やはり名前に意味はない
そもそも、名前に意味はない。
そう考えるのは、新宿三四郎も同じだった。
生物に名前をつけるのは、人間だけだ。
もともと名前など、分類するための記号でしかない。
まして、それを統括するのはコンピュータというデジタルの記号で
もとを正せば、0101010・・・という0と1の組み合わせの
数字の作り上げる情報に過ぎない。
漢字やひらがなや英語も文字コードで符号化されている。
だからこそ、俺は、平気でハッキングし、自由にデータを書き換える。
関数に関数を重ね合わせ、新しい言語でプログラムを開発し、
さらにそれを文字コードで変換し、何もないかの如く隠蔽する。
ゲームとして突き詰めていけば、デジタルを支配するのは簡単だ。
例のiDの警察捜査が、活気ついているらしいが、関係したもののPCやスマフォのデータは削除したし、問題ない。
むしろ、新しい計画の方が大事、
家出少年少女たちにも、学問は必要だ。
そこで、高校と大学を買収することにした。
自前の教育システム作ることにした。
デジタルを乗っ取り、新しい名前を与えた高校生、大学生を
その学校に入れ教育する。
まあ学生の20%位は、家出クラブ会員が占めるようにした。
その多くは、経済学・法律学・情報電子関係に集めた、
結束力には自信がある。
後は、資格と地位を増やしていくのが、クラブの未来の為なのだ。
そう、名前に意味はない。
知識と能力には意味がある。
そういうことだなのだ。
☆☆☆☆☆☆☆
「そもそも名前に意味はない。」
スカウトに、そういわれた時に感動した。
それは、iD S303-664-773-344 こと仲田陽子にとって、
新しいフィロソフィーであった。
意味のない名前を変えることに、罪悪感を感じてはならないと
彼は、教えてくれた。
私の勤めだしたミラクルウインズの人たちは、年齢もバラバラで、
全く普通の会社。
ちょっと大きなスーパーマーケット名だけ。
すぐに打ち解けてくれて、私を受け入れてくれた。
だが、誰も出身地の話はしないことに気づき始めた。
「どこから来たの?」という当たり前の質問がない。
そこには、人間関係の暗い溝のようなものを感じたが、
暗黙の了解であるという事もすぐ理解した。
ただ、昔話や詮索はしない。それがルールなのだ。
つまり、名前に意味はない・・・のだ。
寮の隣部屋に住むのは野村幸子さんという30前後の女性なのだが、
入ったばかりの私にやさしくしてくれた。
休みの日には、夕食を振舞ってくれるほど・・・・
好きなタレントの話、化粧品の話、おいしいグルメの話・・・
女子会っぽい話が盛り上がる。
だが、野村さんから、出身地の話も、前に何をしていたかも・・
過去の話は、出ない。
だが、それで十分・・・
そこに仲間がいるという事だけで、私はよかった。
たぶん。この職場の多くは、家出クラブの人たちなのだ。
だが、昨日一人の職員が消えた。
55歳の苗田サン・・・・昨日から有給で北海道に行くと言っていた。
だが、昨日退社してから行方不明らしい。
「みんな慌てないでね・・・・・いつも通りに働いてください」
もし彼が、クラブの人なら、ルールを破ったことになる。




