記念日
恋愛小説。
「早く起きなさいよ。」
俺は、栞に叩き起こされた。
「ちょっと待ってよ。今起きるから。」
「あんた、いつまで待たせんのよ。今日はデートの約束でしょ。」
栞は僕の顔を見つめながら、目には涙を浮かべている。僕のはそんな栞の表情を見て胸を締め付けられた。
「ごめん、今起きるから」
僕はおもむろにベッドの横に脱ぎ捨てられたジーパンとTシャツを着る。
僕はふといつも思う。なんでこんなにだらしない俺を栞は好きでいてくれるのだろうかと。
「今日は俺が飯奢るからさ。それで機嫌直してくれないか。」
俺は手のひらを2つあわせて祈りを捧げる。
「そんなの当たり前に決まっているわよ。かわいい彼女を1時間も待たせたんだから。次、約束破ったら殴るわよ。」
「はいはい、わかました。」
確かに栞、かわいい彼女だ。粒羅な瞳、スタイルもなかなかたいしたものだ。唯一欠点と言えば、この凶暴さだろう。
栞の実家は先祖代々伝わる合気道の名門で、栞はそこの師範代をつとめている。
「ところで、栞。今日遊園地で、いいのかよ。お前、水族館が行きたいって言ってなかったか。」
栞は眼を見開いて僕を見つめる。
「えっ」
「あんたに、他人を思いやる気持ちが残されていたなんて知らなかったわ。」
(おいおい、俺は悪魔の生まれ代わりですか。)
「当たり前だろ、今日は俺と栞が付き合って3ヶ月記念日だろうが。寝坊したけどな。」
栞は太陽みたいな笑顔で僕を見つめる。
「早く行こ。なんか恭ちゃんがそんなこと言ってくれるなんて思わなかったからさ。嬉しい。」
俺と栞は駅に向かった。




