名無しのスターは夜の空へ
偽物・・FAKEが跋扈しているのは、何も裏世界・夜の世界だけではない。
その日、深夜の六本木は、パトカーのサイレンとすざまじい数の野次馬で、喧騒に包まれた。
20F立てのビルの上に、セクシーなドレスを着た女が立ちすくんでいた。
後5㎝後を伸ばせば、そこは虚空の闇。
その異変に気づいたのは、対面のビルの警備員だった。
「女が飛び降り自殺をしそうだ」
通報が入るや否や、ビルを野次馬が取り囲んだ。
彼らは、スマホで女をとり続けていた。
「あれってAVの田原草子じゃないの?」
誰がが言った。
「ほんとだ田原だ」
ビルで身を乗り出していたるその女は、AVで席巻し、男たちの欲望を引き受けていた
田原草子であった。
アスリートやお笑いタレントと浮名を流し、さらに深夜番組ではレギュラーを持ち
AVから脱皮し、タレントとしての地位も築きつつあるのに、なぜ???
ネットでは、数々の憶測が流れていた。
・・・・ドラッグたよ。ドラックで逮捕寸前って聞いたぞ
・・・・アスリートと分かれたらしい。そのショックらしい
・・・・有名人の肉便器。一晩100万って噂がある。
・・・・有名ミュージシャンのセフレだ。ドラッグたできめてセックスするらしい
・・・・AVのくせに、文化人気取って、浮いてたらしい
・・・・エイズらしいぜ。だってAVだもの
知名度は絶大な彼女とあって、各テレビ局は、現場から生中継を入れるほどであった。
「今日の深夜、ここ六本木のビルの屋上に立て籠もっているのは、
アダルトビデオなどで有名な田原草子さんの模様です。
現在、警察は必死の説得を続けています」
夜明けまで、野次馬は増え続け、六本木は大騒ぎに…
だが、彼女は、日の出まで30分というとき、死のダイビングを実行してしまった。
そして翌日の朝には、こんなニュースがマスコミをにぎわせていた。
『薬物使用か・・・AV女優投身自殺!』
問題は、それだけでとどまらなかった。
2日後、警察の発表が、また世間をにぎわせた。
と言うのも、田原草子の本名がわからないのだ。
タレント名鑑には、1995年1月3日生まれで出身地が北海道函館市、本名・田中良子とあるのだが、
まったくの偽名であり、本籍も出生も分からないのだ。
もともとガールズバーでスカウトされ、プロダクションが家を用意し、生活費の面倒を見て
さらに現金でギャラを支払うという、まさに夜の女の延長で芸能界を生きてきたため
田原草子は本名を明かす必要もなかっのだ。
しかも、ガールズバーの同僚は言う
「だってあの子、整形ばかりしてたのよ・・・最初はほんとブスだったもの」
「現金は好きだったわよ、金のある男には取り入り方がうまいの」
「やばい男とも付き合ってたわよ。オレオレ詐欺やってたという噂もあるわ」
「有名になった時には、うれしかったわよ。だってここからスターが出たんだもの」
「ドラッグの噂…なかったよ。でもそういう手合いに知り合いはいたと思う」
「故郷の話…北海道の訳ないわよ。だって関西弁話してたわよ」
警察もマスコミも手詰まりになった。
整形を繰り返し、元の顔ではなく、しかも関西弁を話していた女・・・・・
手がかりはそれだけなのだ。
プロダクションもパスポートや免許証を見たこともなく
マネージャーは、飛行機恐怖症で海外ロケは、絶対にokしなかったと伝えてきた。
そう、彼女はfakeだったのだ。
被害者が偽物・・・・・・これが、また事件を複雑にしていくのだ。
実は、彼女にもIDナンバーがあった。
G500-302-003-003
だが、自殺を決意したときに、その数字はパソコンから削除していた。
そうするのが、ルールだと思えたからだ。
あの組織の事は、誰にも知られてほしくない。
なぜなら、私は助けられたのだから・・・
有名なのに名前がないスター、who are you ?
・・・続く