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廻り廻るわたしと―――きみと  作者: 行見 八雲
第一章 約束。
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3.彼との授業。

 それからは、グラウンドの端のほうで二人で魔法演習を行った。



 最初はハラハラと私たちを見ていた先生方も、もう好きにやってくれとばかりに、他の生徒達の指導へと回っている。

 まあ、魔法で私達に指導することはないってことでもあるけど。



 ちなみに、演習といっても、同学年の他の生徒達は呪文を唱えて火の玉を出したり、水を生み出したりという程度だ。


 当然リュカのように、攻撃に魔法を用いたりすることなんてまだできない。


 それは魔力量や、使い方を学んでないっていうこともあるけれど。


 だから、12歳でこれほど魔法や精霊術を使いこなせる私達は、十分異質だった。


 まあ、私に対してはまだ、人々の目は優しい。



 というのも、精霊術は自然界に存在する精霊と心を通じ合わせ、その力を借りることで術を発動させる。


 そして、精霊は邪悪や偽りを嫌うから、精霊と心を通わせることができるのは、心が綺麗な人間だと言われている―――いや、私の経験から言うと、彼らはその人間が自分の興味を引くか否かで決めている気がする。

 火の精霊王なんか、私の魂が“面白そう”とかいう理由で力を貸してくれることになったからな。他にも、風の精霊王は“何となく”だったし。どんだけ気まぐれ。


 んで、精霊との繋がりが深ければ深いほど、術のイメージが明確に伝えられ、高度な精霊術が使える。


 だから、別に術を学ばなくても術が使えるってことは、精霊との繋がりが深いってことで、イコールそれだけ心が綺麗だっていうことになる。


 だもんだから、精霊術師はあまり危険視されないのだ。


 

 それに対して、魔法は自らの魔力をそのまま魔法に変換するから、自らの能力以外で特に制約はない。


 だから、悪用される場合も多く、そのため強大な魔力を有する者は危険視され、周囲から怯えられやすい。


 この学園の者が、私には普通に接するのに、リュカに対して怯えたり敬遠したりするのはそういった理由からだろう。




 今度はリュカが氷の氷柱みたいな矢を放ってきたから、私は炎の結界でそれを防いで、彼の頭上から大きな雹の雨を降らせる。


 それを何とか左右に避けたリュカは、段々むきになってきたみたいで、炎を纏わせた岩石の塊を降らせてきた。


 土と炎の合体技。かなり難度の高い上級魔法ね。


 私は水の結界で降ってくる火の粉を防ぎ、闇の精霊術で岩石を地面に叩き落とした。


 ふふふふ、そんな強力な魔法で私に挑んできたご褒美に、私はリュカの足元に底が見えないほどの落とし穴を作ってやった。


 いきなり消えた地面に、まんまと落ちていくリュカ。


 リュカなら風の魔法で飛び出てこれるだろうけど、実はその穴には闇の精霊術で魔法を発動出来ないようにしてあるのよね。


 だから、自力で上がってくるしかないってわけ。さー頑張んなさい!若者よ!



 漸く穴から這い上がってきたリュカが、穴の淵にしがみ付いてゼーゼーと息を吐いているとき、ちょうど授業終了のベルが鳴り響いた。


 泥だらけでぼろぼろになっているリュカに、周囲から同情の目が向けられているような気がする。


 どこかで、「お…鬼だ……」なんて声が聞こえた気がするけど、気にしな~い。




 この後はちょうどお昼だったから、光の精霊術でリュカの汚れを落として、何か難しい顔をするリュカの手を引っ張って、食堂へ向かった。


 私達が食堂へ入ったとき、一斉に人の目が集まり驚愕に見開かれる。


 まあ、今まで接点なんかなかったものね。


 そこここでひそひそと交わされる好奇、無責任な噂、根拠のない憶測、それから罵りの言葉。


 それらは、私達が席をついてからも治まることはなくて、特にリュカについての否定的な言葉は、私に聞かせようとしてるんじゃないかってくらい、大きな声で聞こえてくる。


 そのせいか、硬い表情のリュカ。


 それらすべてに腹が立って、私は私達のテーブルの周りに、音を通さない結界を張った。


 人の声を排除した空間は、しんと静まり返って、私はほっと息を吐く。


 既に届いていた料理から顔を上げれば、驚いた表情を浮かべたリュカがいて。


「………食事は静かにしたいもの。」


 何となくリュカの言いたいことが分かってしまって、先手を打ってそう告げた。



 ―――はっ!今のちょっとツンデレっぽかった!?


 べっ……別に、あんたのためなんかじゃないんだからねっ!的な?


 うわーうわー!もうすでにお分かりでしょうけど、前世も今も私ツンデレとは程遠いキャラだったのよ。


 おおおおお…何か、やってしまった感じよ!………恥ずかしい……。



 そんな私の内心の悶えも知らず、リュカはゆるりと表情を崩した。


「………ありがと。」


 照れくさそうに視線を逸らしたまま、ぽつりと零された言葉に、心臓の辺りがきゅんっとなった。


 べっ……別に、可愛いだなんて思ってなんかないんだからねっ!!



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