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異世界ログイン ── チートでニート ──  作者: よぎそーと


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セーブ7 あらためて色々調べていきます

「さてと」

 しばらく一人になりたい、と言って庭の木陰へと移動し、あらためてステータス画面と向かいあう。

 表示は消えることなくトモヤの目の前にあり、今現在の状態を教えてくれている。

 普段、あまりステータスを見ない方ではあるが、能力値や技能などの名称でだいたいどういう意味かは分かる。

 今回は状況が状況なので、さすがに流し読む事はできない。

 何も知らないというのは、それだけでとんでもない負担を背負い込む事になる。

 なので、説明書の部分を開こうとした。

(これって、指で押せばいいのか?)

 そう思いながら指をのばす。

 が、それより先に目的の部分が光る。

 マウスをそこに重ねたように。

 あれ、と思ってると今度は新しい画面が開く。

 そこには、説明書のものと思われる目次があらわれた。

「…………なるほど」

 どうやら、思ったところに意識をあわせるだけで、マウスによる指定とクリックと同じ事が出来るらしい。

 いちいち指で指定する必要もないようだった。

(便利なもんだ……)

 現実でも実現してもらいたい技術だった。

 そう思っておかしくなる。

(帰れるかどうかも分からないってのに)

 そう思いながら説明書を開いていく。

 とにかく今は情報が必要だった。



 説明書は、各種能力値や技能の説明の他にも、基本的な目的なども掲載されていた。

 ゲームの紹介サイトにおける、粗筋やゲームの進行についての説明とほぼ同じである。

 ゲームのサービス開始までトモヤが見ていた、ゲームのサイトそのままと言ってもよい。

 そのほとんど読み飛ばしてたから、頭には入ってない。

 だいたいゲームの世界背景やその説明など、味付けのようなもの。

 雰囲気を作り出してはくれるが、ゲームを進める上で必要とは思っていなかった。

 今までは。

 こうなってしまうと、何か一つでもいい、そこに貴重な何かが秘められてるのではないかと思っている。

(とにかく、何かが掴めれば)

 そう思って、世界説明や、ゲームとしての粗筋などを眺めていく。



 書かれていた事は、村長が説明してくれた事とほぼ同じだった。

 モンスターがあらわれて、危機に瀕した世界。

 そこにあらわれた勇者達。

 彼らは、この世界にあふれたモンスターを倒して平和を守るためにやってきた。

 また、モンスターがあらわれた原因を突き止めるべく行動していく。

 ────要約すればそれくらいである。

 もとより世界説明の部分は、一画面に収まるほど短くまとめられている。

 これ以上の情報を得る事は困難だった。



 むしろゲームの進め方の方がまだしも役に立つ。

 RPGなので、モンスターと戦い、それを倒して戦利品を得る。

 獲得出来るのは、モンスターにあわせた物品で、だいたいがモンスターの体の一部となる。

 それらが貴重品や稀少品として取引される。

(でも、この村に店なんてあるのか?)

 まだ村の中を探索はしてないが、とてもそんなに繁盛してるとは思えない。

(まあ、この辺りはそのうち聞いてみるか)

 村長とカリンに尋ねれば何か分かるだろうと思った。



 それからは能力値や技能などの説明をざっと見る。

 体力、知力、敏捷に魔力。

 能力値は分かりやすいものが並んでいた。

 ただ、それらの数値がどれほどの意味を持つのかまでは書いてない。

 標準的な数値が幾つなのか、それが分かればどの程度までがんばればいいのかが分かるのだが。

 そこは実際に確かめてみないと分からない事になった。

 現時点でも一般人並みの強さにはなってると思いたかったが。

 また、技能も「どの技能があれば何が出来るか」を大雑把に書いてるに過ぎない。

 技能それぞれについてるレベルがどれだけ上がると何が出来るのかまでは分からない。

 これもまた、実際に試してみるまでは効果は不明となってしまう。

(やってみるしかないのか)

 行き当たりばったりというか、体当たりでの挑戦になりそうで気が滅入る。



 あとは、ステータス画面にある所持品を開く。

 そこには、ナイフや革の上着などの、おそらく初期装備と思えるものが入っていた。

 他にも、回復アイテムのポーションや、状態以上を打ち消す治療薬といった物も入っている。

 実際にトモヤは何一つ手に持ってないので、どうすんだと思ったが。

 それも、並んでる所持品の画像に指を触れた途端に解決した。

 なんと、突然目の前にそれその物があらわれたのだ。

 他の所持品も同じだった。

(凄えな)

 その逆に、道具を所持品欄におさめる事も出来た。

 空いてる箇所に意識を集中して点滅を発生させ、それから納めたい道具に指を触れればいい。

 それで手元から消えて、所持品欄に移動する。

 道具を手で持つ必要がないので、これは便利だった。

 ただ、限界個数と限界重量は決められてるようだった。

 個数の制限に到達してなくても、限界重量にまでなってしまってるならばそれ以上は入れられない。

 その逆も同じで、限界重量にはなってなくても、個数の制限まで道具で埋まってしまっていればもう持ち運べない。

 一応手持ちでもある程度持ち運べるようなので、神経質にならないでも良いようだが。

 ただ、手ぶらでかなりの物を持ち運べるのは大きな利点なので、ここは気をつけておこうと思った。



 そういったゲームとして実際に影響のある部分以外にも変化があった。

 ステータス画面に表示されてる個人情報部分である。

 能力値や技能などと違い、直接影響を与えることのない、いわば雰囲気作りの部分だ。

 そこに表示されていた自分の顔画像なのだが。

「…………あれ?」

 何気なく目を向けておどろいた。

 現実の自分とは似ても似つかない美形になっている。

 ファンタジーにありがたいな、金髪の美男子…………ではなかったが。

 黒髪・黒瞳の東洋系だった。

 それも、柔和な優男ではなく、どちらかというとがっしりとした厳つい感じの方の。

 野性的というか男性的というか。

 ワイルドな方面で格好いい容貌をしていた。

 しかも、実年齢より若い。

 はるかに若い。

 トモヤは現在三十四歳だが、自画像の自分は十年、いやもっと若く見えた。

 せいぜい二十歳を一つ二つ超えたあたり。

 見ようによっては十代の後半あたりにも見えた。

(これ、俺だよな)

 現実のトモヤは、横に体積の増えたオタクではない。

 しかし、ガリガリで縦の細いというオタクのもう一方の標準仕様だった。

 間違っても、こんな肉食系な雰囲気を漂わせる美形ではなかった。

 また、それで気づいたのだが、体型も現実のトモヤとは違っている。

 細身ではあるが程よく筋肉がついている。

 俊敏さに優れた感じがした。

「どう考えても…………」

 それへの率直な感想が口から漏れる。

「俺じゃねえよな、これ」

 ゲームに自分の理想像を当てはめる趣味はない。

 だからここまで自分と差のある現状に違和感しか抱けなかった。



 そして、このステータス画面を一度しめてみた。

 目の前から消え去る。

 半透明で、画面の向こう側も薄く透けて見えてはいた。

 それでも視界を遮っていたものがなくなって周囲がはっきりと見える。

 それを確かめてからもう一度ステータス画面を呼び出そうとする。

(出てこい……出て…………。

 お、出た)

 意外なほど簡単にステータスは出てきた。

 なんだこんな簡単な事だったのかと思ってしまう。

(これなら最初から出しておけばよかった)

 今回、偶然見付けられたから良かったが。

 もし何かの拍子に出てこなかったらどうしようかと思ってしまう。



 そんな事もありつつ、一通り眺めて、最後にそこにたどり着いた。

「さて……」

 見つめる先にあるのは、『ログアウト』の文字。

 今まで見てきた様々な作品では、これが不可能というのが大半だった。

 例外も中にはあるかもしれないが、そういった物を見た事はない。

 自分の場合はどうなのかは、確かめてみるしかない。

 悩んでも仕方ないので、それに指を重ねてみる。



 瞬間、世界が消失した。

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