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異世界ログイン ── チートでニート ──  作者: よぎそーと


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セーブ13 もしかしなくても、生まれて初めてのお仕事です

 一面に拡がる田畑を横に、モンスターが出て来る辺りまで移動する。

 昨日倒した事もあってか、田畑にはほとんど姿が見えなくなっている。

 それでも、ちょっと離れた所をうろつくネズミの姿が幾つか見えた。

 道すがら拾ってきた小石を、そんなネズミに投げつけてみる。

「これで突っ込んで来てくりゃいいけど…………」

 見つけるのも手間だし、こちらから接近するのも面倒だった。

 大したダメージは与えられなくても、これで向こうから移動してきてくれれば多少は楽になる。

 ありがたい事に、モンスターの方もやる気を出してくれたみたいで、トモヤに向かって突進してくる。

 このあたりはゲームみたいだなと思いつつ、右手にもったナイフを構える。

 とりあえず、この一匹を倒して体の動きを確認していこうと思った。



 朝から始まったネズミ退治は、休みを入れつつ進んでいった。

 体を動かすだけでなく、戦うという事もあって結構つかれる。

 ほとんどダメージを受けないのは昨日と同じだったが、疲労の方はそうはいかない。

 三十分も動けばかなり息が荒くなってしまう。

 怪我はさけられない、命に関わる戦いは、やはり相当なストレスになってしまう。

 それでも着実に倒した数を重ね、田畑の知覚からネズミを消していく。

 昼飯にありつくために一旦手を休める頃には、二百匹は倒していた。



「なんと!」

 その報告を聞いた村長は、食べていた昼飯を止めて呆然としている。

「まさか、それ程やってくれるとは」

「いや、それでも全然おいついてないですよ。

 あいつらそこらにいますから」

 実際、それほど大した事をしたつもりにはなれなかった。

 疲れはするが、スタート地点にいる最弱モンスターと思しきネズミである。

 手間はかかるが、それほど強くもない。

 数の多さが面倒ではあるが、脅威と言えるほどでもない。

 一斉に襲いかかってきたら大変な事になるが、一匹ずつ相手にすればどうにかなる。

 それでも村長とカリンには衝撃が大きかったのか、呆然とした顔をしている。

「しかし…………疑って申し訳ないですが、さすがに信じられませんな。

 いや、大したものですが」

 その村長の言葉も仕方ないと思ってしまう。

 おそらく、午前中でこの数というのは結構なものなのだろう。

 変な疑いをかけらるのもなんなので、ステータス画面を開いて所持品欄に放り込んでいたネズミの前歯を取り出す。

 あわせて三十個ほどのそれを、手にとって見せてみた。

「証拠になるか分からないですけど、戦利品の一部です」

 掌の上にある、通常のネズミよりはるかに大きな前歯の数々。

 それを見て村長は更に呆気にとられた顔になっていく。

「いやはや…………。

 これは疑う余地もないですな」

「本当に、やってきちゃったんだ」

 カリンもようやくそんな言葉を口にする。

 衝撃が大きすぎたのか、今まで何も言えなかったようである。

「まあ、無理はできないので、これ以上は期待しないもらいたいですけどね」

 念のためにそう言っておく。

 無理して死んでしまっては元も子もない。

 この世界で死んだらどうなるのかも分からないが。

(どこかで生き返るのかな。

 それとも、そのまま死ぬのか?)

 確かめようもない事だった。

 これがゲームなら気にする必要もないのだが。

「午後も、出来るだけはしますよ」

 そう言って前歯をしまって料理に手を伸ばす。

 空きっ腹を抱えて料理を目の前にしてるのである。

 これ以上我慢はできなかった。



 食事も一通り終わり。

「食った……」

 朝より多めに作ってくれた料理を平らげ、椅子の背もたれに身をまかせる。

 空腹に急かされて食ったせいか、さすがにすぐに動く事ができない。

「まあ、ゆっくりしてください」

「お水、持ってきますね」

 二人の気遣いを受け入れて、しばらくそのままでいる事にする。

 田畑の近くにいたモンスターはそれなり片付けている。

 そのうちまた新しいのがやってくるだろうが、すぐに元に戻るほどではないと思えた。

 前におかれたコップを手に取り、水を喉に流し込んでいく。

 水分を意外なほど消費していたのか、体に染みいっていくような感じがした。

 そのまま暫くボケッとしてようと思った。

 が、すぐにとある事を思い出す。

「そうだ、村長さん」

「なんでしょう?」

「この前歯を売り払いたいんですけど。

 それが出来る所ってこの近くにありますか?」

 前歯のまま持っていても何の役にも立たない。

 基本、売却して金にするものらしいので、さっさと売り払っておきたかった。

 ただ、この村には店がない。

 売り払おうにもそれも出来ないでいた。

「それなら、行商人が来るのは待つしかないですね。

 一ヶ月に一回ほどやってきますから」

「そうですか。

 そうなると、次はいつになります?」

「だいたい半月ほど先になるかと。

 この前来たのも、やはり半月ほど前だったので」

 おおよそ二週間ほど先という事なのだろう。

 時間はかかるが、それまでは待つしかない。

 あらためて、ここがほとんど何も無い場所なのだと実感する。

(もうちょっと発展してくれたらな)

 そう思うも、どうにかできる事ではない。

 今はその時が来るのは待つしかなかった。



 午後も田畑の近くにいたネズミを倒して稼いでいった。

 陽が落ちる直線まで倒しまくり、周辺からネズミを一掃。

 倒した数はおそらく五百ほどにはなったはずだった。

 所持金は昨日から増加し二千以上になっている。

 前歯の数も五十に近い。

 その成果に村長とカリンは度肝を抜かれていた。

 それを見るに、どうも自分の能力は一般人より高いのかもしれないと思い始める。

 プレイヤーキャラクターと、ノンプレイヤーキャラクターの違いがこういう所に出てるのかもしれない。

 そんな二人に「また明日来る」と言って現実に帰還。

 疲れも一緒に持ち帰ってしまったが、同時に達成感も抱く事ができた。

 気持ちよく風呂に入る事ができた。


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