終わりと新たな始まり
それから数日が過ぎた。
「今日こそ、ダーク○ウルⅢをやるぞ」
ソファに座りながらコントローラーを握った。
「コシミズさんはまたゲームをするんですか?悪の秘密結社としてやる気があるんですか?」
声のする方を見るとキレイに補修されたブサイクなままのぬいぐるみを抱いたエルヴァがソファに座っていた。
「うるさいな、悪の秘密結社としての活動も大事だが休息も必要なんだよ」
「私が見るにあなたはいつもゲームをしているように見えますがね」
「うるさいな」
コシミズがエルヴァからぬいぐるみを奪おうとするとエルヴァが逃げた、エルヴァを捕まえてきた翌日にぬいぐるみを分解しようとしたのだがエルヴァに見つかり超能力で基地を壊されそうになったので今の所保留をして様子を見ているという状態だ。
「コシミズ、ちょっと来てくれ」
アオキの工房兼車庫から声が聞こえたのでコントローラーをテーブルの上に置きアオキの所に向かうとアオキはオートジャイロの整備をしていた。
「なんだ?」
「ちょっとそれを持ってくれないか?取り付けるのに一人ではな」
それといって示されたのは円柱状の燃料タンクみたいに見えたが持つと見た目よりずいぶん重い。
「何が入ってるんだ?重いぞ?コレ?」
「それはこの前みたいなロボットが出てきたときに一撃で破壊できるように設計したレーザー照射機の試作機だ、落とすんじゃないぞ」
「持つ前に言え」
言いながらアオキに指示された場所に持っていくとアオキが取り付け作業を始めた、アオキも自慢のロボットを破壊されて少しは落ち込んだが今はもう立ち直ったようだ。
「ピンポーン」
玄関のチャイムが押される音が聞こえた。
「はーい」
返事をしたが聞こえてないようでもう一度チャイムが鳴った。
「ピンポーン」
「はーい!」
先ほどより大きい声で返事をした、どうやらエルヴァが変わりに出てくれることもなさそうだ。
「よし、仮止めしたから大丈夫だ、行ってくれ」
「わかった」
言いながらタンクから手を離して急いで玄関に向かうとエルヴァはブサイクなぬいぐるみを持ちソファに座っていた、何か言おうかと思ったが先に玄関のドアを開けた。
「すいません、ちょっと手が話せなくて」
言いながら前を見るとそこには黒髪の眼鏡を掛けてスーツを着た女性が立っていた。
「すいません、遅くなりました」
「あぁ、大丈夫ですよ、ではよろしくお願いします」
「はい」
黒髪の眼鏡を掛けてスーツを着た女性が返事をしてリビングに向かいソファに座った。
彼女は黒田ユウといい、コシミズとアオキの男二人ではエルヴァの世話というか必要なものが用意できないため急いで雇った女性で我々が悪の秘密組織だということも知っているのだが冗談だと思っているかもしれない。
「エルヴァちゃん、おはよぉ~」
「おはようございます」
エルヴァも何故か彼女には返事をするのでコシミズたちも助かっていた。
「私には挨拶はないんですか?」
ブサイクなぬいぐるみが何か言ったがユウは反応しなかった。
「無視ですか?、無視なんですね?」
これで何とかやっていくしかないのか・・・思わず出そうになるため息を堪えながら玄関のドアを閉めた。