魔力や魔法のある現実に対してはミリアの経験の方が強いので、中間的というか、感覚的には元のミリアとリンのあ間くらいのようだ。
(魔法もあるんだし、まずは探検からかしら、、、食べ物も違うみたいだし何からしようかな、、うふふ)
ミリアがニマニマと空想という名の妄想にあけくれてボーッとしていると、ふいに額に手があてられた。
「熱も下がったみたいですね。紅茶をご準備しますね。」
ぼーっとしていたミリアが悪いのであるが、いきなりのことにまたもやフリーズしてしまうのであった。
手際良くキースが紅茶を準備していると、カチャリと扉の開く音がした。
「ミリア、調子は戻った?」
心配そうに入ってきたのは長兄のウィリアムである。
母親譲りのさらさらの紺色の髪の毛を後ろに束ねて、グレーの瞳でミリアのことを心配そうにみている。
(この天使みたいな天然のイケメンが、お兄様、、、)
たしかに記憶にはあるのだが、ここ最近はあまり関わりをもとうとはしなかったみたいだ。
「ウィリアムお兄様ご心配をおかけしました。もう熱も下がって大丈夫ですよ。」
「お兄様、、、、ミリア、もう一回言って?」
「お兄様?」
「くううううう、お兄様、いい響きだね。ふふふ。」
いつもの兄の表情と言えばニヒルな笑顔みたいなことが多いはずなのだが、みたこともないほど機嫌よく笑顔でウィアムはよしよしとミリアの頭を撫でてくる。
なでなで。そしてよしよしといつのまにかハグされていた。
嬉しそうなので、ミリアも何も言わずに、笑顔でウィリアムを見ていると、ウィリアムはパッと顔を赤くしてぼそっと、
「なにこの破壊力、天使かな、ミリアは天使なのかな」
とか言いながらニマニマしているので、とりあえずそのままにしておくことにした。
そんなことをしているとまた扉の開く音がして父リヒトと母ローズ、そして次男のオリバーが部屋に入ってきた。
(ん、家族総出でいったい?)
「ウィリアム、抜け駆けしてミリアの部屋へ行くなんてずるいじゃないか。ミリア、調子はどうだい?」
父リヒトが心配そうにミリアに声をかけてきた。
「お父様、ご心配をおかけしました。」
ミリアの声に父リヒトもにへらっと笑ってギューっとミリアのことを抱きしめた。
ムギュ。
「お父様、、少し痛いです。」
「パパでしょ?」
「パパ?少し痛いです」
「きゃあああやっぱり可愛い。」
そんなことを息子二人と妻の前でやってしまうリヒトの子煩悩っぷりはこれでもかと言うくらいにわかったわけだが、
普段凛々しい顔の父ばかりをみていたハズのミリアは目をパチクリとしてしまう。
「ミリアちゃん、よくなったのね、よかった。本当に心配したのよ」
そう言いながら母親は笑顔でいつの間にかハグしていた父親を引き剥がしてミリアのことを抱きしめた。
その細い腕のどこにそんな力があるんだと思いつつも、
「お母様にもご心配をおかけし」
「ママでしょ?ママって言ってくれなきゃないちゃう。ぐすん」
「ママ?」
「きゃあああミリアちゃんほんと天使すぎる。」
と父親と似たような反応をする母ローズである。抱きしめられているのは少し苦しいが美人でいい匂いがするし、おまけにナイスバディだ。じつにけしからん。
天国がみえるな、とかちょっと酸欠で窒息しそうになりなっていると、次男のオリバーが助け舟をだしてくれた。
「母上、ミリアが窒息しそうになっていますよ。」
「あら、ごめんなさいミリアちゃん」
あぶない、けしからんお胸様に挟まれて昇天するところだった。
そういって離してくれた母親とミリアの合間に即座に割り込む兄、オリバー。そしてナチュラルに抱きしめれた。
「オリバーずるいわ!窒息しそうだなんて言いながら独り占めしちゃうなんて。」
「母上は十分にミリアを抱きしめていたので次は私の順番です。」
そうローズに言い返しながらもとても優しく抱きしめてくれるオリバーに笑顔をむけると、
「おうふ、、、なんて破壊力だ。これならストーンゴーレムも砕けるんじゃないか」
といいつつ天を仰ぐ。
「みなさま、ミリア様は病み上がりですよ。紅茶を淹れましたのでまずは落ち着いてください。」
そうキースに言われれば、とりあえずみんなベッドの側に置いてあるソファで誰がミリアの一番近くに座るのか椅子撮り合戦が始まるのであった。
(金髪ナチュラルイケメンの父親と紺色のさらさらヘアで美人の母親、そして将来が約束された顔立ちの長兄に、ちょっと目つきの厳しめだけれど滲みでるイケメン感の次兄。ナチュラルにこの家族の顔面偏差値の高さといったら、どこのモデルだよ。)
自分もそこに含まれるナチュラル美少女だと言うことに気がついていない残念なミリアである。
(しかし、記憶にある家族の雰囲気と全然違うんだが一体なにがあった?)
家族の様子を見ながら脳内ではてなが飛び交うミリア。
なんとなく察したできる執事であるキースは、ミリアに、
「今まではミリア様に近寄りたくてもみなさまの魔力でミリア様の魔力コントロールが難しくなって、一回目誰かに抱きつかれた時点でいつもなら倒れていたので、ここ最近は、あまり直接近寄ることができなかったのですよ。ミリア様を思って距離をおいていたのが、今まで近寄れなかった分、ここで爆発したのでしょうね。」
(なるほど、記憶にも途中まではよくお兄様たちに遊んでもらったりしていたのに急にここ数ヶ月は距離をとられていたようだったけれど、そういうことだったのね)
いろいろと理解できたミリアはなんとなく暖かい気持ちになって笑顔を全員に向けると、
「「「「ミリアー!!!」」」」
と言って全員から抱きつかれてもみくちゃにされたのであった。
伯爵家は実に家族仲がいいのです。
一応ラブコメ要素も入れるので、ラブコメには仲のいい家族が必要なはず!(持論)
あと、屈強な壁役の兄たち。そう、あくまで壁役。この壁をやぶれる勇者を登場させることはできるのかな、、、
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豆腐メンタルなので、絹ごしのごとく優しくあつかっていただけると嬉しいです。
嬉しいことは小さなことでもモチベーションに繋がる作者です。