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異世界ログイン ── チートでニート ──  作者: よぎそーと


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セーブ5 とにかく現状確認を優先する

「さて、どこから話したもんですかな」

 トモヤの前でそう呟いた村長のセルジオは、考え込んでいってるようだった。

 彼にしても、何をどう話せばいいのか悩む所なのだろう。

 他人に説明するのは難しいもの。

 何かを話そうとする時に常にどもっていたトモヤには、それがどれだけ大変かがよく分かる。

「あの、村長さん」

「ん?」

「あの、もし良かったら、ここがどこなのか教えてくれませんか?

 俺、ここがどこなのかも知らないんで」

「おお、そうじゃな」

 トモヤの言葉にセルジオもきっかけを掴めたようだった。

「ここはアスミと呼ばれる国にあるバラキと呼ばれるところ。

 この村は、そこにあるキシマという」

 全く聞いた事もない場所だった。

「ええっと、それは、日本のどこかにある場所ですか?

 それとも他の国なんですか?」

「ううむ…………。

 私もそれほど世界を知ってるわけではないが。

 それでも、ニホンというのは聞いた事がないの。

 どこにある国なのだね?」

「ああ、それは…………そうですね。

 ええっと、世界の東にあって、アジアの中でもずっと東にある島国なんです」

「ふむ。

 そのアジアというのも初耳なのだが」

「それじゃ、ヨーロッパとかアメリカは?

 アフリカは?

 オーストラリアとかは?」

「すまん、全部聞いた事がない」

「そうですか」

 少々落胆はしたが、これではっきりした事がある。

 ここが地球ではないという事が。

 もちろん、他の場所で聞けば別の情報を得られるかもしれない。

 それでも、今分かってる範囲では、ここが別世界だと考えた方が良さそうだった。



「それで、村長さんのお話ってのはいったいどういう事なんですか?」

「ふむ、それなんじゃが。

 これもまた色々とこみいっておっての。

 何をどうやっって、どこから話せばいいのか分からんのじゃ」

「そうですか……」

「うむ。

 脈絡もなく話しても混乱するだけじゃろうし」

 とはいえ、話しあぐねたまま時間が過ぎるのももったいない。

 なのでトモヤは、

「あの、それなら」

と切り出した。

「俺に何をして欲しいのか。

 何をすればいいのかを教えてください」

「ふむ……そうじゃな」

 その言葉に村長はしばし沈黙する。

「うむ、そうじゃな。それをまずお伝えするべきか」

「…………」

「我らは、あなたにこの世界を救ってもらいたいんじゃ」

 いきなり大きな話になった。



「それは、どういう……?」

「そうですな。

 まず、我々は今、常に脅威にさらされてます」

「脅威?」

「ええ。

 怪物、化け物。

 モンスターと呼ばれるもの共によって」

 不謹慎ながら、オカルトか何かかと思った。

 まるっきりゲームだな、とも。

 だが村長の顔は、面白おかしく語ってる様子はない。

 真剣に話してる者特有の緊張感が漂っている。

 それに振れたトモヤは、その口から語られる話を、自然と静かに聞く事となった。



 怪物、化け物、モンスター。

 呼び名は様々であるが、脅威と呼ばれる存在を指し示す言葉であるのは同じだ。

 それらが、いつ、どこから、どうやってこの世界にあらわれたのかは分からない。

 理由はどうあれ、それらがいる事で人々の生存圏は縮小を迫られた。

 襲いかかるモンスターと戦いは、防衛が可能な都市圏を含めたごく一部に限られた。

 兵力を送り込める限界。

 その範囲に人々は閉じ込められる事になる。

 自然と生産力も物資の行き来も制限され、人々の生活は徐々に衰退していった。

 この状況がかれこれ五百年ほど続いている。



「なのですがね。

 つい先日、カリンが夢を見たというんです」

 この村は、すぐ裏にある丘にある石柱を祀っているという。

 それがいつからあるのか、何のためのものなのかも伝わってない。

 ただ、そこにある者を先祖代々大切にしてきていた。

 やる事と言えば、石柱の清掃と、そこで祈りをしたり祭りを行ったり、という程度だったが。

 その日もカリンはいつものお勤めとして、石柱の掃除をしていた。

 石柱を拭き、雑草を刈るといったいつもの事をこなし、最後に石柱に向かって祈る。

 効果や御利益があるのかも分からぬまま続けられる日々の勤めのままに。

 ただ、その日はいつもと違った。

 唐突に意識が遠のいていった。

 何が、と思う間もなく頭に様々な場面が映し出されていく。

 それらは全て断片的なもので、連続性も何もあったものではなかった。

 それでも、意味する所は一つ。



 映し出されていた全ての者達がモンスターと戦っていた。



 もちろん、個別の場面における意味は分からない。

 どういった経緯で、何のために戦っているのかは。

 それでも彼らはモンスターと戦い、撃退していった。



「カリンが見たのはそんなものだったそうです」

 話しを続けるセルジオ村長の言葉を、トモヤはただ聞いていた。

「何より印象的だったのは────」



 ────そんな彼らは、石柱から次々とあらわれてくる。



「その一点だったというのです」

「…………」

「まあ、本当かどうかはわかりません。

 それはカリンだけが見たものですから。

 ですが、こうしてあなたは現れた。

 あの石柱の所に」

 だからと言って、モンスターと戦えと言われても困ってしまう。

 トモヤは、そういった運動系は苦手である。

 ましてモンスターと戦うなど無理だと思えた。

「まあ、私らとしても無理強いをする事はできません」

 戸惑いや逡巡を見て取ったのか、村長はそう言う。

「ですが、助けていただけるならありがたい。

 考えていただけるだけでも」

 それだけ切羽詰まってるのだろう。

 どうにかしてあげたいという気持ちにはなる。

 ただ、能力や技術が伴わないのだから、何かが出来るわけもない。

 何よりも度胸が。

 それがあれば、家にこもらず色々とやっていただろう。

 家にいながらにして、出来る事をやっていっただろう。

 ここでこうして村長と会話をしてるというだけでも奇跡である。

(どうしろってんだよ、いったい)

 誰にともなく、胸の中で愚痴った。

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