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1.出会い

初投稿なのでお手柔らかにお願いします。

あ、私死ぬんだな。私、高田清華の人生はもうすぐ終わりそうです。今更になっていろんな後悔に気づくけどもう遅い。いけない、走馬灯が見え始めてきた。そろそろ終わるのだろう。

新規事業を始めるから連帯保証人になって、と親友だと思っていた人に頼まれたのは、まだたった一年前のこと。まさか一年後に私が三千万の借金を背負って逃亡中だなんて誰が予想できただろうか?

なんとか借金取りから逃げて来たのはいいのだけれど、ここがどこなのかわからない。ほんとに東京二十三区内か? と疑うような光のない路地裏で身動きもできずに死んでいくんだ、私は。

「······ですか」

突然頭の上で声が聞こえた気がした。はぁ、幻覚まで聞こえてきたのか。いや、もしかしたら借金取りが追いかけてきたのかもしれない。どちらにしても私にいいことはない。

「······大丈夫ですか?」

うるさいなぁ。最期ぐらい静かに逝かせてよ。

「息はしてるけど······。困ったなぁ。こういう時どうすればいいんだろ?」

久しぶりに聞いた暖かみのある口調に一瞬意識が飛びそうになった。最後の力を振り絞って返事をする。

「うぅ······」

「あっ、やっと気づいた。おーい、大丈夫ですかー」

「はい···、大丈夫···です···」

不思議だ。あれだけしゃべれないと思っていたのに、人を前にすると自然と声を出すことができた。

「よかった。では、突然なのですが、これから私の言うことをよく聞いてくださいますか?私は悪魔です。あなたの魂をあなたが死んだあといただく代わりに、あなたの願い事を三つ聞いて差し上げます。······見た所かなり切羽詰まった状況のようなので、まず契約なさるかお決めいただいてよろしいですか?」

······またよくわからないやつが来た。契約はもううんざりなんだけどな······。でも、願いを叶えてくれると言うなら、もうこの際何でもいい。藁にもすがる思いで契約してみよう。

「まず最初の願いは何になさいますか?」

それはもちろん、「三千万円、お願いします······」

悪魔と名乗るその男は満面の笑みを浮かべてこう言った。

「かしこまりました」



次の日、私の部屋には昨日の悪魔がいた。持っていた家具は売れるだけ売って借金に当ててしまったので、殺風景きわまりない部屋である。まさかお客さん第一号が悪魔になろうとは。

「·······以上が契約内容になりますが何かご質問はございますか、高田様?」

「契約はいいんだけど、昨日頼んだお金はほんとに返済してくれたんでしょうね」

悪魔が契約内容を言い終わるが早いか、私は一番気になっていたことを聞いた。正直契約よりも気になっていたけど、まずは契約の話からと押しきられてしまっていたので渋々聞いていたのだ。

「ええ、もちろん。ちゃんと全額返済に当てさせていただきましたよ」

ということはこれで晴れて私は自由の身と言うことだ。

「ところで悪魔さん、悪魔さんはどうして私のところに来たの?」

「本来なら悪魔召喚の儀式を行った人間のところに参上するのですが、最近は不況でして···。まったく最近の人間はこういった話を信じなさすぎる······。とにかく、儀式を行う人間が少なくなって来ておりますゆえ、我々悪魔は人間の姿になって魂を頂戴できそうな、切羽詰まった人間と直接契約を行うことになったのです」

つまり私はそれほど切羽詰まっているように見えたと言うわけか。どうりでなかなか顔が整った悪魔であるわけだ。悪魔と言えば黒か紫の顔に角が生えているのを想像していたが、確かにそんな姿で人間界をうろついていたら誰もよってこないどころか避けられてしまうだろう。

「すぐに二つ目の願いをお聞きしましょうか?」

ひとつだけ心残りがあるとすれば願いのひとつを三千万円にしてしまったことだ。もっと大きな額を言っておけばこれからも困らなかっただろうに。とにかく残り二つの願いは慎重に考えなくてはならない。

とりあえず願い事のルールは大きく分けて二つ。

ひとつは無限はだめであるということ。永遠にお金が出てくる財布とか、不老不死になるとか、とにかく無限に続くことはダメらしい。かといって数字を言えばどれだけでもいいと言うわけでもなく、そこは悪魔それぞれの裁量によるそうだ。悪魔の決まりも以外と適当である。

そしてもうひとつは、自分自身の願い事であるということ。他人の願いを叶えてあげたり、悪魔の願いを叶えたりすることもダメらしい。

この二つのルールを破った場合、やぶった悪魔が消滅するそうだ。まあ私には関係ないけど。

「ねえ悪魔さん、願い事には期限があるんだっけ?」

「ええ、先ほどもお話しさせていただいた通り、契約から100日間が願いを叶えることが出来る期間でございます」

うーん100日もあるんだったらまだもうちょっと考えた方がいい気がする。

「ごめんなさい。もうちょっと考えさせて」

「かしこまりました」

次の願い、何がいいだろうか。何でもいいと言われたら逆に難しいものだ。やりたいことはいっぱいあったはずなのに、普段贅沢をしたことがないから何をすればいいのかわからなくなる。

お金にしようか、でも二つも願いをお金に使うのはもったいない。じゃあ寿命?いや、別に長生きしたい訳でもない。まぁそれについてはこれからゆっくり考えることにしよう。それにしても、

「あなたいつまでここにいる気なの?」

話が終わったはずの悪魔がなかなか立ち上がらないので、ちょっと失礼かと思いつつも聞いてみた。

「? 私ですか? 私は三つ願いを叶えるまであなたから離れることはできませんよ。いつでも願いを叶えられる状態でいないといけないので」

「え、うそ」

まさかこのまま同居ってこと? 冗談じゃない。初対面の男の人といっしょにすむなんて。家にあげるだけでも相当考えたのに。それならいっそ願いを二つ、すぐ叶えてもらおうか? でもそれはもったいないし······。そんなことを考えているうちに悪魔は家の中を見回し始め、しまいには立ち上がって色々なところを見回りだした。

わかったわよ! 一緒に住めばいいんでしょ!

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