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名前のない犠牲者の一人

その苗田と言う、偽の名前の墜落事故の犠牲者の一人の話をする前に…


東北のある市に住む名波義弘という少年は、小学5年生・11歳で家出をした。


クリスマスの夜・・・・


彼は、いじめられていた。

親に訴えても、学校に訴えても・・・無理だった。


いじめっ子は、大抵、体力か資産・・金の力があるという特権階級。


それが、自分の地位を確認するため、弱いものをいじめる。


義弘は、常に学力ではトップクラスの成績を誇るが、体は小さく声も小さいので

弁護士の息子の田中と企業の重役の息子・野村が、徹底的にいじめていた。


仲間外れに始まり、おかまと呼ばれ始め・・・そういうのはよかったが、

背中や頭をコつかれはじめると、体を責めることになれたのか、

だんだん難癖をつけ、殴り始めた。


あざを作り、家にいると、だんだん親も気づき始める。


そして、やっと親は、話を聞いたくれた。

だが、相手の中に野村がいたのが、問題だった。


義弘の父親は、野村の父親の会社で働いていたのだ。


「野村君のパパに言っておいたよ。」


翌日、確かに父親は、義弘に伝えた。


だが、学校に行くと・・・様子は違った。


「チクりやがったな・・・」


田中と野村に呼び出された彼は、自分の父の無力さを知る。


「パパが言ってたよ。あんな奴いつでも首に出るってよ」


何も変わらなかったのだ。


だから、クリスマスの夜・・・・義弘は、二人をナイフで刺したのだ。


田中の息子は腹部に3ケ月の重傷を負い入院、それはまだましな方で

野村の息子は、頸動脈をきられ、出血多量で死亡・・・・


彼は、殺人で、身を守ったのだ・・


「だって、それが動物の世界では当たり前だから・・・」


そして彼は、置手紙も残さず、東京行きの列車に乗った。


彼の手には、一枚のプリントアウトが握りしめられてた。


  『家出クラブにようこそ!!』


そう書かれていた。


彼の起こした事件は、市を挙げて大騒ぎになっていた。


ネットで、その騒ぎを確認しながら、電車は東京へ入っていった。


「はたして、家出クラブは僕を受け入れてくれるのだろうか?」


まだ、家出クラブが表にあることの事。


名波義弘は、なんども家出したいという事、そしていじめにあっている事を

詳細に書き込んでいた。


その掲示板の中に「僕はもう終わりだ」と書き込んだら

「家出クラブにようこそ」という返事が来た。


だが、彼は自暴自棄になっていた。


やはり我慢ができずに死傷事件を起こしてしまった。


待ち合わせの場所に行って、懺悔するしかない・・・


メモには、新宿の喫茶○○に22時と書いてある。


そこには、ちょっとチャライお兄さんがいた。


「義弘く~ん、大変だね」


「はい・・・・・」


「殺しちゃいかんでしょ、殺しちゃ…」


「・・・・・・」


「まっいいか・・・あいつらも悪いしね・・・・・」


「・・・・・」


「で、どうする」


「・・・・・・自首します」


「ちょっと待ってね・・・・・」


ちゃらいお兄さんは、ものすごいスピードでノートブックのキーボードを

叩いた。


「あらあら・・警察は、君に絞ったみたいよ」


「そうですか・・・」


「あれあれ・・取り調べのデータ見ると、すごいね。

 君が野村君をいじめてることになってるよ。

 それを・・・おう、君のパパが証言してるね。」


「えっ・・・」


「ほんと大人の社会はいやだね・・・・野村さんのパパが

 メールで、君のパパと打ち合わせしようって・・・・・・

 口裏合わせたんだね・・・・せめて子供の名誉を守ろうって

 これってヒエラルキーってやつだね」


親が、自分を売ったことに、義弘は落胆していた。


「まっいいか・・・・」


このちゃらいお兄さんの口癖みたいだ。どうも、警察のパソコンに入って、データを盗み見しているらしい。


「で、東京に逃げたと思われる・・・・って、

 もうバレバレだよ~」


「そうですか・・・」


「まあ自首もいいけど・・・・・まっ少年法があるからね。

 そんなに長く入らなくていいけど・・・・」


「そんなこと関係ない!!!」


義弘は、軽い口調で言う、このチャラ男に苛々してきた。


「おっ、元気になったね・・・・・

 で、クラブに入るの、入らないの・・・」


「よくわからないんです。クラブが何か・・」


「要するに君みたいな家出をしなければならない少年少女を守りたい。

 最近、不況でしょ~だから、子供を売る親が増えてんのよ。

 この前なんて、ロリコンに1000万の借金のカタに売られそうな娘がいてね。

 親が信用できない時代なのよ・・・・君と同じ」


「・・・・・」


「まっいいか・・・良心の呵責なんて持たなくていいよ。

 どうせ少年院に入って出てきても、どこかでばれて悲惨な人生になるよ。

 僕なら、君の人生を書き直せる」


「えっ、書き直すって・・・」



「世の中デジタルの時代なのよ。誰かの子供にしてあげる。

 クラブには、そういう有志もいるからね。

 そうだな~君は、この名前でいこうか・・・・・苗田君。

 なかなかない名前だろ・・・・それにこれから伸びる苗ってのもいい。」


喫茶店のノートブックで、さらさらっと何かを打った。


「でも、ほんとは名前に意味はないんだよ。誰にでもなれる時代だし」


「そうですか・・・」


言われるままに、義弘は、新しい名前に変わった、



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