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異世界ログイン ── チートでニート ──  作者: よぎそーと


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11/14

セーブ11 食べて、戻って、確かめて

「ごちそうさま」

 そう言って手を合わせる。

「美味しかったよ」

「良かった~」

 カリンは嬉しそうに笑顔を浮かべる。

「がんばった甲斐があったわ」

「おかげで私もご相伴にあずかれましたわい」

 相席していた村長も満足そうである。



 あの後、

「でも、モンスター退治をしてくれるなら村長さんに言っておいた方がいいかも」

というカリンの言葉に従い村長宅に。

 村長もトモヤがご飯だけでモンスター退治をしてくれるという話を聞いて仰天。

「本当ですか!」

とそれはそれは大きな声で確認してきたくらいである。

 そんなに嬉しいのか、と思ってしまった。

 とりあえず数日という事で話しはまとまり、

「それならご飯を今から作ってもらってはどうですかな」

と言いだしてきた。

 この世界の料理がどんなものなのか興味があったので、ありがたくいただく事にした。

「それじゃ、私が作ってきます」

 そう言ってカリンが村長宅の厨房へと向かっていく。

 なんでも、村長宅で使用人のような事をしてるとか。

 それほど余裕のある村ではないが、手が空く者は出てきてしまう。

 そんな者が、村長宅にて手伝いをするのは昔からのならわしなのだとか。

 今はカリンがそんな役目を負っている。

 いわゆるメイドのようなものなのだろう。

 思わずそんな姿のカリンを想像してしまった。

(そういや、メイド喫茶とか行った事ないな)

 存在は知ってるが、外に出る機会が無い。

 そこを通り越して、まさか本物のメイドに会うことになるとは思わなかった。

 もっとも、いわゆるメイド服といったものを身につけてるわけではないが。



 出てきた料理はなかなかに美味しく、腹いっぱい食べる事ができた。

 味付けがどうこうというより、素材自体の美味しさを感じた。

 産地直送どころか産地密着である。

 すぐそこにある物を食べられるのだから、鮮度は抜群だった。

「これが食えるなら、モンスター退治もがんばれますよ」

「そうですか、そうですか」

 村長は満足気に頷く。

 カリンも、

「ありがとうございます!」

と頭を下げてくる。

 その言葉だけでもがんばれそうな気がしてきた。

 そもそも、誰かに感謝されるなんて、生まれて初めての経験だった。

 忘れてるだけで今までにもあったのかもしれないが、いずれにしても遠い昔の事である。

(人に感謝されるっていいなあ……)

 思わず涙がにじみそうになってきた。

(がんばろう……)

 明日から本気出す────。

 決して言い訳ではない。

 紛う事なき本音でそう思った。



 とはいえ一旦は現実戻ろうと思った。

 こちらの世界にでどれだけ過ごせるか分からなかったし、他人の家にお邪魔するのも気が引けた。

 ネットで更なる情報が集まるかもしれなかった。

 それらを考慮して、とりあえず一度は自分の世界に戻る事にする。

「それじゃまた明日」

「ええ、お願いします」

「トモヤさん、また明日」

 そう挨拶をしてからログアウト。

 視界が一度真っ黒に染まり、それから見慣れた自分の部屋がうつっていく。



 目の前のパソコン。

 乱雑な部屋。

 いつもの自室。

 戻ってきた事を確かめ、大きく息を吐く。

「…………疲れた」

 ゲーム世界に行ってモンスターと戦った事で疲労になってるようだった。

 体も顔つきも、はっきりとは分からないが年齢も今のトモヤとは違う。

 しかし、そういった事はゲームから現実に引き継がれるようだった。

 その逆に現実からゲーム世界に引き継がれるもののあるかもしれない。

 とりあえず、日本語やこの世界で得た情報などは持ち込める。

(物とかも持って行けるのかな)

 そう思うが、それについては無理そうだなとすぐに思った。

 もし持って行けるなら、身につけてる服などが転送されてるはずである。

 しかし向こうでは向こうの標準的な服を身につけていた。

 試したわけではないが、おそらく他の物も無理だろうとは思う。

(ま、また今度行くときにでも試してみるか)

 そう思いつつ腹に手を置く。

 持ち込む事も持って帰る事も無理ではるようだが、知識や情報と同じく腹に収めたものも別扱いのようだった。

 満腹感をまだおぼえている。

(美味かったな…………)

 久しぶりに食べた手料理であった。

 思えば、母親の料理を食べられなくなってそれなりに経っている。

 気にしてないというわけではなかったが、あらためて落差を感じてしまった。

 インスタントや作り置きの弁当と、誰かが作った物の。

 急激に寂しさをおぼえ、満足感からは遙かに遠いため息を吐く。



 そんな落胆気分も解消できぬままパソコンに向かう。

 何かしら新しい情報がないかと探ろうと思った。

 一度戻った時にそれなりに調べてはみたが、芳しい情報は出て来てなかった。

 だが、それから更に時間が経っている。

 新しい情報がどこかに出てるかも、と思ってネットを巡ってみようと思った。

(ついでに、掲示板にでも何か書いておくか)

 ゲーム運営が用意したサイトのサービスである掲示板。

 そこに適当な事を書いて反応を見たいと思った。

 さすがに「ゲームの中に入れたよ」と書くつもりはない。

 当たり障りのない情報を書き込んでいって、それに食いつく奴が出るかどうかを見ようという程度だ。

 その他、利用者の多い掲示板やゲーム攻略サイト、様々なSNSなどを巡回しようと考えてもいる。

 しかし、それよりも先に目の前の画面に目が釘付けになった。

「…………お知らせ?」

 開いたままのゲームの画面の端に、運営からのお知らせを知らせるマークが表示されている。

 普段なら大して気にもせずに放置するのだが、今日はすぐにマウスでクリックした。

 どうせ取るに足らない情報であろうとは思う。

 それでも、もしかしたら向こう側に行くことに関連した情報が得られるかも…………という期待があった。


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