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オレ達問題児ですか?前代未聞だろーが。

ようやく女性登場。

 入学式の朝、式が始まるまでの間、ピカピカの制服姿な冒険者の卵達は各々のクラスに集合していた。そしてこれは後に功罪多くの意味で有名となる1年地組に彼等はいた。


「俺の名はカオス・スティングマン!」


 教壇の上で拳を振り上げたポーズをとりながら、後のクラス30人のリーダーは提案する。


「レギオン組もーぜ!」


「「「は?」」」


 ほとんどの者は目が点になる。レギオンとは、複数のパーティーが組む事で、パーティーすら組んでいない現状ではまだまだ先の話である。


 なお、パーティーは最小の編成単位で、通常5人程度である。通常はパーティーを組んでから、仲の良い者達でレギオンを組むのが一般的である。



「待て。他の面子より多少付き合いの長いオレ等も訳がわからん。説明しろ」


 ヴィンが説明を求める。


「先ず、作為的にわけられたと思われるクラス分けから入る」


「優等生が纏められた天組と、問題児と戦闘能力に不安のあるジョブなんかが纏められた地組な。で、それがどーした?」


 自分を問題児と認定できるヴィンだった。


「流石ヴィンは話が早い」


 カオスは言うとニヤリと笑った。



「うちのクラスで強いやつでパーティーを組むと、どうしても戦えない者だけが残る」


 まあそーだなーと聞いているものは同意する。ケイが例外なだけで、大概の錬金術師は戦闘に向かない。


「なのでそういった者もダンジョンで経験をつんで貰うとなると、レギオンしかない」


「友情ごっこならバランス良くパーティーを組めばいーだろーが」


 言い方は酷いが的確であり、ヴィンは乗り気ではなかった。



「それだと進行が遅れる」


 特に強いパーティーはそうだろう。


「後方の補給等の担当が通信で複数のパーティーを効率的に動かし、素早いマッピングを行う。ボスもレギオンなら楽勝だろ。下層へ降りれば降りる程、敵は強く収得物も良く、結果全体の底上げになる」


 今のところ穴だらけだが、一理あるとヴィンは思った。あと、こいつ本当に遊び人かとも思った。


「パーティーでは行き詰まってもレギオンでなら進める可能性があり、最終的には進行速度で上回る」


 そこでカオスが何を目指しているか理解する。


「つまり、最下層が目的か?」


「記録は76階層、約四百年前の勇者達の記録だ。越えたくないか?」


 蛇足だが、通常の生徒は3年間で40階層程度、優秀と言われる期でも50階層程度である。


「それに、このクラスにはレギオンの方が優秀な人間が3人もいるしな」


「パーティーが苦手な訳でもねぇーぞ」


 とはヴィンの返し。頭脳型の【戦争屋】は全体の指揮をとるため、指揮下の人員が多い程恩恵を受ける。が、本来は敵陣の真ん中で大暴れするジョブである。前線で指揮を執りながら暴れる者もいる。


「ケイもレギオンの方が活躍できるだろ?」


 個人の能力は低くとも武器の制作、強化ができる錬金術師は、レギオンで1人は欲しい人材である。少数パーティーだと判断に迷うところだが。



「クラスメートなら材料と時間さえくれれば幾らでも作るよ。自分の目的からすると、補給担当だとメリットは少ないから、レギオンは断りたいけど」


 ダンジョン内の素材発掘やモンスターとの対策のために冒険者学校に入ったケイである。前線での経験が積めないのは十分デメリットになる。


「その辺りはローテーションだな。ヴィンも後方指揮だけでなく前方での指揮、奇襲対策も必要だろうし。流石にボス戦では後ろから指揮に専念して貰うが」


 そうして各自考える。


「レギオンを運用するための情報伝達はどーすんだ?」


 ダンジョンで多すぎる人数は仲間の足を引っ張りかねない。なのでダンジョンの場合、大概は5人前後のパーティーを一組として運用する。無論、広い場所では10人やそれ以上で組む場合もあるにはある。


「それについては宛がある。リーン!」


「はいはーい!」


 そう言って薄紅色のウルフヘア・ロングな小柄な少女。翼の生えた猫を黒猫と白猫を両の肩に乗せている。


「【情報屋】リーン・パラッチです!」


 元気一杯に自己紹介をする。


「得意なのは使い魔を用いた情報収集(覗き見)です!」


 それ、本来はバレないようにこっそり使う予定だっただろ。


「あー、他のパーティーから状況を聞くのはいいが、指示もできるか?」


『問題ありません!』


 クラスの背後、三毛猫から返答がされた。


「何組同時に運用できる?」


「今は4組ですね。あと、トラ猫がいます」


 不安要素は潰れていく。


 クラス30名、1パーティー6人の4組24人、+本部の6人でギリだな。実際はクラス全員参加はしないだろうから十分だ。ヴィンはそう皮算用する。しかしそれとは別に問題がある。


「運用は問題ねーな。けどあんたはそれでいーのか?」


「どういう意味でしょうか?」


「さっきのケイみたいに、前線での経験が欲しーんなら不利だろうが。そんなんねーのか?」


 そもそも、後方支援前提の立ち回りなら冒険者学校にくる必要はない。



「そこは大丈夫です!わたしの目的は冒険者の活躍を記事にしたい、そのための追跡です。レギオン本部でも目的は達成できます!」


「つまり、オレ達の活躍を記事にして自称他称、優秀なはずの天組や先生達に見せびらかす」


 遊び人が楽しげに補足した。



「どうせなら印刷したら良くない?」


 とはケイの提案。


「印刷機って学校にあんのか?あっても借りれんのか?」


「頼むだけなら只だろ」


 内容が内容なだけに借りれるとは思わない。が、


「そんな事気にしないで作ればいいじゃん、印刷機」


 無いなら作る、これ基本。



「印刷機が作れるんですか!?」


 リーンが真っ先に欲しがった。


「手持ちの材料でなんとか…………インクはないけど、材料さえ集めれば直ぐに作れるな。まあ、機構ならすぐにできるよ。一回作った事があるし、その時の設計図も持っているから」


 それ錬金術師個人が作るものでなくね?多くの者がそう思った。


「ヒャッホー♪ついでにカメラ、写真なんかとれたりしますか!?」


 高級品で王候貴族や大商人くらいしか持てないもんを頼むなよ。カメラを知る者はリーンのあつかましさにドン引きする。


「原理は知っているから作りたいんだけど、材料がないんだよ」


 材料さえあれば作れるんかい。


「上手くいけば白黒でなくカラーの写真ができそうなんだよな。


 なんで、作りたい。いや、作る」


「いいですねー!欲しいですねー!材料集めに協力します!そしてクラスで記念撮影です!」


 自分もー私もー、クラスの彼方此方から協賛の声があがる。


「ケイのやつ、何気に凄い事を言っているぞ」


「未だ何処も作ってねーかんな。カラー写真は。何処も研究中だから世界最初は時間との勝負だろーが」


 じゃあ何故彼が国やなんかの研究室でなく冒険者学校にいるのかといえば、実績のない子供にそういった機関は門戸を開かないから。


「ついでについでに、録音機が欲しいんですけど作れます!?」


「何それ作りたい!どういう原理!?」


 そしてテンション高い2人は録音機について作れるか検討していく。そして結論、作れそう。



「ケイって、凄いではなくヤバいやつだったんだな」


「錬金術師に見えねーけどな」


 スキルとかステータスとかで判断できない能力に、カオスとヴィンは(おのの)いた。


「それを本人は自覚してねーぞ。すげーとも思ってねーし」


「しない方がいいだろ。したら持ち味を潰すだろうし」


「…………在学中は気にしねーでおくか」



 後世、錬金術師のやべー奴として知られるケイの、真っ先にその資質に気がついたのはこの2人だったりする。



「みんなが素材集めに協力してくれるんなら、レギオンに乗ろうかな?」


 とはケイ。続いてオレも私もと半数くらいの声があがる。ヴィンは半分いれば十分だと考えたし、自分が参加するにも十分だと思った。


「と、ここまでは真面目な話だ。真面目な人は十分にメリットがわかったと思う」


 ケイの発明が人気で予定より賛同者は多かったが、その程度でカオスは満足しない。


「その言い方、不真面目向けの説得方法もあんのか?」


 これだけ考えれるこいつは本当に遊び人かと疑問に思いつつ、ヴィンは促す。


「優秀で戦える奴らは天組で、戦えないのは地組と先生達は分けた。それは天組も知っているだろうね。


 それでいて、地組が天組より優秀な成績を出したら、優秀であるはずの天組や先生達はどう思う?」


 こいつ遊び人だとヴィンは確信した。



「乗った!」


 ヴィンは笑いながら宣言した。クラスの至るところからオレも私もと声が続く。


「だいたいが賛成だな!じゃあ参加したくない人は挙手!」


 1人だけ手を上げた。金髪のポニーテールで褐色のスレンダーな少女だ。


「君は?」


「リヒア・アーゼン。【晴れる屋】という店で【料理人】をしている」


 あー、あの竜とか鳳とかの肉を調理してるジビエ料理店ね。知っている者は顔をしかめる。


「因みに、今までの単独狩猟で一番の大物は?」


 店の実情、店員に一流程度の冒険者では太刀打ちできないモンスターを狩らせている事を知っているカオスは聞いてみる。



「?グラングドラゴンだが?」


 質問の意図がわからないリヒアは戸惑いながらも素直に答える。一流冒険者がレギオンを組むレベルのドラゴンを単独狩猟とな?


「冗談ではなく、どうして冒険者学校にきたんだ?」


 誰もが思う疑問である。


「店長の命令だ。こういった場所でしか培えない強さを見つけろ。だからそれを見つけるため、レギオンには参加しない」


「こういった場所でしか培えれないものって、それこそレギオンに参加しないと見つからないと思うが」


 ボソッとカオスが呟く。


「何かわかるのか!?」


 喰ってかかるリヒアを前に、カオスはいたずらっ子のような笑みで答える。


「教えたら力を得れないだろうから、秘密な」


「店長と同じような事を言うんだな」


 胡散臭そうな顔で感想を述べ、


「わかった。クラスのレギオンに参加する」



 こうして1年地組は形だけは団結したのだった。



リーン・パラッチ(入学時)

レベル7

【何時でも何処でも】【情報屋】

筋力  +D

体力  +D

敏捷   C


魔力  +B

精神力 -C

知力  +B


知覚  -B

器用  +C

反応  +C


【使い魔召喚】

 魔力を代償に使役する下僕。戦力を持たせようとすると魔力の代償が大きいが、遠隔地と会話するだけならそこまで魔力は必要ない。


総評

 情報収集と宣伝担当。今後出来上がるであろうカラーコピー(カラー写真が作れるならカラーコピーもできる)を用いた歴史的な記事1号の記者。なお、このコピーは学校の外にばら蒔かれる。



リヒア・アーゼンベルグ(入学時)

レベル53

【何故ここにいるのか】【料理人】

筋力  +B

体力  +B

敏捷  +A


魔力  -F

精神力 -B

知力  -C


知覚  +A

器用  +A

反応  +A


【聞き耳】【食材】

食材の声が聞こえる。何処にあるかや調理法もわかる。

【狂理】

料理の流派。色々と規格外。


総評

極々少数の人が知っている人類の規格外、狂理というお料理流派を使う。同学年のパーティーに組み込むと、1人で攻撃と探索を完璧にこなし、回避性能が高過ぎてダメージを負わないのでヒーラーいらず。遠距離、範囲攻撃、非物理攻撃もあるので魔術士もいらない。結論、1人でいい。

弱点は協調性がない。やっぱり1人でいい。

なお、教師を含めて学校最高のレベルである。


称号変化

カオス・スティングマン

【遊ぶの大好き】【みんなのリーダー】

ヴィン・テトム

【考えろ考えろ】【頭脳担当】

ケイ・クロムウェル

【何それ作りたい!】【クラフトマン】



作者の独り言


遊び人のモットーは自分が楽しい事。それ以上に大切なのが、みんな楽しい事。そのために苦労と知恵を絞る事は厭わない。



カオスによる学園・ダンジョン物のタイムアタック。何でパーティーで攻略しないといけないのか。クラス全体で攻略すればいいじゃん。



レギオンのデメリット

モンスターのポップアップに対して人員が過剰なため、1人辺りの収得経験値が減少する。短期的には不利。


リーン・(パ)パラッチ。パパラッチです。



彼等は未だ知らない。写真と録音機を組み合わせたケイが、何を作るのかを。



錬金術師のやべー奴

銃もエンジンもないこの世界で、ここから五年もせずに戦車が完成する。



日本語ではこてんぱんにする事を「料理する」という。料理人とは「こてんぱんにする人」の事をさす。



形だけは団結している。

メリットとデメリットだけで判断している。また、クラスの大多数が参加してるので、流されている者もいる。

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