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君はjunkie   作者: ケシゴム
第六章
26/48

ドラマティック!

「それで、霧崎君はどんな夢を持ってるの?」


 対局が終了し夢縫部についての説明を終えると、理香が訊いた。


「あぁ、実はそれなんだが……俺には夢は無い……」

「えっ?」

「えっ!?」


 天才ゆえに分かってるでしょ的に話を省き喋る理香と、とにかく何でも良いから話をしたい舞ちゃんに挟まれた霧崎君は相当草臥れたのか、最初に感じた煌びやかさは影を潜め元気が無かった。そのためこの言葉にはもう関わりたくないという意味を含んでいるのだとすぐに分かった。しかしそれに気付いていない理香と舞ちゃんは、驚きの表情を見せる。


「えっ! 霧崎君夢無いの!? じゃあなんで夢縫部に来たの!? えっ!?」


 理香にとっては当然理解出来ない言葉に、この人大丈夫? という顔で霧崎君を見る。


「うう嘘でしょ霧崎君!? なんか私達気に障るような事した!?」


 勘の良い舞ちゃんは何かを察したのか、慌てて引き止めるかのように訊く。それでも動揺し過ぎ。

 これに対し霧崎君はきちんと対応するのだが、含みを持たせていた言葉は俺の読みとは全く違った。


「そういう意味じゃない。正しくは今は無いだ」

「今は無い? どういう事霧崎君?」

「俺は少し前までプロ野球選手になるのが夢だったんだ。だけど……」

「ええっ!? それ凄い夢だね! えっ? 何? 甲子園とか目指してるの?」

「あ……いや……だから……」


 単語でしか人の話を聞かないのか、理香は“少し前まで”という言葉を無視して、この人は凄いみたいな勢いで喋る。当然ここから本題に入るはずだった霧崎君は、え? この人、人の話聞いてる? 的な表情になり言葉を詰まらせる。


「え? もしかしてピッチャーとか? じゃあ百五十キロとか投げれるの?」

「い、いや……それは……ま、先ずは……」

「あっ! もしかして二刀流? あの、なんだったっけ? あれ、メジャーリーグ行った凄い人?」

「お、大谷翔平選手だ」

「そうそれ! あの人みたいになりたいの?」

「い、いやだから……」


 理香全く相手の話を聞かず一人で盛り上がる。うちの部長コミュニケーションに難あり。


 この霧崎君のピンチには、さすがに舞ちゃんが動く。


「理香。一回霧崎君の話ちゃんと聞こう? 霧崎君少し前までって言ったんだよ?」

「え? そうだっけ?」

「…………」

「アハハハハハ……ごめん……」


 理香―! 舞ちゃんも霧崎君もドン引きだよ! 記憶力は凄いんだからちゃんと話聞こう?


 ある意味天才、故に変人。理香の落ち着きの無さには目を見張るものがあった。


「それで霧崎君? なんでプロ野球選手の夢諦めたの?」

「あぁ。実は……」


 舞ちゃんに選手交代した事で、霧崎君の目に光が戻った。そして舞ちゃんは理香がまた変に口を出してこないようチラリと視線を飛ばしけん制する。やはり理香と舞ちゃんだけなら上手くいかないようだ。


「俺は去年肩を壊した。しばらくすればまた元通り治ると思っていたが、医者にこれ以上続けてもいずれ投げられなくなると言われた。それで夢を諦めた」

「えっ!?」


 良くある話なのかは知らないが、テレビで聞くような話とそれに驚く舞ちゃんは、まるでドラマのワンシーンの様だった。そこに理香が加わる事でさらにドラマチックな展開になる。


「じゃあなんで夢縫部に来たの? ここは夢を諦めた人を慰めるような部じゃないわよ?」


 霧崎君の言葉の中に気に障るような事でもあったのか、理香は不機嫌そうに言う。


「それは分かっている。でもプロ野球選手の夢は諦めても、何かを成し遂げたいという想いは残っている。だからここへ来た」


 イケメン霧崎君が言うととても絵になった。それはボーっとしている天満がチラリと視界に入ると、理香と舞ちゃんと相まってそれこそドラマじゃないかと思うほどだった。

 

「ふぅ~ん。でもそれなら野球に関わる職業でも目指せばいいんじゃないの?」


 理香のいう事は尤もだった。もし本当に野球が好きであれば、例えプレイヤーになれなくとも少しでも野球に関わる仕事を目指すはずだ。その選択肢が無い霧崎君には、俺も本気だったのかと疑問に思った。


「それじゃ駄目だ。俺が欲しかったのはあの場所で投げてあの場所で打つ事だけだ! そのために練習してきた。それを諦めても野球に関わろうと思えば、俺は今までの自分の全てを否定しなければならない!」


 何言ってんのか良く分からないが、熱く語る霧崎君と、なんかカッコいいみたいに視線を飛ばす舞ちゃん、そして真剣に受け止めているような理香と、全く入っていけず通行人Aのような天満が醸し出す雰囲気が、筋が通っているような気にさせた。


「分かったわ。それだけの覚悟があるのなら試してあげる」


 何を分かったのかは知らないが、そう言うと理香は卓に向かい東、南、西、北の四枚の牌を裏返し混ぜた。


「ここから東を引いて。私には霧崎君の言っている事は良く分かんないから、霧崎君が夢縫部に相応しいか天に聞いてみましょう?」


 理香―! お前結局何言ってんのか分かってなかったの!? 


 さすが理香。これだけドラマチックな状況でも外さない。


「だけどもし東を引けなかったら夢縫部は諦めてもらうわ。それでいい?」


 何故理香がそこまでして霧崎君を拒否するのか全く分からなかった。確かに夢を持たずただ何かを求めて夢縫部に入りたいという霧崎君を拒否するのは、部の方針と合わないからだと判断出来るのは分かる。だがそれを言ったら俺は霧崎君以上に論外になる。


「…………」


 突然の理香のギャンブルには霧崎君も口を閉ざした。すると重々しい空気が部室を包み、霧崎君を入部させたいであろう舞ちゃんまでもが成り行きを見守り始めた。


「どうする?」

 

 卓上と理香に何度も目線を移す霧崎君を追い詰めるように理香は訊く。それはまるで命懸けのギャンブル漫画のようで、理香が何を意図しているのかは読めなかった。


「俺はギャンブルはしない。運否天賦で何かが変わるなら、俺は初めからここへなど来てはいない」


 主人公が降臨した。理香が何のためにこんな事をしたのかは分からないが、霧崎君を追い込み、下ろすために作り上げた舞台でのこのセリフは強烈なインパクトを与えた。


 希望を取り戻したかのような表情を見せる舞ちゃんと、敵として毅然とした態度で佇む理香。そしてもう通行人ですらなく勝手に見切れる天満。全てが霧崎君の為に用意されたステージの様だった。


「…………」

「…………」


 睨み合う両者。羨望の眼差しを送る舞ちゃん。ボーっと突っ立ってる天満。一体この先どうなるのかやけに気になる展開だった。その沈黙を理香が破る。


「分かった。じゃあこうしましょう? 将棋で勝負よ!」


 何でだよ!


「良いだろう」


 良いのかよ!?


 何がどうなって将棋に辿り着いたのか是非二人に聞きたい状況だが、こうして霧崎君の入部を賭けた戦いは将棋盤の上に舞台を移した。


 天満との〇✕ゲームまで読み返し、意外と文章はまともに書けていると思いました。そこで担当気分で自分でここまでを評価してみました。


「しっかりした文章でキャラクターも力があり良く出来ている。そこに真剣に生きるキャラクターたちが醸し出すユーモラスな展開はなかなか面白い。最初は分かり辛かった夢というテーマもしっかりストーリーに反映され良いと思う。しかしジャンルが恋愛なのに麻雀やトランプに喰われ、恋愛要素がおっぱいくらいしかない。そしてこの作品の売りは一体何なのか全く分からない。これではとても仕事とは言えない。君はプロを目指しているんだろ? ならきちんと読者層やターゲットの顔を見ながら作らないと小学生の作文と変らないよ? これは自己満足の為の作文かい? それにプロットが無いってどういう事? 君は何千万もする家を買おうと思った時、『わが社は感覚で作りますから任せて下さい』って会社に頼むのかい? ねぇちゃんとやって? そんないい加減な仕事する奴はうちには要らないよ? 分かったら次から気を付けるように」


 くそが!


 

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