元カノ2
しおりが、目を見開いたままいきなり前のめりに倒れてきた。
え?
「大丈夫?翔太。」
聞き覚えのある声。
ずっと、ずっと、聞きたくて待っていた大好きな声。
そう、そこにいたの、忘れたくても忘れられない元カノの声だった。
スタンガンを握りしめたまま、こちらを見ている元カノ。
「どうして、ここに?」
「どうしてって?そんなの決まってるじゃない?」
元カノは、不思議そうに小首を傾けながら、スマホを取りだし、画面を見せた。
え?
そこに映っていたのは、今の自分たち、今現在ここで起こっている全てだった。
「これは?」
「監視アプリ。ずっと翔太につけてたのよ、知らなかった?」
ニコッと元カノは笑った。
この状況を理解するのに時間がかかった。
「私、ずっと翔太のこと好きなのよ、そんな簡単に嫌いになる訳ないじゃない。ただ、翔太の気持ちが知りたくて、少し距離おいてみたの。そしたら、まさか、こんな現場に遭遇するなんて。」
ダメだ、夢を見てるのかもしれない。
「私は、ずっと翔太が大好きよ、ずっと、ずっと……。」
元カノの瞳がさっきのしおりの瞳のように一瞬怪しくキラッと光ったのを、翔太は見逃さなかった。