子供ニュースがやってくる!
世の中が「なりすまし」事件で騒がしくなっていたころ、俺は、すっかりくすぶっていた。
大スターの復活を仕掛けて、業界的には評価された俺だが、それは続編がない企画なので、「よかったね~」「すごかったよ~」という賞賛だけが報酬で
やっぱり地道に稼がねばららなかった。
で、俺は固い番組をやる羽目になった。
それが報道制作の「平成こどもニュース」である。
企画書には、こうある
「平成こどもニュース~children news network~
子供だからと言って芸能・カルチャーなどを対象にせず、深刻な政治や経済、社会問題を
子供でもわかるように説明する番組」
おかけで、俺は小学生と中学生を寄せ集めた6人のガキと行動をしている。
アイドルや映画や音楽のネタでもやってりゃかわいいのに
ハードなニュースを子供に取材させて、わかりやすくなんて・・・難しい。
まあ局の方で、出る子供は決まってて、リボリューションNo.7とかグループ名まであった。
最初は、交通事故多発事件現場の謎、子供の家出の現実、政治家とわいろ・ちかんの心理分析
・・・などなど、それなりにハードだが、まあセンセーショナルではないのをやっていた。
が、そんなに視聴率が上がらないというわけで、今日はハード路線でいくことに。
ほんの二日前に、40名の大人が突然消えた・・・ってネタだ。
今日のレポーターは、中学1年のくせして、167㎝あり、86・57・90という理想のプロポーションを持つリリーというハーフタレント。一見ローラみたいな顔をしているので、お人形タイプと思いきや
進学校に通学し、帰国子女で英語も喋れて、将来はジャーナリストになりたいとかいう
どんでもないマセタガキである。
これで口紅つけたら、立派な女だぜ~とか思いながら、今日の取材が始まる。
「貧困ビジネスというものがあるのをごぞんじですか?」
なんだと・・・ガキにこんなネタ??
リリーは、仮説住宅のような2階建てのプレハブの前で話し始めた。
「ここの持ち主は、田中ホームなんですが、ここには40名の生活保護受給者が住んでいます。
ホームレス寮と言われている建物ですが、その多くは元々路上生活者と言われています。
中は、2段ベッドの共同部屋で、実は、ここに住む居住者の生活保護費は田中ホームに搾取され、
本人には月数万円の小遣いしか渡らない、一人頭6万は搾取され、月の総額は240万
年間3000万近くが奪われていると言われています。」
ホームレスを集めて儲ける・・・それが、ここの貧困ビジネスだ。
田中ホームは、3日前摘発され、すでにここはもぬけの殻・・・・
まあ取材する子供たちにとっては安全なのだが…
とメインレポーターの後は、近所の声を男の子レポーターが担当する。
これが中学1年のイケメン、160㎝ながら、歌舞伎に出てきそうな細面の美男子安田君だ。
実家は工務店らしいが、元暴力団らしい。組長2代目の予定が、子供が芸能界入りで
組を畳んだらしい。ちなみに空手で全国大会に出るほどのつわもの。
「ホームの住人は全く、近所付き合いもなく。ただ怪しいという噂だけが流れていました。
何人かの方に聞いてみました」
で、あらかじめのVTRを流す。
「あそこはね、不思議なところでね・・・ドンドン人が変わるのよ」
「お年寄りが多い割に、お葬式してるところ見たことないのよ・・怖いでしょ」
「手入れの前の日に、大きなバスで皆消えたのよ。
ええ、バスには日光って行き先が書いてあったけど、ほんとかしらね。」
怪しさ倍増である。
安田君がまとめる。
「一斉に被疑者が消え、そして肝心のホームも跡形もなく逃走したため、警察の捜査は手づまりで
生活保護が途切れることになる住民が、今後どうなるのか?心配とのことです」
リリーが引き取る
「ありがとうごさいます。ところで安田君はどう見ていますか?}
ここから、この安田君・・・アドリブに入る。
「ある筋の情報によると、これは全国的な組織である可能性があるそうです。
警察は、消えた40名の名前はつかんでいるそうですが、偽名の可能性もあるそうです」
えっ、俺は聞いてないぞ・・・・どこから聞いた・・・オヤジか!!!
そんな危ないレポートするなよ・・と安田君に注意すると
「ソースは明かせません」だと・・・
ムカムカしながら、局に戻ると
「いいね、安田君のコメントが聞いてるよ」
「だって彼ハンサムだし、賢そうだし・・・人気出るわよ」
みんなガキには甘い。
だが、自分で調べるのは悪いことではないな~でも危険だと注意しとこう・・と
次の資料に目を通しているときだった。
船越警部から、電話が入った。
「見たよ~高木ちゃん。こどもニュース面白いじゃない」
「ありがとうございます。」
「でさあ~実は、安田君のコメントなんだけど…あれ、高木ちゃん」
「いや~彼のアドリブです」
俺は、彼が組長の息子で、独自のルートを持っているという推測を伝えた。
「そういう事ね。あのさ~あの子の言ってることは正しいんだよ。
だから逆に危ないのね」
だったらどうしろと言うんだ。
「だからね・・・僕と協力しない??
警察が後ろにつくと、ねっ、安全でしょ」
これはありがたい・・・正々堂々ときわどいネタも攻めることができる。
俺は、快諾した。
「でね、高木ちゃん…面白い話があるんだよ」
おかけで、また俺は事件に巻き込まれるのだ。
・・・・・・・続く