0018 ご令嬢、ゴロゴロする
ちょっと説明多めです。
雪の降り積るフェルデンツ伯爵領は今日も賑やかである。
年を超え、冬も深くしんしんと積もるので、ミリアはベッドでゴロゴロとしている。引きこもり生活3日目だ。
この世界では赤と白の服を着たおじいさんがコカ・○ーラを飲んでいるわけでもなく、年末に特別なイベントはなかったが、変わりに年の明けた3日から創造神らのお祭りが始まるのだ。
1日は創造神らがやってきた日。
2日はこの世界が作られた日。
3日は魔物が生まれた日。
4日は人や動物や植物や生き物の生まれた日。
と言った具合に15日まで続くのである。長い。
貴族たちは社交の時期であるので、この時期はいつも以上に派手なパーティーをしていると王都にいるルイから連絡がきた。
それ以外の地域ではどうかと言えば雪の積もるここ辺境伯では、3日には伯爵家からも参加して魔物狩りが行われ、そのあとは外で焚き火が行われる。4日は複数チームに別れての雪合戦が街全体から人を集めて行われる。
雪合戦には魔物狩りで得た素材などが景品になるそうだ。
それ以降は屋台が並んだり、人々が周囲に新年の挨拶を行ったり、家族とすごしたりするらしい。
そんな人々のにわかに活気付く年初も終わり、月も中旬。
ミリアはベッドでゴロゴロとしているのである。そもそもミリアには魔物狩りも雪合戦も参加できるものではなく、どうしても引きこもりがちになってしまう。その後の数日は家族と一緒に団欒の時間を過ごしたが、またみんな日常に戻ってきているのである。
「ミリア、お主またベッドでだらだらしているのか。そろそろ出てきたらどうだ。」
声をかけてきたのはルシフェルである。契約した日から一度もあちら側には帰らず、ちゃっかり飼い猫みたいな扱いで過ごしているのである。そう、猫の姿をしているのだ。
契約をした翌朝ミリアの目が覚めるとすでにルシフェルはシルバーブロンドの毛並みのふさふさした猫の姿になっていた。びっくりして声をかけると、どうも姿というのはなんでもいいらしく、猫の姿でいると、自由にいろいろなところに出入りできて利点が多いと言っていた。翌日にはすでに家族にルシフェルのことを紹介しているが、契約したときには人型であることは言っていない。
夜中に契約をしたことについては少し怒られたが、屋敷の敷地内であったため、リヒトは気づいていたそうだ。悪意のあるわけでもなさそうだと判断し、そのままミリアの成り行きに任せることにしていたらしい。魔導士とは結果的に孤独なのである。
というわけでルシフェルは、猫の使い魔として家族や屋敷の者たちに認識されている。
ちなみに、ローズはグリフォン、リヒトはアウレムバードと呼ばれる長距離を移動できる鳥を、オリバーはダイアウルフをそして、ウィルはヒポグリフと契約している。契約はミリアの行ったように魔法陣で呼び出すこともできるし、捕まえてその場で契約することもできる。
あくまで契約であるから、基本的には契約内容に基づいて行動をしている。
呼び出してもきてくれないこともあるとか。そんな中で猫の姿とはいえ、ずっとミリアたちと過ごしているルシフェルはそれだけで特殊なのであった。
あくびを噛み殺しながら、ミリアは答える。
「ふわああああ。うーん、だってベッドの中がすごく心地よくて。。」
「我は新しいおやつを所望するぞ。」
ルシフェルは大の甘党なのである。
「お嬢はん、たまには外に散歩にでも行ったらどないです。今日は天気もいいですし、外もそこまで寒くないでしょ。まあ、この間作った魔道具のおかげでそもそも寒いことはないでしょうし。」
ルシフェルとゴンはいつの間にか仲良くなっており、大抵2対1で最近はミリアがいい負ける。
ゴンの言っていた通り、ミリアはあまりの外の寒さに外にでていても温度調節のできるコートに付けれる魔道具を開発したのだ。なのであまり寒いことは実は問題ではないのである。
「むう、二人ともひどい。しかたないなあ。さすがにそろそろ散歩にでも行きますか。」
そう言って起き上がると、ミリアとルシフェルはキッチンへ向かう。
「やあミリア様。3日ぶりですね。」
キッチンへいくとシルヴィに声をかけられた。
ミリアは引きこもるときは徹底的に引きこもるのである。
「こんにちはシルヴィ。そんなこと言うなら新しいレシピはやめてしまおうかしら。」
「それはダメだ。我が困る。」
「今日は新しいレシピもいいですが、焼き芋にしようと思っていましたよ?」
秋の収穫のころから焼き芋はこの屋敷でブームなのである。
これでは完全にミリアの分が悪い。
「むう、今日はシルヴィまで意地悪です。しかたないです。焼き芋の誘惑には勝てないので、おとなしく手伝います。」
「そうこなくちゃ。では今日も庭でおねがいしますね。」
収穫の頃、ミリアは土魔法でセラミックの底の深い二層の窯を庭に作ったのだ。そのなかで焼いた焼き芋があまりにも美味しかったので、屋敷のものたちに好評なのである。
そして柔らかくなった焼き芋を加工してスイートポテトにしてもらうのも美味しいのである。どちらも捨てがたい。
準備が終わったので、シルヴィが持ってきた芋を入れて加熱してあとは待つだけだ。
その間に風魔法の練習をしながら屋敷の敷地を散歩する。風魔法を使って雪かきをするのである。
いつの間にかルシフェルはどこか気の赴くままに行ってしまったようだ。
(ルシフェルって猫らしい猫だな。それとも変身している動物の習性の影響をうけるのかしら。)
くだらないことを考えながら屋敷を雪かきして回って一周して戻ってみると、ちょうどいい具合に焼き芋のいい匂いがする。
「お嬢様、ちょうどいいところにお戻りになられました。リヒト様とローズ様がお呼びです。」
そう言ってシルヴィを手伝っていたキースに声をかけられた。
「あら、そうなの?では焼き芋ができたら一緒に持っていくわ。お茶の用意をよろしくねキース。」
「かしこまりました。」
そうしてミリアは焼き芋を持ったキースと一緒にリヒトとローズの待つ執務室へ向かうのであった。
「ミリア、何か面白い遊びはないのか。」
「うーん、にらめっこは?」(研究しているので生返事)
仕方なくミリアがルシフェルににらめっこを説明する。
「よし、ゴン、にらめっこをするぞ」
「ええでっせ。ルシフェルの兄さんやからって手加減しませんよ。」
「「せーの、あっぷっぷ」」
(互いに見つめ合う)
数分後
「ぷはあ、ルシフェルの兄さんその顔は反則やわ」
「くくく、我の勝ちであるな。なかなかにゴンも手強かったぞ。」
(え、ルシフェルが勝った?!!!)
大層驚いたミリアなのであった。
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作者もルシフェルの変顔がぜひとも見たいです。
3Dプリンターに勝てる変顔。どんな顔なんだ。
小説を読んでいただきありがとうございます!
新米作者ですが、続きが気になる、面白いなど
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豆腐メンタルなので、絹ごしのごとく優しくあつかっていただけると嬉しいです。
いいことはモチベーションに繋がる単純な作者です。




