悪夢の始まり
「恭ちゃん~。ねぇ起きてよ」
僕は栞の声に起こされた。身体中が汗ばんでいる。
「今何時」
頭の中がジンジンと痛い。栞は怪訝そうな顔で僕の方をみている。
「恭ちゃん、だいぶ、うなされてたよ」
「親父?親父は」
栞は訳が分からないという表情を浮かべている。
「恭ちゃん変な夢でも見たんだよ。」
僕は起き上がろうと手をついた。そしてすぐに異変に気付く。見慣れない床がそこにはあった。
「栞ここ何処だ。」
「ウフフ…。恭ちゃんここは家の納屋だよ。」
(なんでだ。)僕はまだ状況が理解できない。
栞は不適な笑みを浮かべている。
「やっと恭ちゃんと二人きりになれたよ。」
「栞何処だ。なんでこんなところに居るんだ。」
僕は栞の手を掴もうとしたとき金属音が辺りに鳴り響いた。
(くっ、鎖?)
僕の両手、両足には鎖で逃げられないようぐるぐる巻きになっている。
「栞」
栞が僕の言葉を遮った。
「うるさいー。恭ちゃんは何もわかってないよ。私、恭ちゃんのこと世界で一番愛してるよ。だからこれからは私が管理してあげるの。」
(うざけるな、これじゃ奴隷じゃないか。)
「栞、取り合えずこの鎖を外してくれないか。」
「私のこと世界で一番愛してるよって言って。」
栞は今まで見たことのない表情を見せる。まるで敵を前にした野犬のようだ。
僕は声を絞り出す。
「愛してるよ。栞。」
栞は不満そうな表情を浮かべている。
「恭ちゃんもっと心を込めて。」
無意識に右手が震えている。
「栞、お前のことが世界で一番愛してる。」
さっきまで不満そうな顔の栞が笑顔を見せる。
「うん、外してあげる。ちょっと待って…。」
栞はそう言うと部屋を出ていった。
あれから何時間たったろうか。もう辺りは暗い。小窓から月明かりが射し込んでいる。
「恭ちゃんお待たせ。じゃジャーン。ビーフカレーだよ。」
栞はハイテンションで僕に話しかけた。僕は返す言葉がない。
「恭ちゃん鎖を外すね。」
栞はそう言う手足の鎖を外す。
黙っている僕に栞が話しかける。
「恭ちゃん、カレー食べてくれないの。」
栞はそう言うと僕の両手を羽交い締めにし、僕の目の前がぼやけた。
(アルコール臭い。)
僕は気を失って倒れこんだ。




