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オレ達問題児ですか?なんで誰もやんねーんだ?

ようやくタイムアタック開始。

 最初の一組目、アシャとピートを地下一階へ誘導するようにシド用務員が入っていった。


「用務員も入ってったぞ」


「おそらく、中でタイムを計るのだろう。加えて、緊急時の脱出方法も教えてくれる可能性もある」


「あー、成る程。実際に帰る時間と計測タイムは変わってくんのか。タイムで天組の能力把握は無理だろーな」



 カオスとヴィンによる状況把握。別段内緒にする程でもない予測である。


「のんびりしているところ悪いが、地組は誰が相方として行くんだ?君が行くとうちの代表は睨んでいるが」


「後攻の利点、タイムを見てから考える。とは言うものの、オレが行くことになるだろうね。ピートを相方にした理由もそこだろう」


 地組のパッと見の戦力、或いはジョブを意識した戦力的にはヴィンが最強だし、


「そうですね。こちらも奇策を用いらざるをえない相方にしましたから」



 この人達は何故作戦を話すのだろうかと、妙なところで同じ考えになるヴィンとロートだった。


 そう問われたらお喋りな2人は答える。このくらいわかってくれないと楽しくないからだと。


「何分くらいだと思います?」


「基準は15分。ピート1人だと10分切るくらいだろうから、アシャが何処までついて行けるかが鍵だな」


「錬金術師は戦闘要員ではないので仕方がありませんね」


「だとよ。ケイはどー思う?」


 ヴィンが我関せずだったケイに話をふる。


「魔法が使いたいなら魔法の武器を作ればいいし、白兵で戦いたいなら白兵用の武器を作ればいいし、武器や道具で補うのが錬金術師だよ。本人の戦闘力なんて関係なくないかな?」


 てめーの命中精度はアカンだろ。


「逆にいえば、錬金術師が作った武器を、得意とする本職に持たせれば更に強化されるわけだ」


 つまり戦場に錬金術師はいらない。後ろで武具を作ってさえすればいい。そしてその能力の高さでカオスからの評価は高いし、ヴィンも同等に高い。それを聞いててカテリアもケイの資質の高さを推測する。


「戦闘タイプの錬金術師は、砂を操ってサポートしたり、武具を瞬間的に劣化させたりしますが、ケイさんは可能なのですか?」


「無理だね。あれこそ才能のある人の技。自分は素材採取のために冒険者学校にきたようなもんだし、そういった技能は求めてないよ」


 素直にばらす。その割りには、カオスからの信頼がかなり厚い気がした。カテリアは尚更警戒する。


 その後も雑談は続き、おおよそ30分後地下一階入り口とは別の、ダンジョン入り口からシド用務員が入ってきた。


「記録は13分18秒」


 シド用務員からのタイムの通知。かなりの好タイムだ。この時点で作戦を練る側は頭を切り替える。ヴィンは奇策でないと勝てないと判断し、カオスの眼を見る。


 ケイは箱をとリーンはメモを渡す。


「さあ、ゲームスタートだ!」


 カオスとヴィン、それに続くようにシド用務員が地下一階へと進む。


 石張りの迷宮、高さは4メートル以上、道幅は8メートル程度。3人横に並ぶと戦うには武器や戦術を選ぶくらいに狭いが、大概の武器は上方向に大きく振りかぶっても問題ない。明かりは5メートル毎にランタンが置かれてあり、問題ない。


「開始の音頭はどうしますか」


「此方でとる。1分待つから、その間に作戦を再度練り直せ」


 2人とも地面を触って確信する。いけるな、いけるぞ。アイコンタクトだけで作戦は成立。


「スタート!」

「塹壕作成」


 開始の合図と共に戦争屋の【陣地構築】スキルが発動する。ダンジョンの地面は抉れ、正面に防壁ができる。この間5秒。


「移動するのにこんなものを作ってどうする?」


「こうするんですよ」


 抉れた地面で更に【遊び】スキル【悪戯:落とし穴】が発動する。そしてカオスはわざとはまり、開いている穴にヴィンも入る。計おおよそ10秒。


「地下2階に降りましたよ!」


 階段がなければ階段を作ればいい、階段が作れなければ階段の代わりを作ればいい。


 シド用務員も落とし穴に入り、型破りな2名に合流する。


「だいたい10秒ですかね?」


 それがカオスの体感時間だった。


「…………これが認められると?」


「むしろ何故認められないのですか?ルールには規定されていないですよ。規定されていても貴方が説明しなかったのなら貴方の落ち度です」


 これで終わってくれるなら、カオスの出番はない。


「説明したのに聞いてなかった可能性は?」


 カオスは箱を取り出し、ハンドルを回す。ヴィンは邪魔にならないように脇に退ける。


『ではルールの説明という名のおさらい、の前に自己紹介をするぞ』


 聞こえてきたのはシド・シドド用務員の声。


『私の名前はシド・シシドだ。教師でなく用務員をやっている』


 それはルールのやり取り。


『さて、今回のレクリエーションだが、2人1組で地下1階から2階へのタイムを計る。遅い方が2階な到達したタイムだ。


 それと本来、タイムは優秀な者しか好評しないが、特別に第一、中間、最終組のタイムも教えよう』


「なるほど、録音機か」


 シド用務員は笑った。


『それと公平を期するために情報交換は行わないものとする。これは今回限りの特別ルールだ。故に終了した者は違う場所で待機してもらう』


 酷いペテンだ。後ろで成り行きを見守っているヴィンは思った。


『付け加えだ。ダンジョン内で戦闘不能となった場合、或いは30分経過で失格扱いだ。合計タイムでないから勝負には関係ないな』


 録音機はまだ完成していない。


『それと制服の機能だが、発信器がついていて、ダンジョン内の居場所は把握されている。そしてダンジョンに制服を脱いで入るのは禁止。鎧を着るなら制服の上から着ろ。もっとも、幾重にも魔法防護を仕込んだ特注だから、そんじょそこらの鎧より丈夫だがな。これらは今後のダンジョンに入るさいの規則でもある』


 これはカオスの声帯模写+腹話術。


『他に質問はあるか?』


『確認します』


 カオスの声。無論、口は動いていない。


『要約すると他の細かい事は置いといて、地下一階から二階に2人が到達したタイム、だけでいいんですよね?』


『身も蓋もないが、そうだな』


「言って無いですね」

『じゃあどちらから始めるんだ?』


 最後のやり取りとカオスのセリフが被った。二重会話。流石にカオスが1人で喋っているとは思うまい。



「今月中に完成させた録音機を持ってきなさい。それで許そう」


 あら?バレてる?笑顔で冷や汗を垂らすカオスだった。


「何か失敗しました?」


「自動翻訳の魔法があるだろ。録音機を通すと魔法の対象にならない。だから、お前らに言っているかどうかの判断はつかない。ちなみに、どんな言語を使っているかわかるか?」


 お手上げだった。


「これは知っている者が相当少ないからな。仕方がない。それでも校長からは上手く言い返したら認めてよいと言われている。合格だ。記録、9秒8、新記録だ」


 10秒を切るという圧倒的な新記録。


「「よし!」」


 勝利のハイタッチ。これで地組の敗北は消えた。




 地組の一番手がダンジョンに進入しておおよそ30分後、


「記録は9秒8」

「「「よし!」」」


 入り口から入ってきたシド用務員の一言に地組はガッツポーズで、天組は固まりつくことで応えた。


「じゃあ、予定通りにいきましょう!」


 リーンの一言に地組は頷くことで答える。


「ロートさん、おそらく中間か最終組、どちらかの勝負で1分以下がきます」


 真っ先に正気に戻ったカテリアが次の予測をする。



「考えすぎ、とは言い切れないな。根拠はなんだ?」


「タイムが速すぎます。明らかに裏技、ルールの隙間を突いたものでないと考えられません。そして、他の人にも突けるなら…………」


 自分たちにも突けない理由はない。


「わざわざ次も突かない理由はない、か。それだとカオスが先陣を切った理由がわからないが」


 しかしロートの考えはカテリアと違った。どちらが正しいというものではないが、どちらの視野が狭いかははっきりした。


 一発逆転のチャンスを逃して真綿で首を絞められるように敗北するタイプ、それがカオスが評したロートの性格である。


「多分、シド用務員を説得するためでしょう。説得できなければ奇策が無駄になります。でなければ30分近く待つ理由がありません」



 実際の理由は若干異なるが、奇策と言いくるめについては間違いではない。


「では次の勝負はカテリアさんにお願いします」



 それがリーンの指定だった。


「それはカオスさんの指示ですか?」


 カテリアは指定の意味を考える。カオスの意見とそれ以外の考えでは意味が異なる。


「そうですよ。頑張って当てて下さいね」


 この時、地組に裏技を使える人間は残り1人。その人物を指定してかつ裏技より早いタイムを出すのが天組勝利の必須条件になる。


 そのくらい当てろ、これはカオスのメッセージだ。カテリアは深く考える。


独り言


翻訳魔法は意思に対して訳しているという設定。なので手書きの汚いメモやオリジナル言語は解読できても、印刷物は読めない。

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