0019 ご令嬢、決断する
リヒトとローズの待つ執務室へやってきたミリア。
「失礼します。パパ、ママ、お待たせしました。」
「急に呼んですまないね。」
「一緒に焼き芋も今作ってきたので、一緒に食べましょう?」
そう言うと3人で一緒にソファに腰掛ける。
焼き芋を上品にスプーンで食べるローズを尻目に、ミリアはリヒトへ声をかける。
「それで、パパ、一体どうしたのですか?」
(ママが全然何も言わないのも怖い、怖すぎる。)
ローズがとてつもなく静かなのである。異様すぎるのだ。
いつも通り微笑んではいるように見えるが、、、
「ごほん、そう、『ノアール』のことなんだよ。国王陛下がノアールに一度あってみたいと言っているそうだ。」
「国王陛下が、ですか?」
好き勝手に今まで魔道具を作りまくっていたミリアであるが、ノアールの名を刻印するようになってからは、なにか巻き込まれるかもしれないなとは思っていた。それでも魔道具を作るのを止める気はなかったし、それが家族や伯爵領にとってよい結果になるのであればそれが一番だとも思っていた。しかしまさか国王陛下とは。
「今年の春の社交界でデビューするかどうかの話をしていたじゃないか。まあ、エルメリもルイくんもいるから、いずれにせよ今年の春に一度ミリアを王都に連れていくつもりではいたんだが、ミリアは今年デビューすることもできるし、来年に遅らせることもできる。そしてミリアはノアールを名乗ることもできるし、今までどおり辺境に住む特異な魔術師という存在にしておくこともできる。ただ、今回は国王陛下が直々にお会いになるそうだから、ミリアの将来のためにも、どうしたいのか、聞いておこうとおもったんだよ。」
「ミリアちゃん、これはね、馬鹿な大人たちが言い出したことだけれど、犯意がないかも見極めようとされていると言うことは隠さずに伝えておくわね。」
(なるほど。ママが静かに怒っていたのはこれでか)
「パパ、ママ、ありがとうございます。そしてわがままをいいますが、私は伯爵領ですごしたいのです。なので王様に会いたいとは思いません。けれど、社交界のデビューは面倒なので今年してしまいたいと思います。ルイにも会いたいです。これまで通り特異な魔術師が過ごしているということにして欲しいです。」
「ミリア、もちろんだとも。本当は聞く前に断りの連絡をしてしまおうかと思っていたんだけれどね、ミリアの将来のこともあるから、直接話をしておきたかったんだよ。安心していい。今回の謁見ははっきりと断っておくから。」
「ミリアちゃんは何も心配しなくていいのよ。それにミリアちゃんが変わらず伯爵領にいたいと思ってくれているみたいで、ママはとても嬉しいの。」
「もちろんです、ママ、パパ、大好きです。この領のことも大好きです。」
そう満面の笑顔で答えると、
「「ミリア(ちゃん)天使!!!!!」」
と言ってふたりからむぎゅううううっとハグをされてまたもや窒息しそうになっているのであった。
(う、、嬉しいが息が、、、)
なんとか半分意識を失いそうになっているところを後ろできいていたキースに助けられたミリアであった。
(私がこの世界で死ぬときはもしかするとハグによる窒息死なのだろうか)
そんなことを考えているミリアであった。
(しかし妙ね。なんで急にこのタイミングで謁見。軍事利用的にはまだ大した量は作っていないし、今年一気に軍事は進めようと思っていたからこそ、忙しくなる前に社交界デビューしておけば次に必須の社交は16歳の成人の儀以降だと思っていたのに。)
そんなことを悶々と考えていると、ローズが何か勘違いしたようで、
「ミリアちゃん、ごめんなさいね、、ミリアちゃんがもしかしたら王都がいいって言っちゃうかもしれないって思うととても悲しくて、、ぐすん。」
「ママ、私は伯爵領が大好きなのでずっとここにいますよ。」
「きゃ〜ミリアちゃん。ほんとに大好きよ」
と言ってまた抱きつかれたのであった。さっき窒息しそうになったところなので、今度は先ほどよりも優しく抱きしめてくれる。
(ママは今日もいい匂いだ、、、やわらかい、、、)
そんなことを考えながらけしからんお胸様にむぎゅっとされたミリアは王都のことなんてひとまず忘れてしまうことにした。
「春までにとびっきり可愛いドレスを準備しましょうね。ミリアちゃん可愛すぎ」
「ミリアは何を着ても似合うだろうなーああ、その瞬間を絵に納めないと。うん、こうなったら絵師にも連絡しておかないと!」
「それはいい案ですわね!!!!」
と言ってドレスと絵師について盛り上がり始める両親であった。
(絵もいいけれど、写真とかカメラもそろそろつくっちゃいますか。そろそろ地図とか図鑑とかもまとめたかッタシ、いい機会かもしれないわね。でもパパとママにはどのタイミングで渡そうか、、、あ、二人の結婚記念もたしか春のハズ。そのときでいいかもしれない。そうと決まれば、まずはゴンにデータを)
自分のドレスや絵で盛り上がっている両親のそばでそんな両親の結婚記念日に新しい魔道具を送ることを決めたミリアであった。
本当に仲のいい家族なのであった。
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なによりも凶器なのはローズのハグじゃないかとこの頃思う作者です。
ちなみにミリアは誰かくだらない諍いに巻き込まれるのは嫌いなので、やられたらやり返す派です。
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小説を読んでいただきありがとうございます!
新米作者ですが、続きが気になる、面白いなど
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豆腐メンタルなので、絹ごしのごとく優しくあつかっていただけると嬉しいです。
いいことはモチベーションに繋がる単純な作者です。




