Meのエドロポリス日記 第2話「In 日本」
僕の長い長い旅が始まった。
タクシーや空港では別にウエスタンシティの御曹司がいても怪しまれなかった。計算どおりだ。何せまだダディーは夢の中で、息子が家出してるなんて思いもしないだろう。そのダディーから情報が入ってないから、皆僕がプライベートでバカンスに行くものと思い込んでる。行った先の日本でどうするかって?大丈夫、日本にはまだウエスタンシティの波はそんなに来てない。だから日本を選んだんだ。
飛行機に搭乗した。さあ、新天地へいよいよ踏み出すのかと思うと、ボーっとしながらも、心のどこかでワクワクしてた。そしてワクワクはいつしかウトウトへと変わり・・・。
僕は搭乗してる人のひそひそ声で目が覚めた。ものすごく多くの目線を感じる。何でだろう。
すると、あろ男の人がツカツカとこちらへやって来た。なりからして、パイロット級の人?
「君が株式会社ウエスタンシティの社長、ゴルゴンゾーラ様のご子息、ブライアン君・・・だね?」
その人が僕に確かめた。僕は満更でもない顔で「はい」と答えた。だから何だというのか。
「実はお父様から電報が入っててねぇ。」
『お父様』という単語が聞こえた瞬間、僕はいきなり氷水の湯船に浸からされたように目が覚めた。まずい、感づかれた。
「いやいや、お父様の図星だったようだね。・・・まあ、大丈夫、君のお父様は君をウエスタンシティに戻せと我々に要求している訳ではない・・・。」
心なしか、男の人の薄い唇が意地悪くめくれ上がったような気がした。それに何でこの人、俺の心が読めんだよ。・・・まさか・・・!!この人は・・・。
「・・・君は判りやすいね。思ったことがすぐに顔に出る。まあ、さしずめそんなとこだ。君は君の会社がどれだけ大きな力を持ってるか本当に知っているのか。・・・まあ、無駄話はいい。お父様の要求だが
君がウエスタンシティからくすねた10000ドル、それと君の所持金を、今、ここで、返してもらう。」
「な・・・、どうして僕のお金まで?!」
「あの人は子供の財産も我が財産と思われてる。無駄な抵抗はよせ。私は腕に自信がある。この手で幾度となくハイジャック・飛行機テロを殺生してきた。」
だめだ、刃向かえない。畜生、ここまで来てやっと自由になれたと思ったのに・・・。
僕は万感の憎しみをこめた目で男の人を睨みつけ、現金10000ドルを渡した。
「確かに。・・・おっと、伝言を1つ忘れてました。・・・どこへでも行け、お前はもう俺の息子じゃない・・・、と。」
男の人は更に意地悪く、もはや残酷な笑みを浮かべ去っていった。僕の選択肢は、『悔しさのあまり、不貞寝する』ことしかなかった。
さあて、僕は無謀にも無一文で日本、成田空港でやって来た。無論、機内でお金を取られたから、この長旅にも関わらず何も飲まず食わず、それに長旅の疲労と時差が確実に僕の体を蝕んでいく。
足を引きずって、空港のロビーから出て、あてもなく東京の街をぶらぶらしてる。案の定、だんだん視界が霞んできた。どんどん意識が薄れていく。・・・だめだ、やっと自由を手に入れたのに、この異国で死ぬのは絶対にい・・・や・・・・
どのくらい気を失っていたのだろう。僕の目が覚めた時、僕は何故か布団の上に横たわっていて、毛布をかけられてる。それにここ、どうやら部屋みたいだ。
・・・ものすっごく馬鹿馬鹿しい考えだけど、ここって天国?何せ長い間、何も飲まず食わずだもんなあ・・・
そうやって寝ぼけてたその時、一人の少年が部屋に入ってきた。背が低く、しかもかなり痩せてるな。動物で表すとしたら、失礼ながら鶏が最適だろう。
「は、はろー!!あ、あいむ、いで、たくや!ないす、とぅーみーちゅー!」
外国人と会うのは初めてでガチガチに緊張してるのか、大分かんでいる上にバリバリの日本語英語だ。
「あの、僕、全然日本語オッケーです・・・。」
「なあんだ、そっか!!!・・・はずかし・・・。」
彼も相当、お世辞にもうまいとはいえない英語を晒したのが恥ずかしかったみたい。
「・・・オッホン!!!では改めて。俺の名前は井出卓也。名門ハイパー・キングダム学園中等部1年生さ」
「中学」1年??僕は少し驚いた。アメリカ人は日本人と比べたらそこそこ背は高いので、何ともいえないところはあるけど、それでもその背・・・小5でも通用するよ。
「君、今思ったでしょ。俺が中1なんてありえないって。」
僕はドキッとした。あっ、また読まれたよ。
「初対面の人、大抵は驚くよ。だってさ、俺さ、身長143くらいしかないもん」
あ、じゃあ無理も無いか。・・・でも143って。僕と16cmも身長差あるじゃん・・・。
「これでもさ、毎日しっかり牛乳飲んでんだぜ?・・・ところで、君は??」
「あ、ごめんごめん。僕はブライアン・ゴルゴンゾーラ。一応、ウエスタンシティ社長の御曹司、だった。」
「ウエスタンシティ?なんじゃそりゃ???」
卓也が首をかしげた。それもそのはず、ウエスタンシティはまだ日本には進出してないからね。
「あ、ごめんごめん。ウエスタンシティってのはね、アメリカにあるでっかい遊園地のこと。」
「へーえ。でもまた何でその遊園地のオーナーの息子があんなところで倒れてたのさ??」
僕は、今に至る経緯を卓也に包み隠さず話した。すると卓也は、
「なるへそぉ。大変なんだね。ブライアンも。」
とあっさり納得してくれた。
「あれ??卓也、疑ったりしないの???」
「そんな、疑うもんかよ、ブライアン!お前のこと全く知らないけど、少なくとも悪いやつにゃ見えないぜ?・・・あ、そうだ!!ブライアン、歳は??」
「え・・・卓也と同じだよ」
「じゃあさ!俺の通ってるHk学園に来なよ!!まあ、入学に関してはどうにかなるさ。俺とお前、気が合いそうだし、良い相棒になれそうだ!」
「・・・もうアメリカには戻れないしなぁ・・・やってみるか、相棒!!」
何だか怒涛の流れだけど、僕はこうして人生初の相棒、卓也とめぐり会い、Hk学園に入学することになった。




