01 アリスとエリカ
あるところにアリスとエリカという名の女の子が二人いました。
住んでいる場所は、都市部から離れた深い森の中。
その森は昔から、恐ろしい精霊が出るという噂で、人っ子一人近づこうとしませんでした。
運命というその日がくるまでは。
その運命の日命知らずの少年が森に迷いこんだ。
少年の名は、魔使 十座 (まつか じゅうざ)。
「アリス?」
と呼んだのは、窓のほうを眺めているエリカでした。
「どうしたの?」
椅子に座って本を読んでいたアリスはエリカの方へ振り向きました。
「何かね、人間のにおいがするね」
人間のにおい?首をかしげたアリス
「私のこと?」
「違うよ」
とエリカは否定しました。
「森に迷いこんでるみたいだね。多分人間だよ」
少し無言が続いたあと、よいしょと椅子からたちあがりアリスは口を開きました。
「エリカ。それでどうするの」
「封印を張ってた森の深部に入り込んで来るなんて、ちょっと興味深くもあるけど追い出すしかないね、アリスもわかるだろう。なぜ私たちがここに住んでいるのかを」
するとアリスは残念そうに
「せっかくひさしぶりにエリカ以外とお話できると思ったのに…」
「もしかしたら邪悪かもしれないよ」
ニヤニヤしながら、エリカはそう言った。