山の上東の空
こどものころ
いやなことがあった時は
東の空に浮かぶ月をみていた
山の上に
ぼんやりとある月
浮かんでいるのか
吊らされているのか
でも月は
いつもぼくを癒してくれた
ぼくのどうでもいい話を
何も語らず聞いてくれた
月だけが
ぼくのこころを知っていた
親でもない
先生でもない
ともだちでもない
十代の壊れそうなこころ
空の月だけが
ぼくのこころをひらいてくれた
ぼくは涙を流しながら
優しい月に話し続けた
だれにも聞こえないように
ぼくと月だけが知る世界
ぼくと月だけがこころ通わす時間
きっと
人生の中で
たった1ミリくらいの
時間だけど
ぼくはこの月によって
生かされた
あの時
交わしたこころが
今ではなくなっている
きっと
それでいい
今でも泣くことはあるけど
きっと いい
でもまたあの頃のように
月と話したい
泣きじゃくって喚いて
助けてって叫びたい
でもきっと
もう月は答えてくれない
ただ空に浮かんでいる
ぼくもおとなぶってる
大人になってる
でもまた
あの場所で
山の上に浮かぶ
月に会いたい
そして伝えたい
ぼくが生きていると