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プロローグ

悪の秘密結社KA団は首領コシミズと武器や特殊兵器を開発するアオキの二人だけの秘密結社だ。

他の悪の組織の研究所に忍び込み最高機密をかっこよく盗みだすはずだったがどうしてこうなった。

予定通りには行かない。

夜の住宅街を全身黒づくめの男女二人がぬいぐるみを持った一人の子供を間に挟み引っ張るようにして走っている。

「あっちに逃げだぞ!!絶対に逃がすな!!」

三人の背後から大勢が追いかけて走る足音が聞こえてくる。

子供の手を引きながら男は背後を振り返るとライトの光りをこちらに向けながら走ってくる屈強な男たちが見え慌てて前を向いて足を動かした。

(このままだとすぐに捕まってしまう、どうにかして仲間と合流しなければならないが、先ほどから子供を引っ張って全力疾走をしているためうまく考えることができない)

「ハァ、ハァ、ハァ」

隣を走る女の荒い息が聞こえてそちらを見た。

女は金髪の赤い目をした肌の白い女で前を見て必死に走っているといきなりスピードを速めるので、男は手を握る子供に引っ張られた。

女はいきなり近くの家の塀の中入り子供に引っ張られるように男も塀の中に入ると女が子供の口を手で塞ぎながら塀に背中をつけて隠れたので男も慌てて同じように塀に背中をつけて隠れた。

「おい!どこにいったんだ!いきなり消えたぞ!」

「バカ野郎!大声を出すんじゃない、どうせどこかの家の庭に隠れているに違いない、散らばって探すんだ!絶対に捕まえろ!!」

「「はい」」

男達の返事をする声が聞こえるのと同時に散らばっていく足音が聞こえた。

(ここに隠れてもいずれ見つかるな・・・・・、ハァ)

思わずため息がでてしまう、さっさと目的の物を奪い一人で逃げよう、男は女と子供に顔を向けると女に睨みつけられていると思った瞬間に握り拳が飛んできて頬に痛みが走り思わず目を閉じると今度はみぞおちを思いっきり殴られ身体を思わずくの字に折ると膝で腹を蹴られ耐え切れず草の生えた地面に横たわると女がすぐに男に馬乗りになったので顔を腕でカバーすると女は何度も腹を殴ってきた。

(もうだめだ、体中が痛いし、意識が遠くなってきた)

段々と頭を守っている腕に力が入らなくなり下がっていく。

「いたぞ!!」

隠れていたのが見つかり男の仲間を叫ぶ声が聞こえると上の女の体重を感じなくなったと思うと何か鈍い音が聞こえ頭を守っている腕の間から音のしたほうを見ると黒い服を着た男と上に載っていた女が殴り合っているのが見えた。

体の痛みを堪えながら身体を起こすと目の前にブサイクなぬいぐるみを抱いた肩くらいまである緑色の髪をした女の子が怯えた様子も無く無表情でこちらを見ていた。

(なんなんだよ、このガキは、それよりも早く目的のものを奪ってさよならだ!!)

緑色の髪をした女の子の持つブサイクなぬいぐるみを掴んで奪い取ろうと力をこめて引っ張った。

「やめろ!、その汚い手を放しなさい!、今ならまだ苦しまず楽に死ねるように協力してあげます!、だから手を放しなさい!」

男とも女とも分からない声が聞こえ思わず緑色の髪をした女の子の顔を見たが黙ったまま無表情でこちらを見ていた。

「なにエルヴァさんを見てるんだ!!」

また声が聞こえたが女の子は口を閉じたままだった、どうやらこのブサイクなぬいぐるみが話しているようだ。

「うるさいんだよ!、ガキは手を放せ!」

言いながら一気に力をこめてブサイクなぬいぐるみを奪った。

「やめろ!、放せ!、大人しく元に戻せ!」

ぬいぐるみが罵倒してくるが無視して後ろを振り返ると女がちょうど男の頭にキレイな回し蹴りを決めて男が崩れ落ちるのが見えた。

(あの女化け物か!?さっさと逃げよう)

女が振り向き近づいてこようとしたが倒した黒い服の男の仲間が三人現れると女が上着の中に手を突っ込んで素早く拳銃を取り出し大声で叫んだ。

「動くんじゃない!、動くと撃つぞ!」

女の言葉に黒い服の男たちは身体を硬直させたがすぐに薄ら笑いをして女を見た。

「お前達こそバカな奴等だ、我々の重要機密を盗むなんてな」

「うるさい、黙れ!!」

怒鳴り声を上げて女が振り返りこちらを睨んだ。

「そこのお前、そいつをそのガキに渡すんだ!、変なマネはするなよ」

言われてどうするか考えながら立ち上がり周りを見渡した。

「えっ、あなたたち仲間じゃないんですか?」

ブサイクなぬいぐるみから声が聞こえ思わずぬいぐるみを見た。

「やはりしゃべってるのはこのブサイクか・・・、盗む価値はあるかもしれんな」

男は女を見て笑った。

「さっきしこたま殴られたのはそいつらの相手をすることで勘弁してやるよ」

すると女は眉間に皺を寄せて拳銃を片手で持ちもう片方の手をまた上着の中に突っ込むと小型の拳銃を取り出して素早く狙ってきた。

「これで満足だろ!さっさとそのブサイクなぬいるぐみをガキに渡してこっちに渡せ!!」

「ブサイクって何ですか!!」

ため息をつきそうになるのを堪えてブサイクなぬいぐるみを先ほどの緑色の髪の女の子に向かって投げたが女の子は掴もうとせず足元に落ちた。

「えっ、なんで受け止めてくれないんですか?」

ブサイクなぬいぐるみの声が聞こえたかと思うとエルヴァといわれた緑色の女の子がヌイグルミを拾い上げた。

だが、数人のこちらに向かってくる足音が聞こえそちらを見ると黒い服の男たちの仲間が駆けつけ十人くらいになると先頭の黒い服の男が拳銃を向けている女に向かって叫んだ。

「この人数から逃げ切ることが出来るのか?大人しく銃を捨てるんだ!、そうすれば命は助けてやる」

(おれは完全に無視しされているな・・・・、今のうちに逃げよう・・・)

気配を消して音を立てないようにゆっくりと後ろに下がり隙を見て逃げようとした。

「おい!、そこの男、なに逃げようとしてるんだ!!」

先ほど女に向かって話しかけていた黒い服の男の後ろの男の一人がこちらを指差して叫んだ。

「いや、おじゃまだから、俺は家に帰ってビールでも一杯飲んでから寝ようと思いましてね、皆さんもそのほうがいいんじゃないですか?、特にほら女性の夜更かしは美容に良くないですからね、それに子供の成長にも良くないですよ」

「なにふざけたことを言ってるんだ!!ぶっ殺すぞ!!」

黒い服の男達が一斉に怒鳴り始め今まで暗かった周りの家々の窓が明るくなった、どうやら怒鳴り声で寝ていた人たちが起きたようだ。

「助けてくれ!!、殺される!!、警察を呼んでくれ!!、誰か!!警察を呼んでくれ!!」

時間稼ぎのために叫ぶと女がこちらに向けていた拳銃を発砲し足元の草がえぐれて土がはねるのが見えた。

「ふざけたマネは止めろ!」

女はこちらを見ずに叫んだ、発砲した時もこっちを見ていなかったから別に俺に当たっても良かったのだと思うと血の気が引く。

背後で何かが擦れる音が聞こえ思わず振り向くと隣の家の塀を登って背後に回った黒い服の男がエルヴァと呼ばれたブサイクなぬいぐるみを持った女の子を抱きかかえた。

「回収したぞ!、そいつらは用無しだ!!殺せ!!生きて返すな!!」

その声で殺気立っている黒い服の男達が一斉に上着の下に手を入れた瞬間に住宅街に響き渡る爆音が聞こえ、上空に小型のヘリコプターのようなオートジャイロが現れると縄梯子が下ろされた。

「早くつかまれ!!、逃げるぞ!!」

オートジャイロから男の怒鳴り声が聞こえると唖然として上を見ている黒い服の男に抱えられているエルヴァという子供からブサイクなぬいぐるみを奪い縄梯子に飛びついた。

「出せ!!出せ!!」

「しっかり捕まってろ!!」

オートジャイロが上昇し縄梯子が地面から遠ざかると黒い服の男達が上着の下から拳銃を取り出してこちらに撃ち始めるとブサイクなぬいぐるみが叫んだ。

「私に当たったらどうするんです!責任取れるんですか!撃つのを止めなさい!!」

下にいる奴等にはしっかりと聞こえたはずだが誰も拳銃を撃つのをやめようとしない、それどころか銃弾が当たり中から綿が飛び出た。

「早く逃げてください!!あいつらは悪魔です!!」

ぬいぐるみがオートジャイロのエンジン音に負けない泣きそうな声で叫んだがすでに五十メートル以上離れて更に夜の暗闇の中を遠く逃げているんだ、拳銃の銃弾が当たるはずない。

「さよーならー、お元気でー、間抜けども!!」

叫びながら手を振ると発砲音が増えたがまったく当たらなかった、縄梯子をゆっくりと確実に登ってジャイロコプターの副座にたどり着くと操縦席に座っている若い神経質そうな男が額に髪の毛を貼り付けた状態で振り返った。

「獲物は手に入れたか?」

「もちろん手に入れたさ、ほら」

言いながら握っているぬいぐるみを操縦席の男に押し付けると男は受け取ったが不思議そうに眉間に皺を寄せた。

「なんだ?この中に何かあるのか?」

「いいや、それが俺達の目的のスーパーコンピューターだ」

「こんな小汚いのが?」

縄梯子をのぼり副座に座った。

「小汚いなんて失礼な、訂正してください」

「まじか!、これしゃべるのか?、すごいな」

「そうだろ、早く基地に戻って解体しようぜ」

返事をしながら登ってきた縄梯子を回収したが縄梯子が重い。

思わず下を覗き込むと緑色の髪をした子供がしがみ付いていた。

「あっ」



「それでどうする?このガキ」

リビングでオートジャイロを操縦していた男がソファに座り缶ビールを飲みながら聞いてきた。

「どうするかな・・・」

「なぁ、コシミズどうするんだ?」

言われてテーブルを挟んで反対側のソファに座っていたコシミズと呼ばれた黒い服の男は缶ビールを一口飲んでから答えた。

「どうするかな、どうしたらいいと思う、アオキ?」

「俺に聞くか?お前がリーダーだろ?」

「リーダーって言ったって二人しかいない悪の秘密結社だしな・・・」

言いながらテーブルの上に載っているチータラを掴んで食べた。

「あなたたち悪の組織だったんですか?」

ブサイクなぬいぐるみの声が聞こえそちらを見るとソファに座った緑色の髪の女の子がぬいぐるみを膝の上で抱きしめるように持っていた。

「悪の組織なんだけどな・・・・、せっかく敵の研究所に潜入して最新兵器を奪ってきたのに喋るブサイクなぬいぐるみとそれを持った女の子だもんな」

「俺達は今は悪の秘密結社じゃなくてただの誘拐犯だ」

コシミズとアオキの二人が同時にため息を付いた。

「誰がブサイクな喋るぬいぐるみですか、まったくバカで下品な人たちだ、早く私達を解放して日本国内から脱出したほうが身のためですよ」

その言葉にイラッときたのかアオキがぬいぐるみを見た。

「そのぬいぐるみは分解するか焼却炉に放り込むかの二択だな」

「あぁ、そうしよう、勝手にしゃべられてもむかつくからな」

「えー、酷すぎます、やっぱり悪です悪魔ですよ、この二人は、エルヴァさん早く二人でこの場所から逃げましょう、こんなところには一秒も長居をしてはいけません」

ブサイクなぬいぐるみが必死にエルヴァと呼ばれた女の子に訴えるが黙ったままで逃げ出そうともしない。

「コシミズ、この女の子なんだんだ、さっきから一言も喋ってないが?」

「さぁ?」

「さぁ?ってお前な、お前が敵の研究所から連れてきたんだろ?」

「そうなんだけどさ・・・・」

「なに言いよどんでんだよ、説明しろ」

アオキがスルメイカを食べながら言ってくるのでコシミズも缶ビールを一口飲んでからスルメイカを掴んで食べながら話した。

「たしか、アオキが用意してくれた敵の研究施設の警備員の制服と身分証とセキュリティカードで気付かれずに入っていったんだよ、まぁ、最後は少し手荒なマネをして最重要区画に乗り込んだんだがそこでな・・・」

「そこで?」

「女とそこの子供がそのブサイクなぬいぐるみを奪い合っていたんだ」

「ちょっと待て、女ってのは誰なんだ?」

「さぁ、おれは知らないが研究所の職員ってわけではなさそうだったな」

するとアオキがブサイクなぬいぐるみに聞いた。

「おい、その女ってのはお前の仲間なのか?」

「話を聞いていたんですか?私をエルヴァさんと奪い合っていたんですよ、そこのあなたと同じ侵入者ですよ」

呆れるようにブサイクなぬいぐるみが答えるとむかついたアオキがぬいぐるみを奪い取りゴミ箱に向かって投げ捨ててコシミズを見た。

「それからどうなったんだ?コシミズ?」

「警備員だと思われている俺は女を注意して人形を奪って逃げようとしたんだがちょうどその時警報が鳴って女がそこの子供ごと抱えて逃げようとしたんで俺は後を追ってぬいぐるみを回収して逃げようとしたんだが、まぁ、子供がぬいぐるみを離さないから子供も連れて逃げることになって・・・・」

「それで脱出地点に来ないで住宅街を三人で逃げ回っていたのか?」

「そういうことになります」

缶ビールを一口飲んで口の中をしょっぱさを洗い流すとアオキが聞いてきた。

「この子どうするんだ?」

言われてコシミズもエルヴァといわれた緑色の髪の子供を見た。

「どうするかね、とりあえず今日は寝て明日考えよう」

「そうだな、俺もなんかつかれたわ」

アオキは缶ビールの残りを一気に飲んだ、コシミズも同じように缶ビールを空にして立ち上がった。

「この子供はどうする?縛っておくか?寝ている時に逃げられても面倒だし」

「エルヴァさんを縛る?やっぱりお前達はロリコンの変態野郎じゃないか!エルヴァさん離れてください!こんな奴等には指一本触れさせません」

ゴミ箱に入っているブサイクなぬいぐるみから俺達を罵倒する声が聞こえてきた、コシミズがため息を付いてからぬいぐるみをゴミ箱から取り出した。

「何するんです、私をまさか解体するんじゃないでしょうね、まさかぬいぐるみにも欲情するんで」

最後まで話を聞かず冷蔵庫の冷凍庫の中に突っ込んだ。

「これでうるさい奴はいなくなったな」

「おまえ、それ変態っぽいぞ」

「うるさい、人を捕まえる予定なんてなかったから縛る紐なんか用意してないしさっきから話しかけても一言も返事をしないんだ、別に俺達もここで寝れば問題ないだろ?」

「まぁ、たしかに、縛る必要は俺も無いと思うが逃げられたら面倒だしな、二人いればどっちかが逃げるのに気が付くだろ」

アオキがいうのでコシミズも納得してエルヴァとぬいぐるみに言われていた女の子を見た、テーブルの上の先ほどあげたお茶のペットボトルには手をつけていなかったがのどは乾いていないのだろうか?。

コシミズがエルヴァに言った。

「おい、エルヴァ、寝るならそのソファで横になるんだ、トイレに行きたいなら俺かそっちのおじさんに言うんだ」

「おじさんて・・・おれはまだ二十代だ」

「もうすぐ三十代のアラサーだろ、それならおじさんだ」

「やだやだ、俺もお前もおじさんか歳はとりたくないね」

アオキは言いながら自分の座っていたソファに倒れこんだ。

「俺もイヤになってきた!あー、明日になったら金持ちになってないかなー」

叫びながら自分の座っていたソファに寝転んで部屋の明かりを消して眠ろうとするとエルヴァがいきなり立ち上がりコシミズに近づいてお茶のペットボルトを指差したので言った。

「どうした?勝手に飲んでいいぞ?」

言って部屋の明かりを消そうとしたが女の子はまだペットボトルを指差したままだ。

「何してるんだ?」

アオキがソファに寝転がり目を閉じながら言う。

「いや、ちょっと待ってくれ」

返事しながらコシミズはテーブルの上のお茶のペットボトルを取って蓋を開けてエルヴァに差し出すと受け取ったエルヴァはペットボトルのお茶を一気に半分近くまで飲んだ。

「そんなに喉が渇いてたのか?さっさと飲めばよかったのに、もう明かり消すから大人しくしてるんだぞ」

エルヴァはペットボトルをテーブルの上に置き座っていたソファに横になった。

「早く消してくれ」

アオキが眠たげに言い思わずアオキを睨んだが目を閉じているので気が付くはずが無いのでおとなしく明かりを消して座っていたソファに寝転んで目を閉じた。

(まったく、ろくでもない一日だった、目的の物は手に入れたからいいがまったく、余計なものまで付いてきてきた、明日中にどうにかしなければいけないな)

それいがいにもいろいろ考えたがアルコールが回ってきたのか考えがまとまらなかった。

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