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異世界ログイン ── チートでニート ──  作者: よぎそーと


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セーブ14 金をかけるところを考えます

 部屋に戻ってパソコンを眺める。

 新しい情報がないかを探り、現在のステータスを確認。

 今のところ攻略情報サイトも、運営が設置した掲示板にも有益そうな情報はない。

 参加者同士での交流もほとんどない。

(まあ、こんなもんか)

 参加人数がどれほどなのかによるが、さすがに一日二日でそれほど先に進んでる者はいない。

 運営からのメッセージもなく、トモヤは現時点でこれ以上の情報収集を諦めるしかなかった。

「まあ、メシの問題はとりあえず無くなったか」

 水道光熱費などはまだ残ってるし、固定資産税もある。

 それでも、出費の一部がなくなったのはありがたかった。

(けど、このままじゃ効率が悪いよな)

 今の能力やレベルでも、ネズミくらいならそれほど苦労はしない。

 だが、もっと稼ごうと思ったら今より強くなくてはどうしようもない。

 この先、村から更に外へと向かうならなおさらだった。

 そうなると、どうしても考えてしまうものがある。

(これはさすがにどうなんだろ……)

 見つめる先には、課金アイテムの数々が並んでいた。



 悩む所だった。

 こういったものには手を出すつもりがなかった。

 手元の金でやりくりしなくてはならない以上、こういった出費は極力控えねばならない。

 しかし、今は状況が違う。

「これ使って底上げができればもうちょっと楽になるかな」

 何はともあれ食費は浮いている。

 その分を投入しても当面は問題ない。

 もちろん、使わないで取っておくのが一番である。

(けどなあ……)

 もしこれを使う事で、更に効率をあげる事が出来たなら。

 無駄な出費ではなく、より大きな見返りとなる。

 モンスターを倒すことと引き替えに食事にありつけるだけでも、出費はかなりおさえられる。

 今、外で食べてるので食費がどうしても高くなってしまう。

 毎月五万円~七万円を消費している。

 それが無くなるならば、決して小さくはない。

 課金アイテムも、一個五百円~千円程度なので、差し引けばこれらを用いる方が安くつく。

 とりあず昨日今日の食費分がだいたい千五百円ほどであろうか。

 課金アイテム二つは買える。

 そのためにはウェブマネーのカネールを買わねばならない。

 手間はかかる。

 家から外に出てコンビニまで行かねばならない。

 金を使うという事もそうだが、家から出るという事がトモヤには苦痛である。

 それをおしてでも手に入れる価値があるのかどうか。



 悩みに悩んで。

 結局深夜になってトモヤはコンビニへと向かっていった。



 翌日。

「おはようございま…………なんか眠そうですね」

 勝手口を開いて入ったトモヤにカリンはそう言った。

 実際眠い。

 日付が変わる前後の時間にコンビニに行き、ウェブマネーを購入してきたのだから。

 特に店員の前に立つのはきつかった。

 カネールの商品券をレジに持って行くだけだったのだが。

 二十年に及ぶ引きこもり生活は、対人スキルのほとんどを消失させていた。

 そんなトモヤにとって、他の誰かと接するのは苦痛にしかならない。

 行きと帰りが歩きだったのもきつかった。

 自転車にのる能力は、やはり二十年に及ぶ室内生活でほぼ失われていた。

 運動不足の極みであるガリガリ体型にとって、歩いて十五分のコンビニまでの移動はなみなみならぬ労力となる。

 自然、心身共にすり減るというもの。

 それらをただ一言、

「ま、色々あってね」

で済ませた。

「はあ、そうなんですか」

 釈然としないカリンの声をききつつも、

「今日もごちそうになっていいのかな?」

と尋ねた。

 カリンはほほえみながら、

「もちろんですよ」

と応えてくれた。

 ありがとうと言って食卓に向かう。

 昨日と同じように村長がそこに座っていた。



 ただ、無理矢理にでも外に出て、店員相手とはいえ人と接して分かった事もある。

 確かに苦痛ではあった。

 話す必要はないが、相手の前に立つのもつらい。

 目を合わせる事すらできないのだから。

 それでも、以前ほどではない。

 ゲーム世界と同じようにとまではいかないが、以前ほど抵抗はない。

 歩くにしても前を向いていける。

 それだけでも大きな違いだった。

(ゲームに影響されてるのかな)

 声高に悪影響を叫ぶ声もあるが、トモヤにとってそれは全く逆の結果をもたらしてるように思えた。

 とりあず村長やカリンと食卓を囲んでいる。

 そんな事がトモヤの何かを好転させてるように思えた。

 村の外に出てモンスターと戦う。

 それが何かに立ち向かっていく度胸になってるかもしれなかった。



 食事を終えて村の外へ。

 昨日言った場所へと向かっていく。

 蔓延ってるネズミはそれなりに駆逐したつもりだったが、その後どうなったかを確かめておきたかった。

 ゲームだと、時間が経てば復活する。

 現実のようなこの場所ではどうなってるのか分からないが、同じようにまた復活してる可能性もあった。

 それを調べておかないと、いくら退治しても意味がない。

(いなけりゃいいけど)

 願望を基準に考えてはいけないと思いつつも、どうか何もいませんようにと願った。



 幸いな事に、田畑やその周辺にモンスターの姿は見えなかった。

 ゲームのように特定の地点に自動的に発生するというわけではないようだった。

 それでも完全に駆逐したわけではないので、少し(と言っても数百メートル)離れた所に姿が見える。

 それらは、注意をしつつも田畑の方へと進んできているようだった。

 モンスターなりに警戒しているのかもしれない。

 それでいて、空白地帯となった場所を手に入れようとしてるようにも見える。

 犬や猫でも縄張りがあるようだし、モンスターにそれがあってもおかしくはない。

 今までこの辺りにいた連中が消えたのだから、そこに進出してこようというつもりかもしれなかった。

 モンスターそのものが消滅しないかぎり、こんな事がずっと続くのかもしれない。

 倒しても倒しても、次のモンスターがやってくる。

 時間が経てばまた元通りになってしまう。

 田畑から一時的にモンスターを排除しても、そのうち元に戻ってしまう。

 だからこそ、定期的な駆除が必要なのだろう。

 ここで生活してる者達にとってはたまったものではないだろう。

 トモヤにとっては、財源が消えないという意味にもなるが。



(さてと)

 そのモンスターを相手にする前に、ステータス画面の所持品欄を展開する。

 確かにそこには、課金アイテムがあった。

『経験値増大のお守り』という身も蓋もない名前の物が。

 まだサービス開始直後のためか、こういったアイテムも種類がそれほど多くはない。

 それでも、定番中の定番アイテムとして、こういう物は存在していた。

 効果は名前通りで、使えば入手出来る経験値が増大するというもの。

 それを所持品欄から取り出して、手元に出現させる。

 装着する事で一日の間、得られる経験値が二倍になるという。

 おまけに、累積効果もあって、二つ使えば四倍、三つ使えば六倍の経験値を一気に得られる。

 時間をかける気は無かったので、トモヤは購入した二つのお守りをすぐに用いる。

 使い方は簡単で、商事品欄から取り出すとすぐに、

『物品の効果を使いますか?』

というメッセージが出て来る。

 あとは『はい』『いいえ』のどちらかを選ぶだけだった。

 迷わず『はい』を選ぶ。

 すると、ステータス画面に、『特殊アイテム効果 経験値上昇』というものがあらわれる。

 そこに、残り使用時間も表示される。

 使ったお守りの分だけ表示されるようで、今は二つが記載されている。

 これがゼロになるまで、効果は得られるはずだった。

「そんじゃ、やりますか」

 モンスターに投げつけるための小石をもって進んでいく。

 怪我には注意しないといけないが、今日は出来るかぎり戦闘に専念する事にした。



 昼。

 あらかじめ頼んでおいた通り、カリンがバスケットを持ってトモヤの所へとやってくる。

「お疲れさまー」

 大きな声でトモヤに呼びかけるカリンに、トモヤも手を振って応える。

 ネズミを求めてあちこち動いていたが、それでも村から必要以上に離れないように注意はしていた。

 おかげでカリンの到着にも気づく事が出来た。

「ありがとう、助かるよ」

「いえいえ。

 モンスターを相手にしてくれてるんだからこれくらいは」

 言いながら敷物を草むらにひろげ、バスケットを置く。

 カリンが肩にかけてきた水瓶も。

 水筒が無いので、この世界では水瓶などを用いるらしい。

 水が浸透しない動物の皮を用いた水袋もあるらしいが、それらは長距離旅行をする者が用いるものだという。

 村で生活をしてる者達には不要なので、それらは無いらしい。

 そんな事を思い出しながら水を飲み込む。

 朝からずっと動き放しだったので喉が渇いていた。

 コップに注ぐのももどかしく、水をどんどん煽っていく。

「そんなに慌てないでくださいよ」

 バスケットから取り出したサンドイッチを差し出すカリンが面白そうに言う。

 とてもそんな事を聞いてる余裕はなかった。

「ごめん、喉渇いてるし、腹減ってんだ」

 言うが早いか、カリンの出してくれたサンドイッチを受け取ってすぐに口に放り込む。

「うめっ、うめっ、うめえ!」

 肉と野菜を挟み込んだだけだが、具材のうまさと、挟んでるパンに染みこんだ具材の汁などがうまくあわさっていた。

 渡された物だけでは足りず、

「もっとない?」

と聞いてしまう。

「安心してください。

 そういうと思って、多めに作ってきましたから」

 すばらしい判断である。

 そんなカリンが取り出すサンドイッチを次々に口にしながら、トモヤは失った体力を補充していった。



「食ったー」

 食事を終え、敷物の上に横になる。

 腹が膨れて動けないというわけではないが、食べた直後なので少し横になっておきたかった。

 あと、ステータス画面の確認も。

 アイテムを使った事で経験値がどれだけ入ったかを確かめておきたかった。

 そちらの方は、確かに今までの四倍ほどの早さで増加していた。

 倒した数も昨日よりは多めであるが、それを踏まえても上昇幅が凄い事になっている。

 それでもレベルアップに必要な経験値にはまだ到達していない。

(まだまだ先か)

 寝転びながら考える。

 アイテムを使ってもまだまだ経験値は足りない。

 使えばあと数日で必要な経験値を得る事はできる。

 言い換えると、課金アイテムを使わなければその四倍の時間が必要という事になる。

 早急にレベルアップする必要はないかもしれないが、それでもある程度早くレベルを上昇させておきたかった。

 この付近のモンスターを、もう少し簡単に倒せるようにはなっておきたい。

 レベルアップによる向上がどれほどかも確かめたい。

 知っておけばレベルの価値も分かる。

(とりあえず、レベルアップまでは課金アイテムを買うか)

 金がかかると言っても、一個五百円である。

 二個買っても千円。

 それほど負担でもない。

 食費が全くかからない今なら、負担は少ない。

 むしろ、食費がそのまま課金アイテムに替わったと考える事にする。

(やってみっか)

 午後への意欲を燃やす。



 カリンが帰ってから再びネズミ退治へと赴いていく。

 経験値も金も、ついでにドロップアイテムを手に入れるために。

 投げつける石と、右手のナイフでひたすらにネズミを倒していく。

 もっと効率よく出来ればと思うが、そのための方法を思いつかない。

 とりあずナイフではなく、もっとしっかりした武器は欲しいところだった。

 ナイフでは刃渡りが短いので攻撃しにくい。

 それに、どうしても威力に欠ける。

 突き刺す事ができればいいのだが、動き回る相手にそれは困難だった。

 刃渡りは二十センチはあるのだが、ネズミ相手ではちょっときつい。

 出来ればもっと大きな武器が欲しかった。

 それも行商人が来た時に買えればと思いながら、ネズミと相対し続ける。

 日の入りが近づくまでそれは続いた。



「今日もお疲れ様です」

 村に戻り、村長宅に挨拶に出向いたトモヤに、村長は頭を下げて出迎えた。

 既に帰宅していた村長の息子夫婦や孫達もトモヤを出迎える。

 話は村長から聞いていたようで、トモヤには好意的な態度を示してくれた。

 そのままトモヤを食卓に招き、夕飯の同席を求めてくる程に。

 断る理由もないので食事を共にさせてもらった。

 カリンだけでなく、奥さんによる料理もあわせて、なかなか豪勢なものとなった。

「本当に助かってますよ」

「すいませんね、一人でやらせてしまって」

「お兄ちゃん、今度モンスターとの戦い方教えて」

 そんな言葉に照れながら、食事は進んでいった。

 終わってからも談笑が続き、トモヤの帰宅は存外遅くなってしまった。



 ログアウトしてからトモヤは、急いでコンビニへと向かっていった。

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