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ある日世界がタイムループしてることに気づいて歓喜したのだが、なんか思ってたのと違う  作者: ジェロニモ
タイムループ編

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エピローグ

 あれから一週間が経ったが、タイムループの兆しはまるで見えない。 

 僕は毎日無事に我が家に帰宅している。もちろん高級車にもバイクにも乗らず自転車でだ。こんな当たり前のことがまるで奇跡のように感じられるというのだから、なんだか気持ちが悪くてしょうがない。

 今寝そべるベットの感触も、見慣れているはずの天井も、2、3日は随分と尊いものに思えて毎朝2度寝して学校に遅刻して大いに目立ったものだ。

 学校では宣言通り休み時間毎に歌を歌って恥を晒した。

 放課後はあまりにも歌が酷すぎるということで自主練のパート練習から外れ、加藤菜々子と二人で橘恵美によるスパルタ特別指導を受けたりもした。これで僕もゴミボとはおさらばである。橘恵美に「最近上達している気がするんだ」と言ったら、なんとも言えない顔をしながら「うぅぅん」と言われたが。


 そんなこんなでこの一週間、僕は日常のありがたみをこれでもかと噛み締めていたわけだ。

 しかし人間喉元過ぎれば熱さ忘れると言う言葉がある。僕もその言葉の例から外れず、時が経つに伴って日常のありがたみは薄れ、退屈なものへと戻っていった。

 学校に行くのが憂鬱になったり、授業がだるくてサボりたくなったり。今ではタイムループをもうちょっと楽しんでおいても良かったかもしれないと思う有様だ。自分のことながら愚かだなぁと呆れる。

 けどまぁ、怠惰な日常に退屈しながら、非日常に憧れるというのが僕の真の日常だったとも言えるので、これで良いっちゃ良いのかもしれない。それに以前と違って、退屈なだけの日々では無くなったし。

 合唱練習に勤しんだり、クラスメイトから動物園の珍獣扱いされたり、爆笑されたり、逆ギレされたりするのは面倒だったり、恥ずかしかったり、ちょっと面白かったり。何もなかった以前と比べて、色々ある今の日常は嫌ではない。というかむしろ結構気に入ってたり……する。彼女ができないのは物凄く不満だけども。


 しかしまさかクラスメイトに時間をループさせる能力者が居たとはなぁと今更ながらに感心していた。超能力や魔法は信じているタチなので疑問はない。ぜひ弟子入りしたいところだが、本人にはタイムループを引き起こしていた自覚が無さそうなので無理そうだ。

 能力者の橘恵美は毎日普通に過ごしている。その様子をはたから見た感想としては普通の女子高生そのものである。とても時を操る能力を持っているとは思えない。


……タイムループなど理屈を超越した現象であるので完全に憶測になるが、あれから色々と考えてみた。結果、あのタイムループは誰かに助けてほしいと願った橘恵美の潜在意識によって引き起こされたのではないだろうかという結論を僕の脳内会議は叩き出した。けれど僕のようにタイムループするたびに記憶を持つ者が多数居たら、タイムループが終わった際の影響が大きくなる。だからちょうど彼女が合唱委員を押し付けられたように、誰か一人が損な役回りに選ばれたのではないだろうか。

 

 まぁその損な役回りに選ばれた僕が橘恵美を怒る権利があるかと言われると、タイムループをちゃっかり前半は楽しんでいた身としては微妙なところではあるけども。

 けれど一つ腑に落ちないことがあった。それは何故僕がその一人に選ばれたのかということ。それだけはどれだけ考えても、今の僕には心当たりは一つも浮かばなかった。

 もしかするとクラスで一番影響力の無さそうな奴を選んだのかもしれないし、案外適当だったりしたのかもしれない。

 まぁ結局は全て僕個人の憶測でしかない。全くの見当違いなことを考えている可能性もある。

 

 でも散々な思いをしたけれども、それでも僕が選ばれたのは少し嬉しかったりしたのだ。

 だって選んだということは、少なくとも彼女が僕のことをクラスの背景としてではなく、一個人として認識してくれていたということだから。だから僕が選ばれたことは良かったことなのか悪かったことなのかは未だによくわからない。あの10分間に対する僕の心情は結構複雑だ。


 そうしてうんうんと頭を悩ませている内に、僕は睡魔に襲われた。閉じる瞼をそのままに、ふわふわとした心地よい浮遊感を感じながら、僕は深い眠りの中に落ちていった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 3億年ボタンとかエンドレスエイトを思い出した。 主人公やその他のキャラも良かったし話も面白かったです。
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