セーブ2 登録完了、では始めよう
意外と言ってはなんだが、そこからの登録内容は結構多かった。
たいていのゲームは、メールアドレスとパスワードを登録すれば終わる。
それ以外の手間はかからない変わりに、設定などは全くいじれないのが普通だった。
そこまで作り込まれたものはさほど多くはない。
また、それほど手間のかかる事をする必要もない。
多くが手軽に遊べる事が売りでもあるのだから。
しかし、このゲームでは、主人公の容姿などをある程度決められる。
また、割と本格的に作ってるらしく、主人公の能力や技能も設定出来るようになっている。
「ふーん、技能制なんだ」
誰もいないのに声を出してしまう。
一人暮らしというか、一人でいるのが長いと、なぜか独り言が多くなる。
誰が答えるでもない呟きを、トモヤは時折漏らしながらマウスをクリックしていった。
キャラクター作成は、目の前にある登録画面と向かいあいながらすすんでいく。
ここでの決定が今後に影響すると思うと慎重になる。
なのだが、これから始まるゲームだ。
攻略方法や、何が有利なのかの情報もない。
どんな能力値とどんな技能の組み合わせが有効なのか全く分からない。
用意されてる能力値も技能も、他のゲームでもよく見るものばかりなので、だいたいどんなものなのかは想像がつくが。
「ま、無難に平均的にしておくか」
悩みつつもそうする事にした。
どれか一つの方向に偏らせておけば、その方面では強くなれるだろう。
けど、それだと汎用性がなくなる。
このゲームで何が求められるか分からないが、ある程度無難にこなせるようにしておいた方がいいだろう。
技能も、戦闘と探索関係の技能を幅広く、そして浅くとっていく。
魔法関係はさすがに無理みたいだが、知識関係の技能もとった。
これがどれだけゲームに影響するのか分からないが、まあ、ある程度の事には対処出来るだろう。
もっとも、こういった細かな設定が必要なほどシステムが出来てるのか分からないが。
(ただの雰囲気作りだったりして)
実際にはほとんど必要がないかもしれない。
そこまで作り込んでないかもしれない。
そんな心配もしてしまう。
「ま、いっか。気にしても仕方ないし」
所詮はゲームだ、と気楽に考える事にした。
自分の疑問に自分で突っ込みいれて迷いや悩みを止める。
思考停止かもしれないが、確認しようのない疑問にいつまでも足止めをくらってられない。
「これはこれでどうにかなるだろ。
誰もいない家で、部屋にこもって一人で声を出している。
そんな自分の声に、一瞬我にかえる。
「うーん、もしかして…………やばくないか、俺」
やたらと独り言を発してる自分。
その声に、なんとなく違和感をいだいてしまった。
なんで今更こんな事を考えるのか分からないが。
今までだって、こんな調子だったはずなのに、どうしておかしいと思うのか。
「…………ま、いいか」
まあ、気にしてても仕方ない、と自分に言い聞かせる。。
さっさとゲームを始める事にして画面に目を向ける。
マウスでクリックして先へと進んだ。
とはいえ、あとは特に何かがあるというわけではなかった。
設定したキャラクターの確認画面。
あらわれたのはそれだった。
「これでいいですか?」というお決まりの言葉に「はい」をクリックして先に進む。
後は、サーバーに接続してゲームが始まるのを待つばかりだった。
まあ、初日とはいえ、朝の五時だ。
他に起きてる暇な人間はそれほど多くもないようで、接続はあっさりと終わる。
これが人気ゲームだと、数分待つことも珍しくないが。
特別話題になる要素もなかったせいか、初日の参加者はそれほど多くはないみたいだった。
画面が切り替わり、文字が現れる。
『新天地への転移を開始します。
しばらくおまちください』
ちょっとだけ凝った言い回しが、ゲームの開始をもりあげようとする。
やり過ぎれば鬱陶しいが、サーバーに接続します、よりは演出的ではある。
そういう所にトモヤは少しばかり好感を抱いた。
その待ち時間も終わり、待機画面が消える。
画面の中に門の画像があらわれ、それがゆっくりと開いていく。
その奥から光があふれ、目をふさいでいく。
「…………え?」
演出効果としてもやりすぎではないか、と思う光量に目を閉じた。
ようやく目を開けたトモヤの目には、見知らぬ場所が飛び込んできた。




