名前のない女の復讐 2
資産家は、女の言うまま、その会社の株を買い占めていく。
時間内取引と、時間外取引を繰り返し、2000億で株の95%を手にした。
3000億のうちの2000億。
まあ出せない額でもない。
そして、その日、ある金曜日。
都市銀行の社員と、台湾の萬一〇〇公司の役員たちが
資産家の豪邸のロビーに集まった。
役員たちは、全員ベンツやジャガーという豪華な外車で乗り付け
資産家の駐車場は、さながら高級外車の見本市に。
台湾の萬一〇〇公司の本社のある台湾南部の高雄にも、資産家の手先を
派遣し、二箇所で、今度は、資産家の2000億の株の取り引きが行われて
言った。
やることは簡単で、巨額ではあるが銀行の入金を見て、振り込みを確認し、
名義を書き換える。
まず最初の50億で、すべてをチェックした。
銀行の振り込みも、複数の端末で確認し、正規に取引されている確認をした。
次の50億も同じように確認・・・
そして、三回目の50億からは機械的に処理していった。
たった30分で2000億の株を5000億で売却できた。
これにより、ゲインは3000億。
同時に、萬一〇〇公司は資産家の会社は、年間600~1000億で年間225億の
利益の出る商取引を15年間行うという輸出入契約を提携した。
まあ、このすべてがパソコンで行われるのが今という時代らしい。
「リアリティがないな~」
資産家はそうつぶやいた。
だが、その言葉通りだと気づいたのは、土日を挟んだ月曜、三日後だった。
最初の100億以外は、いっさい口座になかったのだ。
「えっ・・・・・・・」
報告を受けた資産家は、巨額の詐欺に引っかかったことを思い知らされた。
公司は簫の会社・・・そして、役員たちも詐欺師。
しかも2000億の株をたった100億で手に入れていた。
銀行の入金画面はダミーで、確認をした銀行員は偽物で
そう言う事だ。
「パソコンの数字に意味はない」・・・・新宿三四郎の仕業だ。
こんなデジタルの画面のやり取りは、彼にとっては、意味のない事。
簡単に精密にリアリティをもって作り上げられる
彼ならではの虚構の世界なのだ。
この女こそ、かって失踪し、アルアル詐欺にも絡んでいたというクラブのホステス・サチ。
パスポートに書かれた中村花子・・・・しかもそれも偽物と言う、なりすまし人生の女。
家出クラブの初期メンバーである。
実は、失踪後、歌舞伎町で身を売っていた彼女を、新宿三四郎が発見し、確保した。
そもそも彼女の家庭はひどかったのだ。
彼女の本当の名前は、村中めぐみであった。




