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ある日世界がタイムループしてることに気づいて歓喜したのだが、なんか思ってたのと違う  作者: ジェロニモ
タイムループ編

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選り取り見取りの弁当たち

「うめぇ」

「ほんとやめて! 返してよ!」


 僕は今、物凄い剣幕の女子に腕を掴まれながら弁当を食い漁っていた。

 なぜこんな状況になっているのかというと、僕が食べている弁当が、僕に涙目で掴みかかってきている子のものだからだろう。実にシンプルな理由だ。


 こんなところを神にでも見られたら、ループから抜け出すと決意した直後になにをやっているんだと呆れられるかもしれない。しかしこれは決して明日から頑張る的なアレを発症しているわけではない。これは頑張るための前段階として英気を養っているのだ。必要なことなのだ。

 なぜ英気を養うのに弁当を食う必要があるのかというと、単純なる消去法である。


 人には三大欲求というものがあるらしい。それは食欲、性欲、睡眠欲である。これらの欲求を満たすことが英気を養うことに繋がると僕は考えたわけだが、睡眠欲は眠くならないので満たせないし、性欲を満たそうとするのは犯罪行為に直結する。


 いくらループして人々の記憶には残らないとはいえ軽犯罪ならともかく性犯罪を犯すのは、英気を養うどころか罪悪感で心身がボロボロに弱りそうなのでこれも断念。

 つまり僕は残る食欲しか満たせる欲求はない。しかも睡眠は眠くないとできないが、食欲は別に空腹ではなくとも満たせる。美味いもんは美味いのだ。

 しかし僕が持参するママンが作った弁当は少し食べ飽きた感がある。これでは英気を養えない。そう思って僕は新たなる美味い食事を目指してクラスメイトから弁当を強奪して貪るという暴挙に出たわけである。


 僕がループを止める為には英気を養う必要がある。そして英気を養うには美味いもんを食べて食欲を満たす必要がある。そしてループを止めることは僕だけならず世界中のみんなのためにもなるのだから、今僕の腕を握りつぶす勢いで掴んでいる橘恵美さんも僕の暴挙を少しは大目にみてほしいものだ。

 たかが話したこともないクラスの陰キャに弁当を勝手に食べられただけじゃないか。その程度の対価で世界が救われるのならむしろお得すぎるくらいじゃないか。


「うめぇ」

「壊れたCDみたいに同じセリフばっか言ってないでそれ私の弁当だから! お願いだから返してよっ。私の声聴こえてないの!?」


 はいちゃんと聴こえてます。むしろ大音量に耳が痛いです。

 ちなみにこのお方、以前赤ちゃんはどこからやってくるのか講義していた僕の左頬に、プロ顔負けの右ストレートをお見舞いしてくれやがった委員長さんである。

 流石の僕も彼女から弁当を強奪するのはまた殴られるのではと少し躊躇したのだが、やってよかった。うめぇ。


 鼓膜への絶叫と掴まれた腕の皮膚に食い込む爪などによる被害を受けながら無事弁当を完食。

 もちろん1番の被害者は僕ではなく、弁当を取られた委員長殿なのだが。


 それにしてもなんだか久しぶりに満ち足りたような気分である。やはり人が生きていく上で三大欲求を満たすことは必要不可欠ということか。

 必要な準備は整った。あとはもうループを止めるだけである。


 あれ、ループを止めるだけ?


……はて。どうやって止めればいいんだろうか? 英気は養われた。しかし逆に言うのなら、僕には英気しかなかった。

 大変だ。これではタダ飯喰らいになってしまう。



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