オレ達問題児ですか?仲いーのかお前ら。
「それでは、作戦会議を始めます」
前代未聞の入学式が終わると、天組のカテリアはクラスメートを集めた。
「なんの会議ですか?地組の絞めかたですか?」
クラスのナンバー2、グリセルダ王国の王子ロート・クレモア・グリセルダ、赤い炎のような色の整った短髪の少年が笑顔で恐ろしい事を宣った。
「少し違いますね。天組と地組は切磋琢磨する間柄です。争う相手ではないのですよ」
「一方的に蹂躙する相手だと思いますが」
カテリアはロートの評価を下げた。敵を過小評価して身を滅ぼすタイプだと。
「先程も言いましたが、カオスさんは真面目です」
まずそこにクラスメートとの認識の違いがある。
「最善を掴むためあらゆる鍛練や準備を怠らず、その上で遊び人として予想の外から行動……奇襲や奇策を用います。真面目に出鱈目な最良の手段を選んでくる、敵に回すと1番厄介なタイプです」
あれだけのやり取りでヴィンよりカオスを把握していた。
「闘技場のような場所で正々堂々一対一で戦えば私でもロートさんでも勝てるでしょうけど、カオスさん百人の軍勢と私百人の軍勢で戦争をすれば、勝てないでしょうね」
先生親クラスメートを含めて、カオスを1番買っているのは彼女だろう。
「しかし、実際には私1人含む天組の30人、カオスさん1人含む地組の30人。天秤がどちらに傾くかはわかりません」
「それでも相手は地組ですよ」
ため息をついて解説する。
「一頭の獅子に率いられた九十九頭の羊の群れは、一匹の羊に率いられた九十九匹の獅子の群れより強いのですよ」
ここで負けて挫折をするのも青春だが、それは彼女の流儀ではない。クラスと個人で勝ってロート個人が負けるのがベストだが、無理だなと考える。ならばクラスの勝利を考えよう。
最初の行事は学校の地下ダンジョンの地下1階から地下2階までのタイムトライアル。二人一組でタイムを競う。限りなく個人戦に近いので、采配を振るう機会は少ない。せいぜい編成か。
通常は20分程度、早ければ10分。時々10分を切る化け物がいる。
となると、勝負は最速、平均、最低、リーダーの4項目、或いは複合でくる。
しかし相手はカオスである。相手の想定の斜め上を平気でついてくる。問題は具体的な斜め上がわからず、何人に斜め上を突かせるかだ。
そこまで考えて本格的な作戦に入る。
「では、相手のスパイに気づかれないように、結界を張りましょう」
教えられるのはここまで、ここからはお互いに出たとこ勝負。カオス自体はそれを臨んでも、地組のメンバー全員がそうとは限らない。
「作戦会議をするぞー!」
カオスもカオスで会議をする。
「喧嘩吹っ掛けてくる天組からの守り方か?んなもん1人でやれや!」
何時の間にかクラスの参謀役に収まったヴィンはキレ気味である。
「それは大丈夫、攻めてこない。なんたって真面目なカテリアさんが切磋琢磨しようと言ったのだからな」
何でそんなに信用できるの?多くの級友はそう思った。
「だから考えるのは、最初の行事さ」
OBの方々から頂いた資料をヴィンは思い出す。
「ダンジョン走破訓練だったな」
「そうだ。つまり、向こうも作戦会議を開いている。それも油断をしないだろうね」
ヴィンはリーンに目配せをした。情報収集のためリーンは使い魔を飛ばす。カテリアが想定した通りに。
「防諜は大丈夫か?」
「カテリアはやらないが他の生徒はわからないからな」
その無駄に高い信頼はなんなのだろうか?
「此方からスパイはすんのか?」
既に飛ばしていながらしれっと質問する。
「学校では無しだ。相手が何をするか想像して、それがはまれば楽しいし、超えられても楽しいじゃないか」
天組は勝ちたい相手であるが、どうしても勝たなければならない敵ではない。
「けどこんな会話いーのか?まだ防諜の対策はしてねーんだろ?」
「聞かれても問題ないさ、向こうも最初は同じ会議をしているだろうし、ここまでは予測されてるだろうしな。リーン、ここから情報が漏れないように結界を張ってくれ。向こうも結界を張る頃だろう」
バレてーら。ヴィンはそう思ったが、それ以上に天組の、というよりカテリアの行動を予測するカオスに戦慄する。
「張りました!」
リーンの報告。つまり、ここからが悪巧みの本番。
「それで勝てんのか?相手は油断してくれねーぞ」
「だろうね。けど今回突くのは油断じゃないよ」
そして驚愕の作戦。
「俺はできる。ケイはどーだ?」
「時間はかかるけど、多分1分きれる」
独り言
カテリア=カオス-意外性+戦闘能力
2人の相性は良い。恋愛には発展しなさそうだけど。
リーダーの役割は方向性を決めること。あまりにブッ飛んだ方向性は参謀の作戦立案をなくす。