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グラウンドの中心で愛を叫ぶ

 かつて偉い人も失敗は成功のママと言っていた。なので、前回のループで原付に乗って風と同化したことでスッキリした頭を使って、僕は改めて考えてみることにした。


 ズバリなぜ告白が断られるのか。もうビッチ裁判なんて建前は知らん。

 僕は告白がオッケーされたいのだ。承認欲求を満たしたいのだ。そこで僕はあらゆる手を考えた結果、思いついた。


 僕は告白する際、他に人がいない場所で、常に一対一、1on1での戦いを挑んできた。1on1はどう足掻いたって実力勝負だ。

 そして僕には実力、つまるところ魅力が足りないらしい……うん。認めたよ。


 正直顔は良い方だと思っていたから大分ショックではあったけど、ここまでことごとくフラれ続ければ認めざるを得なかったよ。

 だから僕は逆のことを考えてみた。僕一人では勝てない。ならば他人を利用すれば良い。つまり大衆が注目している状況で告白されたら断り辛いのではないかと思ったわけだ。


 というわけで、グラウンドの中心で愛を叫んでみた作戦行ってみようか。


「加藤菜々子さぁぁぁん。あなたのことが、世界で一番大好きだぁぁぁぁ!」


 アナタノコトガスキダカラ!


 グラウンドのど真ん中。僕は喉が潰れることも厭わず出せる最大出力の音量を持って校舎に向けて叫んだ。

 

 地球は丸いからここが世界の中心と言い張れなくもないと思う。大雑把に言えば僕は今世界の中心で愛を叫んでいるのだ!

 エアーズロック? そんなものは知らん。しかし何故日本は英語を訳す時、世界のへそとかダサくなってしまうのだろうか。


 そんな日本人のセンスについて考えを巡らせながら校舎を見る。

 窓からちらほらと人が顔を出しているものの、肝心の本人が居ないようだった。失敗である。


 じゃあ次はグラウンドの中心で愛を叫ぶ作戦(ラインひきで文字を書くバージョン)で。


「加藤菜々子さぁぁぁん!あなたのことが、世界で一番大好きだぁぁぁぁ!」

 

 グラウンドにデカデカと白線で菜々子という微妙に画数の多い漢字を10分足らずで綺麗に描くというのは不可能かに思えた。

 更に素早いライン引きによって息も絶え絶えになった状態で大声で告白は厳しいものがあったのか、グラウンドで幾度もループを繰り返すこととなった。


 しかし度重なる試行錯誤の末、ついに最低限の体力消費で最速で精密な白線を引く方法を習得し、僕はライン引きの神となったのだ。


 このタイムループを抜け出したとしても有効活用できる場面が一つも浮かんでこない、なんとも無駄な技術である。

 同時に鍛えられた方向性を与えた大声量の出し方はどこかで役に立つかもしれない。


 グラウンドをライン引きを押して走りまわる男というのはたいそう目立って、大勢の学生が窓からひしめいて僕のことを見下ろしていた。

 そして三階の窓、僕らのクラスあたりにあのヤンキー女二人組の姿もあった。   

 

 グラウンドに白く描かれた自らの名前を見て、大声量の告白を聴いた加藤菜々子の顔はみるみるうちに真っ赤に染まって、どこかへ走っていった。


 逃げたか……。


 そして10分が経ってしまった。これだけ大掛かりでやれば断りにくいかなと思ったけどダメだったようだ。

 これだけやってダメならもう諦めることにしよう。もう疲れた。心も傷つくし。まぁ今回は否定の言葉も聴いてないからノーカンノーカン。傷つかない傷つかない。そう自分に言い聞かせた。


 ちなみに加賀恵はグラウンドの僕にも届くくらいの声量でゲラゲラ笑ってた。


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