消えた彼女は いったい誰??
無縁社会・・・・これは、孤独死の老人だけではない。
先日大騒ぎになった准看護婦の事件もそう。
同級生とシェアしてすんでいたが、2ケ月実家に連絡なく、不審に思った家族が訪ねると、血の跡があり事件発覚、トランクルームに死体は宅急便で送られ、犯人の同級生は被害者の名前で自分の写真のパスポートを入手、海外へ逃亡ってやつだが、これはなかなか大胆な「なりすまし」!
確かに本人と違う顔でも、パスポートが出来るなんて、日本国家としちゃ、大失態と言う事だが、今さらなに言ってるのと言う女もいた。
「そんなの夜の世界じゃ、当たり前でしょ」
彼女の名前は、吉田佳代子・・・・・色気も愛嬌もない名前だと彼女は思っていた。
そこで、夜の女として、クラブに勤める際に、「水木サラ」という名前にした。
そもそも日払いで1.5万から2万が手に入るなんて、こんな仕事しかない。
だから、素性の知れない女が集まる。
同僚のサチは、DVの夫から逃げてきたらしいし、マルコは鑑別所上がりらしい。
二人とも、本名だとまずい事情がある。
サラもまた、かってアイドルとしてデビューし、その時、衣装にお金をつぎ込み
カードで浪費しすぎて、破産宣告を受けていた。
なので、25歳のいい大人なのに、保護下に置かれている。
まともなOLなどになると、収入はすべて親に報告され、通帳も握られている。
身分証明書にも、その旨は明記されているから、出せるものではない。
つまり、私も友達も、誰かに「なりすまさない」と、楽しく生きていけない。
問題は、さっき名前を挙げたクラブのホステス仲間・サチが、3日間、この店に来てないことだ。
徐々に店でも問題になっていた。
☆☆☆☆☆☆☆☆
私は彼女の本名を知っている。
数少ない夜の世界の友達。
お互いが、同じ年だったこともあって仲良くなり、しかもお互い店が用意してくれた
マンションは同じ町内で、2年もあっていると、互いの家に部屋にもいくようになる。
そうすると、彼女は、本名を教えてくれた。
中村花子・・・・彼女と海外旅行の話をしているときに、パスポートを見せてくれた。
サチ、いや花子は、何度も台湾やグァムに旅行をしていた。
どうも、店の客に誘われての旅らしいが、海外話をする時の彼女は、本当に楽しそうだった。
私は、コンパニオンとして、昼間の仕事もしていたので、花子の部屋に行ったのは、
翌日、彼女が店に来なくなって7日目、やっと時間のできた土曜の午前だった。
「810室・・・・ここね」
ブザーを鳴らしたが、応答はない。
人がいる気配すらしない・・・・どうしたんだろう。
「サチ、サチ・・・いねの??」
あきらめて帰ろうとした時だ。
なぜかノブに手を伸ばしてみた・・・・・開いていた。
「ほんと不用心な・・・」
といいながら、中に入っていった。
彼女はいなかった。
まあ、死体が転がってるより全然いいのだが、何か手がかりがないか・・・・
サラは、部屋を探した。
小さな引き出しに、中村花子という平凡な名前のパスポートがあった。
そのほかには、めぼしいものは何もない。
ちょっと珍しいものと言えば、FAX付の電話。
基本、携帯の時代に家庭電話は珍しい。
留守電が点滅していたので、再生してみた。
「サキちゃん、いるなら連絡ください」
「サキ、連絡ください。」
「サキ、明日でいいから連絡ください」
3件の留守電が入っていた。
同じ携帯の電話番号だった。
私は、それをメモって近くの公衆電話からかけてみた。
男の声の留守電だった。
「花と蜜の高橋ヒデオです。今電話に出られません・・・ご用件のある方は留守電お願いします」
花と蜜とは、界隈で人気のホストクラブ。
その夜、サラは店に出向き、高橋秀夫を指名した。
「ご指名ありがとうございます。姉さん綺麗だね。名前は・・」
「サラって呼んで…」
30分ほどたわいのない愛の話を楽しんでから、サキの名前を出した。
するとヒデオの顔をが変わった。
「サキはね、長いんですよ。実は、俺、一緒に働いてたんですよ」
ホストと働いてた。こいつの前職は何だろう。
一番高いシャンパンをいれたら、白状してくれた。
「ここだけの秘密ね。オレオレ詐欺・・」
「えっ、やばいじゃない」
「でね、切りのいいところで、辞めたのね・・・・まっもめたのよ。
でもこの店に勤めるならってことで・・・まっ監視下にあるわけ。
ところが、サキは、この前から連絡つかないのよ。」
「それってやばくない?」
「ああ組織は探してますよ。でも・・・なんで逃げたかわからない
逃げたらばらされる可能性あるのに」
「サキの本名は知ってるの?」
「いや知らない」
「パスポートがあるわよ。中村花子・・・本籍は兵庫」
「えっ・・・姉さん、それって偽物だよ。オレオレの時に作った奴。」
「そんなもの作れるの?」
「簡単だよ。本当の中村花子さんには200万とか渡してるはずだよ。
それで戸籍から全部用意買い取って、写真だけ変えると…偽パスポートが手に入る。
こんなの常識だよ」
「えっ・・あの名前はうそなの」
「当たり前じゃない、オレオレ詐欺は何十億って事業だよ。
いろいろ用意周到なの・・・俺の名前も、ヒデオだけじゃないよ
田中雄二、金子修・糸中慶介・村田紀夫・・・どれがいい?」
こいつら思ったより怪しいみたいだ・・・・
結局、サキの行方は分からず、中村花子でもないことが分かった。
一体、彼女は誰の???
失踪したのに、これでは警察にも届けることが出ない。
その時、カレンダーに不思議な数字が書いてあった。
A455-877-333-540
電話番号でもないし、保険やパスポートの数字でもない。
「何の番号かしら・・・・」
不思議ではあったが、これが失踪と関係あるとは思えなかった。
そして、二日後には、彼女は匿名の電話を警察に入れた。
が、自分の事も知られたくない・・・二度とサキの部屋に近づくことはなかった。
店に警察が来たが、自分が電話したことは隠し通した。
妙なことに巻き込まれたくない・・・・・そして事件は迷宮入りになった。
Who are you ?
・・・・・続く