0021 ご令嬢、研究室を作る
リヒトと養蚕の話をしようとやってきたが、どうも来客中だったらしい。
(こんな時期にどうしたのかしら。)
疑問に思いながらも、次に確実に魔石を持っていそうなキースに連絡をとる。
屋敷を探すのも大変なので、最近開発した通話のできる魔道具テルくんのテストのためにも使ってみる。
「キース、魔石がほしいのだけれど、予備をいくつか送ってくれますか?」
「承知しました、お嬢様。すぐにお部屋へ転送します。」
「ありがとう。よろしくね。」
最近キースが忙しくしているので、わざわざ呼ぶのもなと思い、キースに少し前から物を転送できる魔法を作ったのだ。これはエルメリたちに渡したものの改良版で、かなりの重量を転送することができるようになった。
これはまだ売り物にはできないと思い、いったんは家族内とキースと他数人の使用人に持たせているのだ。
ちなみに名前はポーターくん。もはや名前に何も言うまい。
部屋に戻ったミリアは魔石を受け取り、ルシフェルとゴンに続きを製作することを伝える。
「パパ殿のところにいったのではなかったのか。」
ルシフェルはリヒトのことをパパ殿と呼ぶ。あだ名かな。
「誰か来客中だったのよ。魔石はキースに送ってもらったからあるわ。それじゃ続きをはじめましょ。」
「うむ、では魔石を粉にして、まぜてみるところだったか。」
「そうでしたな、ほんならお嬢はん、こっちのは準備できてますで。」
そう言われるとミリアは魔石を粉にする。一瞬で粉にしてしまうが、きちんとミリアの魔力で残留していた魔力は押し出してしまっている。
「うむ、それだけできればいいだろう、それで早くまぜてみるのだ」
ルシフェルのテンションもこころなしかあがっている。
「ルフェルもこういう研究好きなの?」
「そうだな。あちら側ではいろいろ研究したが、こちら側の素材がなかなか集まらないのだ。特にこちらで進化しているスライムは弱すぎてあちら側にいては一瞬で捕食されてしまうのでな。新種と確認される前に痕跡を消されるのだよ。」
「どんな環境なんだろそれ、、、」
「自分もちょっとゾクっとしましたで、、、」
「世界なんぞ弱肉強食であろう。」
「そうなんだけどさ、なるほど、そんな環境じゃこちらの素材なんて手に入れられなさそう。むしろレア素材じゃん。」
「うむ、そういうことである。逆に強いものばかりいるのでな、バカが我が城に攻めてくるときには、いい材料があちらからやってくるので、そういう意味ではいい環境であったが。」
そんな話をしつつもミリアはテキパキと魔石を粉にしたものをスノースライムと混ぜてゆく。
装置にその混ぜたものを入れて、あとはおまかせである。
「さて、どうかな。」
でてきたものをみてみると先ほどよりも手触りのよい糸になっていた。
ゴワゴワしないしこれなら軽いし使えそうである。
スノースライムの糸。100%魔物を原料とする人工の糸ができた瞬間であった。
その後このスノースライムの糸は伯爵領の冬の主産業の一つとなっていくのであった。
「うむ、これはなかなかよいな。」
「おもしろいものですなあ。」
ルシフェルもゴンも面白がっているようである。
「ルシフェルの助言のおかげよ。ありがとう。それにしても面白いはね、魔物の素材と魔石の粉でこんなに綺麗に混ざりあうなんて。」
「魔物も魔石を持っているからな。半端な魔石では反発をおこすが、ミリアは魔力が多いしそれだけの技術で魔石を粉にできるのだ、これくらい容易いであろう。しかしスライムでもこれほどの品質になるのか。なかなかに興味深い。」
「いろいろこれからも研究したいのだけれど、この糸を作る装置も小さめに作ったとはいえ、だしっぱなしってわけにもいかないし、、、そうだ、空間魔法で研究室を作れないかしら。」
「いい考えである。ほら、早く作るのだ。」
やはり空間魔法で人の入れる空間をつくることができるとわかったミリアは、その後いくつかルシフェルと確認をして空間魔法を発動させることにする。
(どこかこの部屋と簡単に出入りできる場所があった方がいいわね、、この体とあとはルシフェルが出入りできればいいからかなり小さめの扉でいいはず。。そうね、このあたりの壁でいいかしら。)
そんなことをかんがえながら、子供が一人通れそうなくらいのエリアを壁に認識して、その奥に部屋があることを想像する。
「年中暖かい部屋を所望するぞ、それに庭付きがよい。」
注文の多いルシフェルである。
「それなら庭付きの小屋がいいわね」
そう言いなながら、春の暖かい気候を思い浮かべながら庭付きの小屋を思い浮かべる。
(小屋の外壁はレンガ調にして、部屋の中は自動空調完備の部屋で。)
そうすると、大量の魔力を扉に吸い取られる感覚があった。
(これでできたのかしら?)
部屋の壁に手をかざすとその部分がぐにゃりと変形して穴ができた。隣の部屋へとぶち抜いたわけではなさそうなので、うまくいったようだ。
「入ってみましょうか」
そう言ってミリアが入ると、そこには思い描いた空間ができあがっていた。
庭付きの小屋に春の陽気である。想像したのが昼間の陽気であったので、あたりがとても明るい。
あとからルシフェルもやってきた。
「うむ、うまくいったようでなによりだ。ここなら人型になっても問題なさそうだな。」
そう言うと契約したときの姿になった。
そうして空間を見渡すと気に入ったようである。
ルシフェルにも一部屋準備していたので、小屋を案内することにした。
自分の研究用のスペースと、ルシフェルの部屋、そしてキッチンとリビングがついた簡単な作りである。
なお、外装のレンガの雰囲気とはうって変わって部屋の中は文明レベルをすすめた仕様になっている。
ミリアは自分の研究用の器具をアイテムストレージから出して設置してゆく。
それを見ていたルシフェルも自分の部屋をカスタムするようである。
ゴンに指示を出していろいろ作らせている。
(ああ、だからゴンのストレージに見たこともないものがあんなに大量にあったのか。。。)
今更なミリアであった。
そんなことを考えながらいろいろと設置していると、とりあえず欲しかったものを設置することはできたので追加で欲しいものをゴンに依頼しながら、考え事をする。
(これって他の人の空間とつなげれたりするのかなもしかして、、)
そう考えたミリアはルシフェルに相談することにした。
「ルシフェル、この空間って他の人の作った空間と繋ぐことはできる?」
「基本的には独立した空間であるが、つなげるのではないか?基本的にこうゆう空間は自分の逃げ場としても機能するので、他人の空間と繋ごうなどと考えたこともなかったぞ」
「なるほど。でもそれって入れる人を選べばいいし、まあこの空間くらいならいくらか守備用に装置を設置すれば一瞬でそんな相手消せるし大丈夫だとは思うのよね。」
「お主は時々とてつもなく怖いことをないごとでもないように言うので、見た目の年齢が混乱する。」
「その自覚はあるわ。」
その後いくつか確認をして空間から出ることにした。
空間に入れるのはルシフェルとあとはゴンということにしておいた。
そして新しく作った空間のことはラボと呼ぶことにした。
ゴンに関しては複数体作ってラボの中にも設置してみようと思っている。
経験を共有できるようにすれば一から教える必要もないし今までよりも効率的に物を作れるようになるだろうし、個体差がでてくるのも面白いかもしれない。
これはリンとして生きていた世界でも人工知能の個体差は悪魔の問題として長年研究者たちを悩ませていた。
同じ経験を共有している人工知能たちがなぜだか個体別に体験することによって個体差を獲得してゆくのだ。
人工知能の研究も時間ができたら考えようと思うミリアであった。
「ミリア、そういえば言い忘れていたが、基本的に新しい空間を作ったときには先にものを入れて確かめるのだ。失敗していたら、その空間に入った部分だけ消失するからな。まあ、お主が失敗するとは思っていなかったが。」
さらりと最後にルシフェルが空間魔法の最も重要な注意点をミリアに伝える。
「そんな大事なこともっと早く言ってよ!!!!!!!」
ミリアの叫びはラボの中に吸い込まれるのであった。
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翌日、ローズにできた糸を見せたらとても興奮して、その糸で今回の王都滞在中の衣装をすべて作ることになった。
またローズも同じ糸でドレスを作って王都のお披露目で着ていくというので、急遽そちらの分も準備することとなった。
そして、その後の研究でスライムの種類によって異なる色の糸を作ることができることがわかり、伯爵領の元気ありあまる子供達の冬のお小遣い稼ぎにスライムが大量に狩られることとなったのだ。
(あ、この素材なら白衣作ってもよさそう。)
そう考えてゴンに糸を使って3Dで編み上げて作れる装置を作ってもらったところ、ルシフェルも欲しいと言い出し、人型のとき用にも作ってあげたのであった。
その後3Dで編み上げて作った白衣を気に入ったルシフェルは勝手に自分の服もその装置で作るようになる。
そして春のお披露目までの準備で慌ただしく日々がすぎてゆくのであった。
ルシフェル「ゴン、これを作ってくれぬか。」
ミリア「ゴン、これ作ってー」
ゴン「あの、そろそろもう一台作ってくれません?一人やとお二人さんの欲しいもの作ってるとキューが溜まって」
「なら新しいゴンをつくりましょう」
「面白そうであるな、我が作るぞ。うむ、これでよし」
「新入り、どうや、接続できてるか?」
「初めまして、新入りです。名前はまだありません。名前をつけていただけますか。」
「ではキ○アと」
「だめです、どんなハント始める気ですか。」
「じゃあ、ヒ○カ」
「ゴン、お前もか」
「ではレオ○オとお呼びください」
「「よくわかってるな!新入り!」」
「お前らまとめてちょっとこい。」
結果新入りはミリアにカクと名前をつけられた。
「カク、しゃーないで、お嬢はんはその、名前つけるセンスが」
「うむ、時々センスが壊滅しているのだ。」
「「言っちゃった」」
「ルシフェル、我々は一度話し合った方がよさそうね。」
「ああ、そういえば用事があったのでこれで失礼する」
「「あ、にげた」」
「ルシフェルー!!!!!!!!」
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小説を読んでいただきありがとうございます!
新米作者ですが、続きが気になる、面白いなど
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豆腐メンタルなので、絹ごしのごとく優しくあつかっていただけると嬉しいです。
明日の更新モチベーションです。




