名前のない犠牲者 3
さらに、警部は聞き込みを続けた。
今度は、京都だった。
「麻薬に負けたんですよ」
その男は、家族と暮らしているときから、隠れて覚せい剤をやってたらしい。
勤勉なサラーリーマンなのに・・・・
ある夜・・・警察が家のドアをノックした。
「ご主人は、麻薬取締法違反の可能性があります」
それを聞いたときには、妻は卒倒した。
名のある大学を卒業し、着実に出世していた・・・・むしろ、土日も
残業し、営業回りを続ける・・・まさに仕事の鬼。
だが、そのエネルギーは、ドラッグによるものだった。
妻は、エリートと結婚したはずなのに、一気に犯罪者の妻に転落だ。
だが、彼は捕まらなかった。
1年たち、2年たち・・・・・そこで失踪届けを出した。
そして、7年たって死亡認定になった。
保険に入った時は、真っ白で、しかもいまも刑は確定せず
告知義務違反はないわけだから、家族には7000万が払われた。
ろくなやつはいないな・・・・ホームレスになるほどだから、
定住したり、仕事を根気よくするなんて無理、まして責任感は薄い。
だが両方とも失踪認定されて保険を手にしてるのが、
家族取っては救いだった。
大黒柱の数年分の収入とは言え、食い扶持は一人減ってるから、妻が働き出せば、家一軒が買える・・そんな額だから。
さらに福岡では・・・・
「バクチでね、彼の借金は3300万でした。だから、私が捨てたんです」
「借金の方は・・・・」
「自己破産しましたよ・・・・で生活保護受けて、子供を育てたんですよ」
こいつもとんでもない奴だ。
だから、指紋が警察にあるのだが・・・・
警部は、例の事を聞いた。
「ええ・・失踪で死亡認定されました。5000万です。」
おいおい、これで3人で1億3000万。
全員、飛行機事故で死ぬまでに、死んだことになっていた。
現世の家族に遺産まで残して・・・・・・
しかも、手口はすべて、失踪届けを出して7年以上たって死亡認定を
受ける・・・でもこれは搾取ではない。
家族は悪意はないからだ。
しかも、本当に死んでいるからたちが悪い。
死んだことになっていた、こいつらは、何のために、そしてどうやって生きていたのか、それがわからない。
あるで、死んだことにして、人生をやり直してでもいたのだろうか・・・
そして、船越警部は、当然の疑問をいだいた。
どこの誰か判らない50名・・・名前に意味はない50名
それは田中ホームの失踪人と数が同じであるという事だ。
事件が大きく報道されて1週間たっても、何の情報も警察にもたらす人は
いなかった・・・誰も騒がないのも、例の失踪と同じだ。
なぜ彼らは、北海道方面に向かう飛行機に乗ったのか・・・
さらにA123-456-789-012というIDナンバーを持つ
死体があるはずだ。。
黒焦げの死体が保管されている地元の警察の安置所に戻った。
本来、家族が駆けつけて、遺体を引き取り、火葬をして骨になるべき死体は
その引き取り手がなかった。
不審死体なのですべてマイナスの低温で厳重に保管されていた。
警部が、戻ると、40近い死体や破片が整理されていた。
、
氷かけていたが、まあ仕方がない・・・・、一つ一つ検証することにした。
それにしても、問題の一つは、保険金だ。
あの飛行機で、死んだ50名がすべて同じ境遇ならば・・・・20億は超す。
いくら、家族が手にしているとはいえ、額が大きすぎる。
保険会社も、加入時期も全く違う。
共通しているのは、犯罪人でろくでなしで、失踪して、最低で10年以上
長いものは15年ほど時間がたっている事だ。
飛行機で移動と言い、この額と言い・・・
ここまでの規模だと、個人のやることではない
・・・・・・・大きな組織が動いている。
今までの疑問をワードに打ち、まとめた。
そして、電源を切って・・退社・・いや退署か・・
「警部の勘を侮ってはいけない。」
船越警部の動向を、GPSで監視し、さらにPCとメールののぞき見、携帯の盗聴と総合的にチェックしていた新宿三四郎は、その方向性の正しさに同意していた。
だからこそ、新宿三四郎は、警部に協力することにした・・・・・
もちろん違う名前で・・・・ね。




