しおり3
仕事場からの帰り道、翔太は違和感を感じていた。
自分は勘が鋭い方ではないが、何だろう?誰かにつけられてる気がする。足音が自分を追ってくる。
外灯もまだらで、人通りが全く無くなった空き地前の道で、翔太は、歩を止め、勇気を出して振り返ってみた。
でも……。
誰もいない。
やっぱり、自分の気のせいだったんだと、道を急ごうとして振り向いた瞬間。
「翔太さん。」
しおりだった。
唇を噛みながら、瞳を潤ませて、こちらを見上げてるしおりが目の前にいた。
「どうして、ライン返信してくれないんですか?」
「……。」
「ずっと、ずっと、返信待ってたのに。」
「……。」
「どうしてなの?」
畳み掛けるようなしおりの言葉に何も言い返せない。
いつもと違うしおりの口調に圧倒されてるせいもあるが。
何故、しおりがここに?
ラインの返信をしなかった、ただそれだけの理由で、ここにいると言う事が理解できなかった。
「ちゃんと返信してくれるって言ったじゃない?翔太さんから連絡来るまで寝ないで待ってたのに。」
しおりの瞳に凶器が走る。
「めんどくさいなら、最初からそう言えばいいのに。どうしてなの?」
しおりが、パーカーの右ポケットから、ナイフを取りだし、自分に向けてきた。
今の状況が普通じゃないことに気付いた、翔太は、向きを変え、走り出そうとしたけど、足がもつれてうまく走れない。
「男なんて全員死んじゃえ。」
その時だった。